
山下(Seamless)
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米ニューヨーク大学グロスマン医科大学院などに所属する研究者らがNatureで発表した論文「Astrocytes connect specific brain regions through plastic networks」は、これまで裏方とされてきた脳のサポート細胞が独自の通信ネットワークを持っていることを示した研究報告である。
局所的なサポート役にすぎないとされた「アストロサイト」
脳内では、主に「神経細胞」(ニューロン)が主役となって情報のやり取りを行っていると長年考えられてきた。一方、星型の脳細胞である「アストロサイト」は、ニューロンに栄養を運んだり老廃物を回収したりする、局所的なサポート役にすぎないと見なされていた。
しかし研究チームは、アストロサイトもニューロンと同じように脳全体にまたがるネットワークを持ち、遠く離れた特定の細胞同士で直接コミュニケーションをとっていることを発見した。
この研究では、アストロサイト同士をつなぐ微小な経路(ギャップ結合)に着目。無害なウイルスを使ってこの経路を通る物質を追跡できるようにし、さらにマウスの脳を透明化する技術を用いた。
特殊な顕微鏡で観察した結果、脳全体に広がるアストロサイトの通信網を立体的な3次元画像として捉えることに成功。実際に、遺伝子操作でこの経路をなくしたマウスでは通信網がほぼ消滅したため、物理的なつながりがネットワークの維持に不可欠であることが確認された。これらの経路は、ニューロンではつながっていなかった領域同士を結んでいる場合もあった。
▲透明化処理を施したマウス脳の中で、アストロサイトが築く立体的な通信ネットワーク。青は手前、赤は奥の細胞を示す(プレスリリースより引用)
さらに、このアストロサイトのネットワークは固定されたものではなく、状況に応じて柔軟に変化する性質を持っていることが示唆された。
例えば、マウスの片側のヒゲを刈って感覚を制限すると、ヒゲからの情報を処理していたアストロサイトの通信網が縮小し、つながりの配線が変化する様子が観察された。これは、私たちが何を経験し、どのような環境で生活するかによって、脳内のアストロサイトの配線も独自に変化している可能性を示唆している。
▲透明化処理したマウスの脳内で、大きさや構造が異なる複数のアストロサイトネットワークを可視化した様子(論文よりスクリーンショット)
1世紀以上にわたって信じられてきた、脳の主役はニューロンであるという常識に一石を投じるこの発見は、アルツハイマー病やパーキンソン病など、脳の成長や老化のメカニズムに対する新たな洞察をもたらす可能性がある。
ただし、ギャップ結合とアストロサイトはヒトにも存在するものの、これらのネットワークがマウスの場合と同じように同じ領域を結びつけているかどうかは不明である。
Source and Image Credits: Cooper, M.L., Selles, M.C., Cammer, M. et al. Astrocytes connect specific brain regions through plastic networks. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10426-6
