

高橋 あおい
IT企業でオンライン学習サービスの現役SRE(Site Reliability Engineering)。日々Kubernetesをはじめとするサービスのインフラを運営しながら、開発者のサポートに努める。2026年Kubestronautの称号を得る。著書に『つくって、壊して、直して学ぶ Kubernetes入門』(翔泳社)など。技術同人誌も多数手がける。趣味は漫画を読むこと、イラストを描くこと、音楽を聴くこと、そして犬育て。
はじめに
こんにちは。あおいといいます。この度Kubestronautになれたということもあり、連載を始めさせていただけることになりました。Kubestronautになりたい方はぜひ参考に、特に興味ない方でもKubernetes資格試験の知られざる世界を面白くお伝えできればと思います。
Kubestronautとは?
Kubestronautとは、Cloud Native Computing Foundation (以下、CNCF)のKubernetes関連資格5つを取得した人に与えられる称号のことを言います。2026年7月20日Kubestronautは、現在世界中で4,104人いて、そのうち日本でのKubestronautとして登録されているのは174人のようです(2026年7月20日時点)。
・Kubernetes and Cloud Native Associate (KCNA)
・Kubernetes and Cloud Security Associate (KCSA)
・Certified Kubernetes Application Developer (CKAD)
・Certified Kubernetes Administrator (CKA)
・Certified Kubernetes Security Specialist (CKS)

5資格いずれもオンラインでの受験です。KCNAとKCSAは選択回答形式、CKAD、CKAとCKSは実技です。 Kubestronautは資格試験でありつつも、Kubestronaut Program Standards of Excellenceには「(称号を得ることで)プログラムとコミュニティを代表する存在になる」と書かれています。
Kubestronaut取得にかかる費用
資格取得にはもちろん勉強時間もかかるのですが、円安に伴い受験費用も高くなってきました。それぞれが次の価格です。
・KCNA、KCSA:$250
・CKAD、CKA、CKS:$445
う〜んお高い!、円安でさらに厳しさ1.5倍!。さすがにこの金額を全額払うのは厳しいですよね。ここにいくつか安く受ける方法を書いておきます。
まずは、Bundleを買うことで少し安く受験することができます。Bundleでは5つ全ての受験チケットを買うことができます。
また、定期的にセールをやっていたり、CNCFのイベントに参加することでクーポン・コードをもらうことができたりします。すぐに受けたいわけではない限り、割引されるチャンスを待つと良いでしょう。

AI時代のKubestronaut資格取得のメリットと特典
今はAIに聞けばおよそのことが分かるので、人によっては「試験を受けて意味があるの?」と思われるかもしれません。確かに障害調査も、マニフェストを書くのも、AIが早く正確にやってくれます。そういう意味では資格を取得するメリットは昔に比べて格段に少なくなっていると思います。
ただ、勉強をする中で自分が知らなかったKubernetesの新機能を知ることができたり、不足していたセキュリティの観点を獲得できたと感じました。日頃からKubernetesの情報をキャッチアップをしていたり、セキュリティも含めて広く知識を持っている方には不要かもしれません。しかし私のように仕事で実際に扱ったことがある技術の範囲しか知らない人間にとっては、知らなかったことをたくさん知る良い機会になったと思います。
Kubernetes公式ドキュメントの翻訳活動もしている私にとって、資格取得時に参照できる日本語ドキュメントが増えることもとても大きなメリットでした。実技試験では試験中に公式ドキュメントを参照することができます。しかし、翻訳機能を使うことはできません。そのため、公式ドキュメントが和訳されていると自分が欲しい情報をサクッと見つけることができます。翻訳されていないページも多々あるため、試験勉強で公式ドキュメントを参照する→翻訳されていないページを見つける→翻訳する→私が嬉しい!というサイクルを作ることができました。
また、Kubestronautになると、次の通りの特典が付きます。
・Kubestronaut限定ジャケット
・Credlyバッジ
・Kubestronaut専用のプライベートSlackチャンネルおよびメーリングリストへのアクセス権
・毎年50%オフで認定資格を受験できるクーポン5枚(ご自身用または共有用)
・年3回、CNCFイベント(KubeConまたはKubeDays)に20%オフで参加可能
なぜKubestronautになろうと思ったのか
また、公式サイトには書かれていませんが、『KubeCon + CloudNativeCon Japan』や『KubeCon + CloudNativeCon Europe』ではKubestronautとCNCFアンバサダーが参加できる朝食会があるようです。実は私がKubestronautの資格を取ろうと考えたのもこの朝食会がきっかけです。
私は2019年にCKAに合格しましたが、当時はCKSもなかったですしKubestronautもありませんでした。2024年にKubestronautが誕生したときに、少し興味は持ったものの、CKA受験時の辛さを思い出してとても受験する気にはなりませんでした。
しかし2025年の『KubeCon + CloudNativeCon Japan』でやる気が高まり、高揚のままにチケットを購入しました。と、良い話風に書いていますが、実は間違えてKubestronautとCNCFアンバサダーの朝食会場に入ってしまったのです。
本来場違いなはずなのに、何も知らずに入ってしまったことがあまりに恥ずかしく、来年はちゃんとKubestronautとして会場に入ろうと思ったことがきっかけです。受付の人も私を止めてくれよ……と思ったりもしましたが、試験を通じて色々と勉強になったので結果オーライということにしています。
CKS/CKA/CKAD/KCSA/KCNA試験の受験方法
準備①チケットの購入
まずは受験チケットを買いましょう……と言いたいところですが、特にセールで安くなっているわけではなければチケットを買うのは一旦待ちましょう。チケットの有効期限は1年なので、チケットを買った時点で受験期限のカウントダウンが始まってしまいます。チケットは1回再受験が無料なので、実質2回試験を受けることができます。
準備②受験日時の申し込み
チケットを買った後は、受験日時を決めましょう。受験日時は24時間前まで申し込むことができますが、直前では空いていないことがあります。余裕を持って申し込みをしましょう。また、24時間前までなら何回でも変更が可能です。勉強の目標にもなるため、チケット購入後はなるべく早く受験日時を決めると良いでしょう。なお、私はぐーたらしていたため、有効期限間際になって怒涛の連続受験をすることになってしまいました。おすすめしません。

準備③受験部屋の用意
Kubernetesのオンライン試験では、不正対策のために受験する部屋に関する厳しい制約があります。制約の中には机の上や下、周りに余計なものが置いていないことや壁に余計な掲示物がないことなどがあります。詳しくは今後の連載の中で書きますが、なかなかこのような部屋を自分で用意するのは大変ですよね。私はレンタル・スペースが借りられるサービスを利用して受験用の部屋を借りました。中にはお風呂場で受験した人もいるという噂も聞いたことがありますが、事実かどうかは分かりません。
これらの準備が完了したら、あとは合格に向けて勉強するだけです。
実技試験ってどういうこと?
勉強するだけとはいえ、実技試験がどういうことか分からなくて困るという方もいるのではないでしょうか。例えば「Kubernetesクラスタを1.35にアップグレードしてください(CKA)」という問題が出ます。実技試験ではKubernetes公式ドキュメント、及びCNCF関連のいくつかのOSSのドキュメントを参照することができます。クラスタ・アップグレードのやり方は公式ドキュメントにも書かれています。「簡単じゃん!」と思われるかもしれませんが、公式ドキュメントを頭から読み込んで作業をするのでは時間が足りなくなってしまいます。
どういう問題が出る可能性があるか把握し、なるべくドキュメントを見なくてもやり方が分かるようにしておくことが時間内に問題を解くコツとなります。試験によって実技の難易度が変わってくるため、具体的にどのような対策が必要かは次の章で説明します。
また、実技試験では用意された試験環境を使って問題を解きます。自分が普段使っているターミナルの設定や使い方で操作することができないため、試験環境で問題を解く練習をする必要もあるでしょう。
Kubestronautのための試験概要
Kubestronautになるために必要な試験のうちKCNAとKCSAは選択回答形式で、CKAD、CKA、CKSは実技になります。それぞれどのような内容が出題されるかを詳しく説明します。難易度は個人の体感によりますが、受験したことがある全員から「CKSが最も難しい」と言われました。
私は2019年にCKAとCKADを間違えてチケットを買ってしまい、あまりの難しさに泣きながら勉強してなんとか合格しました。Kubestronautにはなるつもりはないが試験を受けてみたいという方もいるでしょう。購入するチケットを間違えるとしんどいので、間違えないようにしましょう(誰も間違えないとは思いますが……)。
KCNAとKCSAは試験時間が90分、CKAD、CKA、CKSは試験時間が120分でした。KCNAとKCSAは選択回答形式ということもあり、時間に余裕がありました。
KCNA(難易度:★☆☆☆☆)
最も簡単なのが、KCNA。Kubernetesを業務で使ったことがある方であれば特に勉強しなくても受かるのではないでしょうか。とはいえ、私にとっては内容よりも英語の設問理解ができない部分が多々あり、かなりひやっとしました。受験対策にあたって参照した参考問題集がすべて日本語の設問であったため、勝手に日本語で問題が出るのだと勘違いしていました。もし勉強するのであれば、英語教材を利用するのがおすすめです。
英語の設問を難なく読める人とは受験のハードルが違うなと受験しながら怒ったりもしました。勉強していない私が悪いですが。
一問一答の選択回答形式の試験で回答する際には、目印を付けることができます。あとで目印を付けた問題に戻ることができるようになっているため、心配な問題には印を付けて見直すと良いでしょう。時間が余れば回答ミス(問題の解釈間違いや選択肢を間違えて選択した場合など)を見直すのが試験の鉄則だと思うのですが、時間が余っていたにもかかわらず鉄則を忘れていました。そのため点数ギリギリでした。セーフ。皆さんには時間が余れば見直すことをおすすめします。
KCSA(難易度:★★★☆☆)
星を1つにするか2つにするか迷ったのですが、「CKSを受けた後だから楽に感じられた」という意味ではKCNAよりは2つぐらい難易度が上がるかなと思い星3つにしました。私はSREという業務の性質上それなりにセキュリティのことは知っているつもりですが、改めて自分が普段使っていないクラウド・ネイティブ関連のセキュリティ技術やOSSについて知っておく必要がありました。CKSに出てくる知識をほぼそのまま流用できますが、CKSとは違い選択回答形式のため、KCNAと同様に英語表現を知っておく必要があります。
私は動画配信サイトで最も評価の高いKCSAの講座を購入しました。購入した講座は問題集のみとなっており、問題を何個も解くことで自然とKCSAの英語の勉強にもなりました。出題内容がかなり実試験そのままの問題もあったので、どうやって再現したのかが気になります。
CKAD(難易度:★★★☆☆)
SREのようにKubernetesのクラスタを運用する業務(SaaS利用を含む)を行っている人であれば勉強しなくてもある程度点が取れるのではないか、という難易度です。とはいえ実技試験のために公式ドキュメントを見ないとコマンドがパッと出てこない……などをやっていると、あっという間に試験時間が過ぎてしまいます。
問題文は日本語に翻訳されたものを選択できるため、関連する英単語を知らなくても問題が解けるようになっています。実技試験を受けたことがない方は、先にCKADを受ける→実技試験に慣れておく、という順番で試験を受けてみても良いのではないかと思います。
CKA (難易度:★★★★☆)
私は過去にCKAに合格したことがあるので、余裕綽々(しゃくしゃく)で試験を受けたところ、しっかり落ちました。Kubernetesクラスタを運用していたとしても、なかなか短時間で確実に、しかも検索エンジンを利用した検索を封じられた状態でクラスタ運用業務をすることはないでしょう。特にクラスタ運用にマネージド・サービスを使っている場合や、自動化が進んでおり自分ではkubectlなどのコマンドを実行する機会が少ない方は、しっかり勉強しておく必要があります。
CKS (難易度:★★★★★)
CKSはめちゃくちゃ難しい、と聞いていましたが噂通りの難しさでした。セキュリティに関してある程度知っているから「そこまで難しくないのではないか」とたかをくくっていましたが、しっかり1回落ちました。
Kubernetesに関する知識だけではなく、Linuxに関する知識も必要になってきます。また、単に公式ドキュメントに書かれていることを上から順にやればいいだけではなく、上手く行かなかったときにどうすれば良いかを調査する力も必要になります。特にこれまでは調査もKubernetesの知識の範囲で対応できたものが、コンテナの調査が必要になるなど、より高度な知識が求められます。
どの順番で受験したか
Kubestronautバンドル・チケットを買ったのが2025年6月なので、有効期限が2026年、今年の6月です。本来計画的に進める予定だったのが、商業誌の執筆などでバタバタしている間に2025年末に。ひと月に1つ受けてギリギリだと気づいたときには、時すでに遅し。2026年3月に『KubeCon + CloudNativeCon Europe』登壇に向けて資料作成をするかたわら、試験勉強をするという無茶苦茶なスケジュールをこなすことになります。
私の受験日は次の通りです。
・CKA 1回目:2025-12-18
・CKAD 1回目(合格):2026-01-17
・CKA 2回目(合格):2026-01-21
・CKS 1回目:2026-05-28
・CKS 2回目(合格):2026-06-03
・KCSA 1回目(合格):2026-06-10
・KCNA 1回目(合格):2026-06-13
CKAは受験済みなので軽く腕試し……のつもりで年内に受けたのですが、全く歯が立ちませんでした。CKAの内容を忘れてしまっていたのもありましたが、試験範囲が変わっているのも原因でした。何がダメだったのか、2回目までにどう頑張ったのかについては次回説明したいと思います。お楽しみに。
インターネット上で検索したところ、KCSAはCKSが合格できればほとんど勉強が不要であること、KCNAはCKAやCKADが合格できればほとんど勉強が不要だということが分かったため、受験は最後に持ってきました。

CKS/CKA/CKAD/KCSA/KCNA勉強方法
ここでは特定のサービスに誘導するのを避けるため、有料サービスに関する勉強方法は割愛します。多くの合格体験記でおすすめのサービスなどが共有されており、私もそちらを参考にしました。ぜひ検索してみてください。
試験範囲を確認しよう
インターネットを検索すると色々な方の勉強方法が出てきますが、まずは試験範囲を確認すると良いでしょう。今回私が勉強して思ったのは、CKAやCKSは、その都度試験範囲が変わっていそうだということです。CKADはKubernetesのかなり基礎的な部分が範囲なため、あまり多くは変わりません。しかしCKAやCKSでは試験範囲が細かく変わっているように思います。このあと説明する私が利用した教材も、最新の試験範囲に追従しているものもあれば、そうではないものもあります。特にdeprecatedになった技術は、試験を受ける受けないを抜きにしても、この先使うことは少ないでしょう。試験範囲の確認を通じてdeprecatedな技術や最新技術を知れるのも試験を受けていて良かったと思うことの1つです。
模擬試験を有効活用しよう
CKA、CKAD、CKSには模擬試験が無料で付いてきます。模擬試験は2回分(それぞれ内容は別)付いてきます。1回模擬試験を開始すると、試験環境は36時間使うことができます。まず本番の試験環境に慣れるためにも、模擬試験を受けると良いです。また、模擬試験の内容がそのまま本番に出てくるわけではありませんが、試験範囲とその理解度を試すためにも受験前に2回とも受けておくのが良いでしょう。
模擬試験は自宅で自由に受けられますが、なるべく本番同様に途中でやめることなく完走することが望ましいです。何故なら試験を受け慣れていない私みたいな人は、まず2時間試験に集中し続けるという体験自体に慣れる必要があるからです。普段から集中力がある人なら良いですが、実際に私は1回目のCKAでは集中力が途中で切れて全然関係ないことを考え始めてしまいました。
KillerCodaでとにかく手を動かそう
KillerCodaは、無料でKubernetesの動作環境を提供するサービスです。KillerCodaにはKubernetesの試験の練習問題がいくつか公開されており、練習問題を何度も解くことで試験に慣れましょう。特にCKSは何度も問題を解いて本番に臨むことで、合格できたとも言えます。
おわりに:チケット購入後は余裕をもって受験しよう
連載第1回目は、Kubestronautの取得メリットや勉強法のご紹介でした。皆さんは私のような無茶苦茶なスケジュールではなく、余裕を持って受験することを強くおすすめします。次回は、不合格エピソードに特化した体験記です!


