山下(Seamless)

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ポーランドのヤギェウォ大学に所属する研究者が発表したプレプリント論文「All elementary functions from a single binary operator」は、すべての初等関数(関数電卓の全機能)をたった1つの演算子で表現できることを実証したとする研究報告である。

「2つのボタンの関数電卓」だけであらゆる計算ができる?

コンピュータの心臓部であるデジタル回路は、「NANDゲート」というたった1種類の部品を組み合わせるだけで、複雑な論理計算でもこなすことができる。

一方で、学校で習うサイン、コサイン、対数、平方根といった初等関数には、そのような万能な部品は存在しなかった。関数電卓にたくさんの異なるボタンが並んでいるのはそのためである。

しかしこの研究では、たった1つの計算ルールと「1」という数字さえあれば、関数電卓のすべての機能を再現できるという。発見したのは「EML」と呼ばれる演算子であり、計算式は「eml(x, y) = exp(x) – ln(y)」というシンプルなものだ。論文によると、この式に、変数や「1」をパズルのように繰り返し当てはめていくだけで初等関数がつくり出せてしまう。

▲たった1つの演算子「eml」と「1」から、関数電卓のすべての機能が段階的に導出される系統図

具体的には、円周率(π)や虚数単位(i)といった数学定数から、分数や無理数までもが生成できるとしている。また、四則演算や累乗、対数といった基本的な計算はもちろん、平方根や符号反転などの代数演算、AIで使われるシグモイド関数もカバーしているとのこと。

さらに、サインやコサインなどの三角関数や、双曲線関数といった高度な専門関数に至るまで、関数電卓に備わっている多種多様な計算がすべてEMLだけで記述できるという。つまり「関数電卓には2つのボタンがあれば事足りる」ということになる。

▲EML演算子で再現される36種の基本要素(定数・変数8種、関数20種、演算8種)

この発見は、バラバラで複雑だった数学の式を、すべて同じブロックの組み合わせに統一できる点にある。論文によると、EMLを使えば、たった1つの演算ブロックだけで、どんなに複雑な初等関数でも、同じ形をしたブロックが枝分かれしていくシンプルな二分木として表すことができる。

数式をこの均一なブロックで表現できるようになると、AI研究にもメリットが生まれる。AIに実験データなどから未知の法則(数式)を見つけ出させる技術において、正解を探す仕組みをシンプルにできるからだ。すべての数式が同じブロックの組み合わせでできているという前提があれば、AIはブロックのつながり方を少しずつ自動調整していくことで、正解の数式にたどり着ける可能性がある。

Source and Image Credits: Odrzywołek, Andrzej. “All elementary functions from a single binary operator.” arXiv e-prints (2026): arXiv-2603. (CC BY 4.0 Attribution 4.0 International 記事冒頭画像では、Figure 1をトリミングし、図とテキストを追加しています)