プロダクトのインパクトを最大化。freeeが目指す「ムーブメント型チーム」で活躍できるエンジニアとは

2022年12月6日

freee株式会社 プロダクトハブ事業部 執行役員VPoE

泉 祐一朗

2015年12月にfreeeに入社。freee申告の開発などに携わる。エンジニアリングマネージャーを経て現職。BtoBプロダクトの企画・開発一筋。仕事に対する信念は、世の中の仕事を効率化して、社会全体の生産性を上げること。一番好きな言語はJavascript、最近はReactを主に扱っている。

エンジニアの採用担当者に選考のポイントや求める人物像について尋ね、現場のリアルな声を届ける「採用担当者の本音」シリーズ。第11回は、freee株式会社から執行役員VPoEの泉 祐一朗さんに登場していただきます。

「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、統合型会計ソフト「freee会計」を中心に多くのプロダクトを展開しているfreee株式会社。有料課金事業所数は約38万にも上ります。

「ムーブメント型チーム」という自律的な組織を構築する同社で活躍できるエンジニア像について伺いました。

手を挙げやすい「ムーブメント型チーム」

Q1. freeeのエンジニア組織について教えてください。

エンジニア組織には3つの開発本部があります。会計や人事労務などfreeeの主力プロダクトの開発を担う「コア」、小規模あるいは新規のプロダクトを開発する「グロース」、そしてインフラやSREを担う「基盤」です。フロンドエンドやバックエンドという分け方はしておらず、基本的にみんなフルスタックに動いています。

組織の雰囲気でいえば、freeeは全社的に「ムーブメント型チーム」を目指しており、会社のミッションに共感し集まったメンバーが自律的なアクションやチャレンジを起こし、それにより引き起こす相乗効果を大事にする社風です。

エンジニア組織にも、手を挙げれば周りが応援する文化があるため、自発的な提案をする人は多いです。Slackで自分発信用のチャンネルをつくり、そこから発信された技術提案が実際の開発に活かされることもよくあります。技術や開発手法の選定も、社内の有志が自発的に話し合って決めることが多く、最近だと各チームからスクラム好きなエンジニアが集まって、freeeにおけるスクラムをどうするべきかについての討論会が開かれたそうです。

Q2. 今求めているエンジニアはどんな方でしょうか?

今は全ポジションでエンジニアを採用しています。freeeのエンジニア組織全体で数十単位のチームがあって、採用はチームごとに行っています。基本的にすべてのチームが過去最大規模で採用活動をしています。

採用の主な目的は先行投資ですね。BtoBのSaaS業務アプリケーションは、開発することが無限にあります。まだまだカバーできていない領域があるし、ユーザーの要望に応えて使い勝手を改善したい部分もたくさんある。さらに、R&Dにも積極的に投資しているため、研究人材の採用も積極的に進めています。

Q3. 採用はどういうふうに行われていますか?そのプロセスを教えてください。

エージェント経由、自己応募、リファラル、あとはスカウトも割と多いです。スカウトは、週に1回程度チームごとに時間をとり、現場のエンジニアが人材データベースから気になる人をピックアップしています。これも一緒に働く人を自分たちで見つけて採用していくのが大事だと、現場で自発的に始まった取り組みです。

採用のプロセスはどのチャネル経由も基本的に同じで、カジュアル面談を経て、適性のあるチームからミドル〜シニア層のエンジニアによる1次面接を2回ほど、その後に開発本部長が最終面接を行います。「コア」部門に配属予定なら、私が最終面接をします。

Q4. freeeに応募するエンジニアはどんな人が多いですか?

自分が今持っている技術を極めたいというより、「スモールビジネスを、世界の主役に。」という会社のミッションに共感し、エンジニアリングを通して世の中のためになるプロダクトをつくることをモチベーションに感じる人が多いですね。これまでクライアントワークで顧客の要望に沿って仕事してきたけど、社会貢献の実感を持ちながら自発的に開発したいという声もよく聞きます。

また、応募の理由としてよく聞くのは、エンジニアをすごく大事にしている会社に見えるということ。実際、CEOの佐々木も創業から1年は、エンジニアとしてコードを書いていましたし、大手IT企業出身の役員も多く、エンジニアへのリスペクトがある会社だと思います。

プロダクトのインパクトを最大化できる「尖り」が大事

Q5:高く評価するエンジニアの条件は何でしょうか?

freeeでは「インパクトの創出能力」をとくに高く評価しています。たとえば社内で共通ライブラリを開発したとして、それをつくれる技術力はもちろんベースとして評価しますが、より重要なのは、つくったもののインパクトを最大化する力を持っているか、ですね。そのためには、開発の背景理解ができているか、厳しい制約があっても成果を出すために設計を工夫したか、あるいは他のチームに広めるためにプロモーション活動を行ったか。このような、独自の経験からくる「尖り」をすごく大事にしています。

むしろ、具体的なスキルマッチはそこまで重視していません。もちろんfreeeが使っているRailsやReact、Goなど開発経験があればより良いですが、「インパクトの最大化」を常に意識するエンジニアなら、需要があれば言語はすぐにキャッチアップできるだろうと考えています。

あとは、freeeが今後数十年使われ続けるプロダクトでいられるために、新規に開発する力だけでなく、メンテナンスや運用フェーズの経験も大事にしていますね。

Q6:エンジニアのスキルチェックはどのように行われていますか?

基本的には面接の場で確認しています。これまでどんな技術を使って何をやってきたのかを伺ったうえで、「この部分でもし違う技術を使っていたら、どうなっていたと思いますか」と深ぼったり、「もしトラフィックが10倍になったら、どんな構成にすれば耐えられると思いますか」と発展させたりして、理解の深さや技術の応用力を確認するようにしています。

Q7:面接で必ずする質問はありますか?

必ずするとは言い切れませんが、失敗談はよく聞きますfreeeの開発文化の一つに「失敗して攻めよう」があります。なので、むしろ大きな失敗経験をもった人を高く評価しているのかもしれません。

もちろん簡単に失敗して、ユーザーに迷惑をかけてばかりではいけない。ただ、品質を重視しながらもある程度スピード感をもって開発していくなら、失敗はどうしても避けられないものです。過去に障害を起こしたり、良くないコードを入れてしまったりしたときに、どうカバーして、そこから何を学んだかを重視して聞きますね。失敗は人を育てると思うので、たくさん失敗をした人はそのぶん成長しているはずです。

あとは月並みですが、仕事を通じて何を大事にしているかを伺うようにしていますね。この質問に正解はありません。質問の理由は、freeeが応募者のやりたいことを実現できる環境であるかどうかを判断するため。そこがマッチしていないと、いくらカルチャーフィットしていても、お互いにとって良い選択にはなりません。

freeeの人事制度の一つに「グロースビジョン」というものがあり、3年後や5年後に自分がやりたいことを書いてもらっています。会社としては、各個人がモチベーション高く働けるように、その人が持つキャリアのビジョンを最大限に尊重します。過去にはそこに、「札幌に移住したい」と書いた人がいて、するとそれがきっかけで「札幌に事業所をつくろうか」という話に発展したこともあります。

Q8. 「いいエンジニア」をどうやって面接で見極めていますか?

僕がいいエンジニアだと思うのは、自分が書いたコードや開発したプロダクトに対してオーナーシップを強く持っている人ですね。

そのため、面接でも自分の書いたコードに対してどれだけこだわりを持っているのかを聞くようにしています。100点を求められているところを、140点までこだわり抜いて実装してほしいですね。簡単な例でいうと、入力画面を途中で一時保存する機能を実装する際、ユーザーの(本当に保存されたかどうかわからない)不安を解消するために、実行後の画面にメッセージを表示させてみた。このようなプラスワンができるかどうかがポイントですね。1人でできなければ、周りも巻き込んで推進できる人がいいかなと思います。

Q9. 採用プロセスの中で気をつけているポイントは何ですか?

カジュアル面談の場では、応募者の話を聞くより、freeeがどういう会社で、どういう人を求めているか、情報開示に力を注ぐようにしています。特にスカウトの場合、freeeをよく知らない人もいますから。心がけているのが、嘘をつかず、飾らないこと。ヘタに会社を良くみせようとしないで、泥臭いところや大変なところも説明しています。選択の権利を応募者に委ね、それでもともにチャレンジしたいと思ってくれる人に面接にきていただいています。

テクノロジーの力で世の中も経済も良くする

Q10. オンボーディングではどんなことをしていますか?

入社後はまず、セキュリティやダイバーシティなど全社共通研修が2週間ほどあります。その後は、チームの一人がオンボーディングパートナーとなって約3カ月間伴走し、仕事のやり方をフォローしたり、気軽に質問を受けたりします。

エンジニア組織では入社から1カ月間は1on1を頻繁にします。回数はチームによって違いますが、オンボーディングパートナーと毎日、担当マネージャーと3日に1日、開発本部長と週に1回、チーム全員とも各1回…といったペース。社内では「やりすぎ1on1」と呼んでいます。これはコロナ禍でリモートワークになって、オフライン時のように気軽に周りに聞けない状況をなんとかカバーしようと始まった取り組みなんです。

Q11. エンジニアの方に「freeeに来るべき」とおすすめする理由は?

手前味噌になりますが、freeeのミッション「スモールビジネスを、世界の主役に。」は個人的にもとても良いと思っていて。スモールビジネスって、最高の自己表現だと思うんです。美味しいパンをつくりたいという人が、経営を学ばなくてもビジネスができれば、企業規模による経済格差も縮まり、街中に美味しいパン屋さんが増えて、世の中も経済も良くなっていく。そこに貢献している実感を持って働けるのが最大のやりがいです。しかもそれをテクノロジーの力で実現しようとしている会社なので、エンジニアとして最新技術を駆使して開発に全力で取り組める。そこにワクワクできる人なら最高に楽しい環境だと思います。

SaaSプロダクトが盛り上がっている今、SaaS開発はエンジニアとして良い経験になると思います。SaaS開発ができる会社はたくさんありますが、freeeはその中でも働き甲斐のある会社だと自負しています。「freee会計」は日本でも指折りの規模のRailsアプリケーションであり、これを5年後10年後も維持するには、かなり攻めたアーキテクチャ変更や技術的な挑戦が必要になるでしょう。

freeeは統合型クラウドERPがコンセプトなので、顧客の統合体験を重視しています。一方、システムアーキテクチャとしてはマイクロサービス化しており、疎結合につくる必要がある。統合体験とマイクロサービス化を両立させなければなりません。こうした難易度の高い課題を解決していく技術的な面白さもあります。

Q12. freeeを希望するエンジニアに、今からしてほしい準備は何ですか。

技術的な準備よりは、仕事を通じて何をしたいか、どんな環境だと働きやすくてモチベーションが上がるかなど自分の考えを整理してみるのはいかがでしょうか。それをはっきりさせた上で面談に挑んでいただくと、応募者とfreee、お互いにとって最良の結果にたどり着けるのではないかと思います。

取材・文:古屋 江美子
撮影:赤松 洋太

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