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採用市場において難しいと言われることの多いエンジニア採用。厚生労働省の「一般職業紹介」によると、2023年のエンジニア有効求人倍率は1.71倍と、採用に苦戦する企業が多いことが窺えます。
倍率が高いことに加え、エンジニア採用では押さえておくべき固有のポイントも多いため、しっかりと理解した上で採用戦略を立てることが肝心です。
このコラムでは、レバテックのエンジニア採用やキャリアアドバイザーの教育に関わる久松が、エンジニア採用のあれこれを解説します。
本記事の解説
レバテック株式会社 レバテック技術顧問
久松 剛(ひさまつ つよし)
博士(政策メディア)。ITベンチャー企業でインフラ全般の責任者や新卒・中途採用担当などを経験した後、2018年5月にレバレジーズ株式会社入社。採用、組織改善、レバテック株式会社技術顧問としてエージェント教育担当等を手がける。エンジニアキャリアパスやエンジニア採用についての外部セミナーなども多数実施。
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目次
エンジニア採用が難しいといわれる理由の一つが、求人倍率の高さです。厚生労働省による「一般職業紹介状況」から有効求人倍率(※)を以下にご紹介します。
※ハローワークにおける有効求人数を有効求職者数で割った数値。以下の表では社員(派遣や契約社員含む。パートは除く)の求人を対象に、ITエンジニアが含まれる「情報処理・通信技術者」と「職業計」の数値をピックアップしている。
ITエンジニアおよび全職種の有効求人倍率は以下の通りです(いずれの年も2月分のデータ)。
年 | ITエンジニア(情報処理・通信技術者) | 職業計 |
2013年 | 1.59倍 | 0.73倍 |
2014年 | 2.03倍 | 0.91倍 |
2015年 | 2.22倍 | 1.00倍 |
2016年 | 2.47倍 | 1.11倍 |
2017年 | 2.59倍 | 1.26倍 |
2018年 | 2.72倍 | 1.43倍 |
2019年 | 2.65倍 | 1.49倍 |
2020年 | 2.17 倍 | 1.34倍 |
2021年 | 1.31倍 | 1.05倍 |
2022年 | 1.59倍 | 1.17倍 |
2023年 | 1.71倍 | 1.29倍 |
参照元: 厚生労働省| 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)
エンジニアの有効求人倍率は年によっては前年より下がることもありますが、1を下回ることはなく、常に求職者が有利な売り手市場であることが分かります。さらに、2013年から2023年までの10年間、エンジニアの求人倍率は常に職業全体の倍率を上回ってています。
2023年の有効求人倍率も1.71倍と、1人のエンジニアに対して約1.7件の求人がある状況で、エンジニア採用市場は求職者有利であることが伺えます。
次に、ITエンジニアと全職種の有効求人者数を確認していきましょう(いずれの年も2月分のデータ)。
年 | ITエンジニア(情報処理・通信技術者) | 職業計 |
2013年 | 28,335人 | 1,626,454人 |
2014年 | 23,636人 | 1,436,072 人 |
2015年 | 20,861人 | 1,337,224人 |
2016年 | 19,578人 | 1,263,260人 |
2017年 | 18,697人 | 1,180,523人 |
2018年 | 17,480人 | 1,098,453人 |
2019年 | 18,652人 | 1,064,204人 |
2020年 | 20,890人 | 1,057,849人 |
2021年 | 28,241人 | 1,183,629人 |
2022年 | 28,133人 | 1,184,258人 |
2023年 | 28,321人 | 1,129,883人 |
2023年有効求職者数のデータで計算すると、全職種の合計に対してITエンジニアの割合は約2.5%となっています。ここから採用要件にマッチする候補者を集めようとすると、実質的な割合はさらに少なくなるでしょう。
紹介した有効求人倍率と有効求職者数は、ハローワークの求人、求職者数をもとにしたデータではありますが、エンジニア採用における母集団形成の難しさや競争率の高さがうかがい知れます。
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エンジニアは国内全体で不足しており、各企業が採用に苦戦する状態が続いています。そんな中で効果的に採用活動を行うには、今後の市場の動きや求職者の意識の変化を捉えることが重要です。
エンジニア採用市場の動向を紹介するので、採用を行う際の参考にしましょう。
かねてからエンジニアは人材不足が指摘されていましたが、今後もその状況は継続する可能性が高いです。
経済産業省「IT人材需給に関する調査」によると、2030年のIT人材の需給ギャップは、低位シナリオで約16万人、中位シナリオで約45万人、高位シナリオで約79万人に達すると試算しています。
また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2023」を見ると、DXを推進する人材は「質」「量」ともに不足してることが分かります。以下は、DXを推進する人材の確保状況について尋ねた際の企業の回答です。
米国と比べて、日本ではDX人材の質・量ともに不足していると答える企業がかなりの割合にのぼります。しかも、2021年から2022年にかけて、質・量ともに「大幅に不足している」とする回答が増加しており、エンジニア採用の難しさが想像できます。
近年はオンライン面接が普及し、オンラインのみで選考を完結させる企業が増えました。オンライン選考は日程調整がしやすく、内定までのリードタイムが短い傾向があります。
そのため、日程調整に手間取り選考に時間をかけていると、先に内定を出した他社に候補者が流れる可能性が高まります。これからの選考は、スピード感を重視し、できる限り候補者の都合に合わせて早く面接を行うことが重要です。
近年リモートワークが普及したのをきっかけに、面接で求職者からリモートワークへの理解や取り組みについて聞かれることが増えています。そのため、リモートワークに関しては事前に回答を用意しておくべきでしょう。
ただ、こうした質問は必ずしも「リモートワークがしたい」という意図で訊いているとは限りません。中には「前職が少人数のスタートアップだったので、オフラインでのチーム開発を求めている」という人もいます。
このように、オフラインコミュニケーションを希望している人も、リモートワークの事情をうかがう質問をすることがある点は注意しましょう。
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エンジニア採用を難しくしているのは求人倍率の高さだけではありません。難しさの背景を解説していきます。
エンジニア採用に大きく影響する「技術トレンド」や「エンジニア界隈での自社のブランド力」といった要素は、刻一刻と移り変わります。
たとえば、募集要項に記載する職種名も「社内SE、情シス→コーポレートエンジニア」といったように、似たような役割であってもトレンドに合わせた職種名に変えることでエンジニアからの応募が増えたケースがあります。
同様に募集要項に「募集背景」「1日の過ごし方」「キャリアパス」などを記載することで具体的に働くイメージを持ってもらうこともトレンドになっています。
求める技術レベルが高くなく、教育を前提とするのであれば、ポテンシャル層を採用することは難しくありません。実際にここ数年のトレンドとして、未経験からプログラミングスクールを通して学習し、エンジニアへのキャリアチェンジを目指す方の数が増えているためです。2019年半ばぐらいまでは、こうした層を育成前提で採用する企業は一定数ありました。
一方で、ハイスキル層や生産性の高い層、プロダクトの安定性やパフォーマンスを担える層、といった上位層を狙うのであれば、社内のエンジニアの手を借りる必要があります。多くのエンジニアは技術に理解のない会社を避ける傾向にあるため、人事から「分かっていない感」が出てしまうとその時点で候補から外れてしまうからです。
エンジニア採用にあたって社内のエンジニアの協力は欠かせません。ですが、採用に興味があるエンジニアの数は少なく、そうしたエンジニアを育成するのも難しいという問題もあります。
技術職であるエンジニアからすれば、採用業務は本業ではないという意識が働きがちです。たとえば、面接は求職者の都合で組まれるため、まとまった時間に集中してコードを書きたいという人からすれば、効率が悪いと感じてしまいます。
この点をうまく解消している企業の取り組みとしては、採用活動の業務も評価に組み込んだり、奨励金を出したり、サンクスカード・ポイントを出したりしています。ただし、奨励金はお金目当てでこなすことが優先になってしまうおそれもあるため、難しいところです。
エンジニアの市場価値が高まる中、給与水準を上げて採用に注力する企業が増えています。一方で、求職者が求める待遇を実現できない企業は採用に苦戦してしまいます。特に、スキルが高いエンジニアに十分な待遇を用意できず、条件の良い他社に負けてしまう例は少なくありません。
また、経営陣がエンジニア需要の高さを認識していないために、待遇改善が進まない問題もあります。
せっかく採用できたエンジニアも、いつまでも自社にいてくれるとは限りません。特に、エンジニア固有の事情として以下のような点も挙げられます。
向上心のあるエンジニアであれば、スキルアップのために社外の勉強会やコミュニティに参加するのは珍しくありません。その過程で、外部のエンジニアのキャリアや他社の事情に触れることになり、自分と比べる機会が出てきます。それに刺激を受け「このままではまずい」と転職を志すことはよくあるケースです。
また、コミュニティでできたつながりから、副業もしくは複業と呼ばれるような形で仕事をもらうということもあります。そうした縁から他社への転職に至るケースもあります。
他社との比較という点では、簡単には対応できない問題ですが、オフィスの場所も影響してきます。東京に限っていうと、神田や秋葉原といった山手線の東側と、渋谷、六本木といった南西側とで傾向が異なります。
南西側は街としての人気が高いエリアが多く、そこへオフィスを構えることで採用活動の訴求とする企業もあります。オフィスの賃料も高いエリアも多いですが、その分の費用をかけられるぐらい勢いがあるということでもあります。
南西側で働くと他社の働き方を目にしたり比較する機会が日常的に生まれるため「隣の芝生が青く見えてしまう」ことが多い傾向にあります。
そのほか、「経験を積んだらリファラルの声がかけられるのが当たり前」という価値観も、最近の若手エンジニアにはしばしば見られます。転職、フリーランス、副業・複業といった要素と、キャリアアップを結びつけて考える人が少なくないようです。
また、年収アップを目的に3年程度で転職を繰り返す方も一定数見られます。実際に年収アップすることも多いですが、転職を繰り返すと職位が上がりにくいという点はあります。
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技術職であるエンジニアにとって、新しい技術を扱いたい、モダンな開発環境で働きたいという気持ちが転職の動機となることは珍しくありません。企業の環境を変えるのは自分の力だけではどうにもならないことも多いので、転職理由としてもポピュラーです。
ただ、最近では対策を行っている企業も出ています。既存の主要なシステムは変えられずとも、新規の開発であればWebシステムだったらGo言語、モバイルアプリだったらFlutterといった具合に、エンジニア採用でのアピール要素やモチベーションアップのために新しい技術を積極的に取り入れている企業も多いです。
採用面接の際にも、新しい技術への取り組みや、提案から採用までのフローを質問されることが増えてきています。技術トレンドは数年単位で移り変わりますが、そのたびに転職をするわけにはいかないので、会社としての体質を知りたいという意図があります。
自社のコーポレートサイトに求人を載せるだけでエンジニアからの応募がくるというブランド力がある会社であれば別ですが、多くの場合、複数の採用手法・経路を使い分ける必要があります。
転職サイトなどへ有料で求人広告を掲載するやり方です。媒体によって、登録している求職者や閲覧する求職者の数や特色が異なります。
求人広告の掲載順や表示の仕方などで料金が変わってくる媒体も多いです。利用するだけで料金がかかるため、しっかりとした事前準備が大切です。
求人広告のメリットは、採用人数によって料金が変わらない点です。採用人数と料金は連動していないので、何人採用しても料金が上がることはありません。
また、広告には多くの情報を掲載できるので、内容を工夫して自社の魅力を伝えたり、他社と差別化したりできます。
成功報酬型の媒体でない限りは、たとえ一人も採用できなかったとしても料金が発生するのがデメリットです。求人広告サイトは有名企業に応募が集まりやすいので、知名度の低い企業は採用に苦戦する可能性があります。
転職エージェントは、求める人材の要件を人材紹介会社へ伝え、マッチする人材がいれば紹介してもらえるサービスです。採用が決まった際に、決定した年収の何割かを報酬として支払う仕組みで、この仕組みは成功報酬型とも呼ばれます。
人材紹介会社の担当営業が人材の提案なども行うため、採用活動の効率化が図れます。
求人広告を有料で掲載する転職サイトと異なり、人材紹介会社(転職エージェント)を利用した場合は無料で求人情報を掲載できるほか、採用が決まるまでのプロセスには費用がかかりません。
加えて、エージェントが登録者の中から希望に合う人材を探してくれるので、質の高い人材に出会える可能性が上がります。
採用に成功した場合、一般的に年収の3~4割を支払うのでコストは高めです。採用の過程を効率化できるのはメリットですが、社内に採用ノウハウが溜まらない問題が起こります。
リファラル採用は自社の従業員個人のつながりから、求職者を紹介してもらう手法です。リファラル採用を促すために、紹介を行った社員に対し採用が決まった場合の報酬(インセンティブ)を設定している会社もあります。
「この人なら合うかも」「この人と一緒に働きたい」という目線で社員に候補者を選んでもらうため「フィルタリングの手間が省ける」「入社してからのパフォーマンスに期待しやすい」などのメリットがあります。
仲介サービスを使わないため、採用コストを抑えられるのも利点です。
一方で、あくまで個々の社員に依存する割合が大きいので「必要なタイミングで集めるのが難しい」「紹介した人が辞めると、紹介された人も辞めがち」などの面もあります。
社員の協力を得るため社内にリファラル採用について周知する手間もかかるでしょう。
ソーシャルリクルーティングはSNSを活用した採用手法全般を指す言葉で、SNS採用と呼ばれることもあります。SNSを通じて求職者へコンタクトを取る、自社のアカウントから仕事風景や現場で働く人の声といった情報発信を行い、自社に興味を持ってもらうためのアピールをする、といった活動が一例です。
本格的な選考が始まる前に、潜在的な候補者との接点を作れる可能性があるのが特徴の一つです。TwitterやFacebookといった一般的なSNSだけでなく、ビジネスに特化したSNS(費用がかかることもあります)も存在します。
SNSの投稿内容を通して候補者の人柄や価値観を確認できるので、入社後のミスマッチを減らせます。企業からの発信に関しては、求人広告のように文字制限がないため、写真や動画も使って自由に情報を伝えられます。
SNSでは候補者と直接コミュニケーションがとれますが、必ずしも応募に結びつくとは限らず効果が出るまでに一定の時間がかかります。さらに、ソーシャルリクルーティングで効果を出すには定期的な投稿が不可欠であり、アカウントの運用には工数がかかります。
企業が求職者へ直接アプローチする採用手法を、ダイレクトリクルーティングと呼びます。求職者へメッセージを送る工程を指してスカウトと呼ぶこともあります。ダイレクトリクルーティングは「転職潜在層にもリーチできる」「会社のブランド力が高くなくてもアクションを起こせる」という点が特徴です。
ダイレクトリクルーティングを行う場合は、一般的にはダイレクトリクルーティング機能を持つ求人媒体を利用します。媒体ごとの人材データベースの中からマッチする求職者を探し、スカウトメッセージを送るという流れです。
具体的な費用や機能などは、媒体によって違いがあります。そのほか、SNSを通じてスカウトメッセージを送ることや、オフラインイベントで直接声がけするのも、ダイレクトリクルーティングの範疇といえます。
スカウトを行う際は「一人ひとりに対して『なぜあなたに声をかけたのか』がわかるように文面を作る」という点がポイントです。コピペ文では誰にでも送っているとすぐに見抜かれてしまいます。
たとえば「必要スキルとマッチする点をプロフィールや経歴からピックアップして言及する」「自社の課題に対してどういう経験を生かしてほしいかを伝える」といったように、相手の事情を踏まえた上でスカウト文を作成しましょう。
ダイレクトリクルーティングのメリットは、転職エージェントや求人広告媒体を介さず応募者とやり取りできることです。直接応募者とコミュニケーションがとれるため、応募から採用までのスピードが早い傾向があります。
また、求人作成からスカウトメールの送信、内定までの一連の流れを社内で管理するため、採用ノウハウを蓄積できます。
応募者と直接やり取りできる良さがある一方で、求人作成やスカウトメールの運用などの工数がかかります。
採用ノウハウを持たない企業にとっては、効果的な運用が難しいと感じる可能性もあるでしょう。
企業から声をかけるという性質上、通常の選考フローと同様の姿勢で臨むと失敗するケースも出てきます(SNS採用も同様です)。
たとえば、求職者からすれば「スカウトが送られてきたのだから、一定の基準は越えているのだろう」と捉えているのに、一次面接でいきなりスキルジャッジが始まると戸惑ってしまいます。
プログラミングテストなどの本格的なスキルジャッジは、二次面接以降の意向が上がったタイミングで行うとよいでしょう。
また会社への志望理由も同様です。会社のブランド力がさほど高くないのであれば、基本的にエンジニアが会社を選ぶ側になります。
エンジニアからすれば、スカウトが送られてきた段階では興味を持ち始めた程度なので、一次面接で志望理由を訊ねられても面食らうことが多いはずです。聞くとしても、二次面接以降が無難でしょう。
転職イベントでは、人材紹介会社などが主催する合同説明会にブースを出店し、来場者と直接話せます。新卒向けの合同説明会では複数の学生に一度に説明を行うのが一般的ですが、中途向けのイベントでは一対一で面談を行う形式が主流です。
転職イベントには、幅広い業界の企業が参加する「総合型」と、特定の業界や職種をテーマとする「特化型」が存在します。
転職イベントの特徴は、1日に多くの候補者と直接話せることです。直接会って自社の魅力を伝えられるため、入社の動機づけがしやすいと期待できます。
イベントの規模によって異なりますが、ブースの出店には数十万円以上かかり、場合によっては100万円を超えることもあります。さらに、パンフレットの作成費用やスタッフの人件費、ブースの装飾費用がかかるほか、準備にかかる時間も考慮しなくてはなりません。
なお、行政やハローワークが主催するイベントは基本的には無料です。
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難度の高いエンジニア採用ではありますが、同じような条件でもうまくいく会社/うまくいかない会社に分かれます。エンジニア採用におけるNGパターンを見ていきましょう。
エンジニア採用にあたっては、「エンジニアを採用して解決したい課題は何か」を具体的に明らかにし、関係者間で認識を揃える必要があります。適切な課題設定なしに、「人手が足りない」「いい人が欲しい」と採用活動をスタートしてもうまくいきません。
課題設定を行うことで、任せたい業務や役割が明らかになっていき、具体的にどんなスキルや検討が必要なのか、と採用要件が固まっていき、欲しい人物像が見えてきます。
企業によっては「●月●日までに■人採用する」といった期日までの数値目標の達成を重視しすぎるケースが見られます。
一般論でいえば、仕事をする上で期日や数値目標があった方が良いですが、その意識が強すぎると、基準を下げて採用せざるを得ません。
その場合、「現場への負担増となる」「ミスマッチによる短期離職を招く」といったマイナス面も多いため、ある程度柔軟に対応できた方がトータルでは成功につながるでしょう。
エンジニア採用は売り手市場です。一方的に採用側の希望を出しても、エンジニア側には届きません。採用市場における自社のブランド力とエンジニアのレベルとのバランスを理解した上で採用戦略を立てることが重要です。
むやみに基準を下げるのはNGですが、基準を上げるほどに「候補となるエンジニアの絶対数は減る」「企業間での競争率が上がる」「必要となる年収も上がる」といった点も考慮する必要があります。
企業側が転職潜在層へアプローチするための手段として「カジュアル面談」を行うケースがあります。カジュアル面談はあくまで自社に興味を持ってもらうことが主目的で、大学でいえばキャンパス見学に近いイメージです。
エンジニア側からしても、あくまで選考ではないと認識して臨んでいるため、ここでスキルジャッジを行ったり、志望動機を訊ねたり、といった「選考」を始めてしまうと反感を買うおそれがあります。
エンジニア採用を成功させるために、押さえておくべきポイントを解説していきます。
相場を理解しないことにはエンジニア採用はままなりません。相場を知るには、以下のような手段が考えられます。
自社の競合となる企業が、どういった職種を、どういった募集要項で記述し、どういった条件で募集しているかを調べてみましょう。この際の競合はビジネス上の競合だけでなく、労働条件や待遇、社風、使用している技術など、さまざま角度から検討してみましょう。
また、応募してきた求職者へ選考を受けている企業を尋ねるのも有効な手段です。
客観的な情報を得られるだけでなく、採用活動全般の効率化にもつながります。費用との相談ではありますが、人材サービスの活用は検討する価値があるでしょう。
採用にあたって、現場のエンジニアの御用聞きで終わらないためにも、一定以上の技術やエンジニアへの知識・理解が必要です。まずは「本を読む」「Twitterを活用する」といったところから始めましょう。
Twitterはトレンドなどの情報収集やエンジニア観察が目的なので、発信は後からで大丈夫です。そのほか、エンジニア交流会やコミュニティに参加するのも一案です。その際はエンジニアに同行する形式が円滑でしょう。
「技術用語の正しい使い方」や「エンジニアに刺さる求人票の作成」「求職者のレベルや人物像を見抜く面接」といったように、非エンジニアだけでは越えられない壁がいくつか存在します。最初から採用活動にフルコミットしてもらうことは難しいかもしれませんが、協力をしてくれそうなエンジニアを探す必要があります。
やり方は一概にいえませんが、お菓子を差し入れてみる、ランチに誘ってみる、技術について勉強している旨を伝えて質問してみる、といったところからコミュニケーションを始めてみると良いでしょう。
選考前に人事と現場のエンジニアが採用方針をすり合わせることで、選考を開始してから両者の意見が合わず、複数面接を行っているのに内定に至らないという状況を避けられます。
採用したいエンジニアの人物像(ペルソナ)を明確にすることで、エンジニア側が転職に何を求めているのか理解でき、魅力的な求人をつくれるようになります。
エンジニアが転職を考える動機には「技術志向」「サービス志向」「マネジメント志向」「安定志向」などがあり、それぞれ以下のような心理を含んでいます。
求人を作成する際は、どの志向性を持ったエンジニアに入社してほしいかを考え、それぞれにあったポイントをアピールしましょう。たとえば、カルチャー志向のエンジニアに向けては、条件面だけではなく社風や働く人について詳しく書くのがおすすめです。
ペルソナを設定しても応募者が集まらない場合、ペルソナが理想的になり過ぎている可能性があります。その際は、求める条件を減らしてターゲットの幅を広げましょう。
たとえば、社内にエンジニアの教育体制があるのであれば、応募条件を経験者に絞らず未経験者まで広げてはいかがでしょうか。
ただし、応募者を集めるために無闇に採用要件を下げると、現場の技術力が下がる恐れがあります。採用ターゲットを広げる際は、エンジニアと話し合ってどこまで条件を緩めるか検討しましょう。
一つの採用方法でうまくいかない場合は。複数の採用媒体を使ってみましょう。採用媒体はそれぞれ強みが異なるため、組み合わせて活用すると効果的です。求人を掲載する媒体やサービスを増やせば、それだけ応募者との接点も増やせます。
たとえば、企業の情報をSNSで発信しつつ、求人広告サイトに求人情報を掲載することで、興味を持った候補者からの応募が期待できます。求人サイトやエージェントを並行して使ったり、リファラル採用とそのほかの採用手段を組み合わせたりするのもおすすめです。
優秀なエンジニアを採用するには、他社と差別化できる自社の強みを把握しましょう。他社と似通った強みを訴求しても、応募者にとって魅力にはならないので注意が必要です。
自社ならではの魅力は、「事業内容」「仕事内容」「社風」「社員」「制度」などの要素ごとに考えると見つけやすくなります。たとえば、「仕事内容」では仕事のやりがいや面白さ、「社員」では一緒に働く人の価値観や技術レベルがアピールのポイントとなります。
会社の良さが分からないときは、社内のエンジニアに入社理由や実際に働いて魅力と感じた事柄を聞いてみましょう。
最近流行りのTipsの一つですが、会社紹介・事業紹介をあらかじめ1分程度の動画にまとめ、スカウト時にURLも送るというやり方があります。そうすることで面接時には会社紹介・事業紹介を省略でき、より踏み込んだ話に時間を割けるという点がメリットです。作成した動画は採用ページやSNSなどにも展開する手もあります。
ただし「費用や工数などの作成コストはかかる」「最後まで目を通して貰えるための構成と工夫」「知りたい情報が明確な人には他の手段の方が速い」「コンテンツへの社員の登場と退職リスク」など、考慮すべき点も多いです。
応募者を集めるには、エンジニアの注目を引く求人を作成する必要があります。ほかの職種と同じ内容では、エンジニアにとって魅力的な情報にならないため気をつけましょう。
エンジニアならではの求人作成のコツを紹介するので、参考にしてください。
エンジニアが担当する業務内容は具体的に記載しましょう。特に経験が豊富なエンジニアは、自分がどんな業務を担当できるのか、どの程度の裁量を持って開発に関われるのかを気にしています。業務内容は明確かつできる限り詳細に記述するように心がけましょう。
プロジェクトについて記載する場合、働くイメージを持てるよう期間や規模に関する詳細な情報を紹介しましょう。具体的には、開発規模や期間、使用するツール、開発言語、担当するフェーズについて記載します。
開発環境についても具体的に記載しましょう。社内での開発なのか、客先常駐なのかはもちろん、開発するサービスがBtoCなのかBtoBなのかも説明します。
客先常駐の場合、自宅からのアクセスを気にするエンジニアに向けて最寄り駅や常駐する可能性があるエリアを記載しましょう。
求人に記載された技術名が間違っていると、「技術分野の理解がない会社なのか?」と思われてしまいます。技術名はアルファベットの綴り間違いや大文字・小文字のミスが多いので、入念に最終チェックを行いましょう。
ベテランエンジニアの採用は難しく、未経験の若手や新卒に目を向けて採用を行う企業も増えているでしょう。新卒の学生はそもそもエンジニア志望でない場合も多いので、エンジニアがどんな仕事かを伝え興味を持ってもらう必要があります。
新卒エンジニアを採用するにあたってやるべきことを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
新卒の中には、「エンジニアは労働環境が悪い」というイメージを持つ学生がいます。
そんな中でエンジニアの魅力づけを行うには、開発したシステムが世の中のどんなところで役立っているのか、自社のエンジニアが社会に対してどのような価値を生み出しているのかを伝えましょう。
また、労働環境がイメージできるよう残業時間や組織の雰囲気、待遇について伝えることも大切です。課題がある場合は、社内で改革に向けた取り組みを行い、これから改善していく旨を説明します。
文系の学生を採用対象にする場合、文系学生に興味を持ってもらえる情報を伝えましょう。文系の学生に対しては、技術面の情報よりもサービス内容や仕事のやりがいについて説明するのが効果的です。
「自分がエンジニアになれるのか?」と不安に思う学生も多いので、社内の教育体制についても伝えましょう。
これから文系に採用対象を広げようと考える企業は、まずは文系の学生に対応する研修やサポート体制を整備する必要があります。
地方の学生をターゲットに取り込むことで、自社に合う人材に出会える可能性が上がります。地方は首都圏に比べると企業や就職に関する情報が少なく、優秀な学生でも内定までに時間がかかっている場合があります。
他社からのアプローチが少ない段階で接触をはかれば、自社に興味を持ってもらえる可能性が高いでしょう。
最近は、オンライン面接やリモートワークが普及したため、自社に近いエリアに限らず幅広い地域から人材を募集することで、採用を成功させられます。
エンジニア採用を考えるのであれば、フリーランスの活用も一案です。世間一般でイメージされる在宅型のフリーランスだけでなく、クライアント企業に常駐して作業する常駐型のフリーランスというスタイルもあります。
たとえば、以下のようなケースであれば、フリーランス活用も視野に入れたほうがよいでしょう。
新規事業を始めるにあたり、「既存社員の配置を変えるのは難しい」「社内に要求スキルを持つ人材がいない」「正社員を採用するのがためらわれる」といったケースはしばしばあります。中には、新規事業への思い入れが強いあまりに、事業を畳むのと同時に退職する人もいます。
その意味では、要求スキルを満たすエンジニアを、プロジェクトに合わせてアサインできるフリーランスはお役に立つことでしょう。
正社員採用ですと、内定承諾から入社まで2~3ヶ月かかることも珍しくありません。採用活動の動き出しから含めるとさらに時間がかかることも多いです。正社員と比べて制約の少ないフリーランスであれば、早ければ2週間~3週間程度で参画まで進むこともあります。
正社員採用に限定せず、リーチするエンジニアの数を増やしたいということであればフリーランスも検討することをおすすめします。
エンジニアの中には、ある程度の経験を積んだ後、スキルアップや年収アップなどを目的にフリーランスを選択する人がいます。ここ数年、フリーランスを志す人は増加傾向にあり、特に経験3年~5年程度の20代中盤の層に多く見られます。
たとえば、技術者派遣やSES企業へ勤めるエンジニアであれば、常駐型フリーランスになっても、クライアント企業の現場に常駐して作業をするスタイルは変わりません。そうした方々にとって、フリーランスになることで「案件を選べる」「単価がアップする」という利点が得られるというのが理由の一つです。
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