2023年4月4日
株式会社ゆめみ 代表取締役
片岡 俊行
1976年生まれ。京都大学大学院在学中に株式会社ゆめみ設立。在学中に100万人規模のコミュニティサービスを立ち上げ、その後も1000万人規模のモバイルサービスに成長させる。また、大手企業向けに5000万人規模のデジタルマーケティングの立ち上げ支援を行い、スマートフォンを活用したデジタル変革や内製化支援を行うリーディングカンパニーとしてゆめみグループを成長させ、現在はアジャイル組織・ティール組織の代表的な企業を目指して組織変革に取り組み、組織ノウハウを外部にも公開しながら日本のIT産業の発展に貢献すべく事業を展開している。
エンジニアの採用担当者に選考のポイントや求める人物像について尋ね、現場のリアルな声を届ける「採用担当者の本音」シリーズ。第12回は、株式会社ゆめみ代表取締役の片岡俊行さんにご登場いただきます。
2000年の創業以来、企業のDX・内製化を支援するエンジニア&デザイナー集団として成長を続けている株式会社ゆめみ。伴走型パートナーとして、これまで400社以上の企業と共にWebアプリケーションやスマートフォンサービスを企画開発してきました。
管理職を置かないティール組織を実現し、給与を自分で決める「給与自己決定制度」を採用するなど、ユニークな環境でも知られている同社。どのようなエンジニアが活躍できるのか、代表取締役の片岡さんに伺いました。
エンジニア組織全体で約200名、うち社員は約160名で、全社員の6割程度がエンジニアです。インフラやiOS、Androidなど機能ごとにグループが分かれており、5~6名のチームにわかれて3~5個のプロジェクトを担当しています。7名を超えたらチームを分割することで、チーム単位での意思決定をスムーズにできるようにしています。
ゆめみのエンジニア組織は、管理職や評価者を置かない「ティール組織」です。通常マネージャーが担うマネジメントなどの役割も細分化して、各メンバーに担ってもらうようにしています。評価者がいないので、給与も自己決定。職位ごとの年収目安と必要なスキルを明文化した「アプリケーション・エンジニア職位ガイドライン詳細」をもとに各自で決めています。
※参考記事:給与は自分で決める?!話題の職位ガイドラインを作ったCEOがエンジニアの評価システムを完全公開。その真意とは?
チームのメンバーが各々尖った強みを発揮しつつ、弱みはお互いに支援し合い、補完し合えるような関係性が理想ですね。ゆめみでは、全職種共通で採用の必須要件に「協働力(周囲と密に仕事を行える連携力)」を入れており、会社としても「協働力」を最大限に発揮できる組織体制にしています。
たとえば、ゆめみでは、原則1つのプロジェクトに対してプロジェクトマネージャー(以下PM)をメインとサブで2名置いています。PM同士がお互いの得意・不得意を補い合うことで、チームの機動性も上がり、変化の速いWeb系のサービスに対応しやすくなります。
まずは、前職までのチームでの経験を重視します。特別な理由がないのに他の人との協力を避けてきたように見えた場合は、協働力が低いと判断します。
もう1つ大事なのは、自己開示力ですね。
業務上、一人作業が多かった人や業務委託としてプロジェクトに関わってきた人も多いので、その場合は弱みをうまく開示できるかどうかを見ています。自分の強みと弱みを理解したうえで、弱みをさらしてほかの人に頼られてはじめて、チームがうまく協働します。
ただ、組織によっては自己開示することがむずかしい場合もあると思います。その点において、ゆめみには自己開示をすること自体が、優れたビジネスコミュニケーションだ、という共通認識があるのです。
社員の皆さんはSlackの個人チャンネルで自分のイライラや不安をつぶやくこともありますし、それをネガティブに捉える人はいない。「この人、困っているのかな?」と周囲が手を差し伸べるきっかけにもなります。事実と感情を切り分けることは必要ですが、自分の感じていることをみんなが発露していくことで、社内に協働のループが生まれています。
まず見ているのは、自学する力を持っているかどうかです。技術進化が激しい時代だからこそ、クライアントのニーズに応えていくためには、自ら学び、成長する力が求められます。そのため面接では、志望職種に必要な技術をどのように勉強してきたかを聞くようにしています。たとえば、テックリードであれば先進的な技術の学習履歴を聞くし、リードエンジニアであれば、プロジェクトの経験を通じて、どのようにマネジメントスキルを身に付けてきたかを聞きます。
もう1つは、ポジティブであれ、ネガティブであれ、成長への強いエネルギーがある人を高く評価しています。よく言っているのは、究極の採用基準は「成長せざるを得ない理由が今あるかどうか」。成長せざるを得ない理由は、人によって違うと思います。プログラミングに没頭した時間が楽しかったから、さらにスキルを高めてできることを増やしたい人もいれば、強いコンプレックスや劣等感から「これだけは負けたくない」という気持ちで頑張る人もいる。あるいは、結婚して家族を養わなければいけないという大人になってからの不安ドリブンもあり得るでしょう。
そういった成長の原動力を持っていて、且つそのエネルギーを自分自身の成長のみならず、他人の長を支援するところにも使っていきたいと考えている人とともに働きたいですね。
ゆめみが考える「良いエンジニア」とは、希望職種とその人の専門性・資質・志向が合致している人です。すなわち、自分の強みを自覚していて、且つその方向に向かって努力している人ですね。
先のテックリードとリードエンジニアの例でいうと、テックリードの場合は、プロダクトを良くすることに常に目を向ける必要があるため、新しい技術を積極的に学び、その技術を使ってチームの技術力向上に貢献していきたい人が良いですね。一方、リードエンジニアの場合は、人に目を向けてチームを引っ張っていくことが求められるので、ピープルマネジメントスキルなどのソフトスキルを積極的に身につけてきた人が良いですね。
ゆめみの選考は、基本的にカジュアル面談、書類選考、コーディング・ポートフォリオ試験、代表面接、オファー面談という流れで、私は必ず面接に参加しています。代表面接では、主に「会社選びの軸」「目指すキャリア」「周囲からの人物評価やフィードバック」という3つの質問をします。そこから深掘りの質問はあまりしていません。定番の質問に対する答えの中から、つい出てしまうその人のコアな資質、親切心や探究心などを見極めています。
というのも、「もしかしたら、この人はテックリードの素質があるのかも?」と確認しようと深堀りの質問をした時点で、採用側のバイアスがかかります。さらに、候補者に合わせて質問内容を変えると、回答もバラバラになってしまい、かえって評価しにくくなります。全員に同じ質問をすることで、差分からそれぞれの特質が見えてきます。
「自社サービスをやりたい」人はあまり向いていないと思います。ゆめみの主力事業は企業の内製化支援です。特定の事業分野にこだわりがなく、課題解決そのものに興味があって、そのために特定の技術や役割を身につけていけるエンジニアには合うと思います。
ゆめみのエンジニア組織は、いい意味で「プログラマブル(プログラム可能)」です。事業発展のためにこうする必要があると筋の通った合理的な説明をすれば、みんな納得してその通りに動いてくれるんです。
先ほどお話ししたように、ゆめみは専任の管理職を置かないティール組織を採用しています。そのため、採用やメンバー育成など、もともとマネージャーの役割だったところを、メンバー全員で分担する必要があります。
ただ、こういった業務は全員に参加してもらうのはなかなかむずかしいのです。そこでゆめみでは、採用と育成が会社成長のボトルネックになっていることをメンバー全員に説明し、みんなが納得したうえで、採用を最優先業務として再定義し社内ルールとして明文化しました。現在では、現場エンジニアの大部分が採用業務に入り、むしろエンジニア魂を発揮してワークフロー改善などにもポジティブに取り組んでくれています。
トップダウンではなく、経営層もエンジニアも共通認識を持って、同じ温度感で動けているように感じています。
ゆめみの最大の福利厚生は「自学力の高い同僚」と「エキスパートから教わる環境」だと考えています。
社内勉強会は毎月約150回開催しており、言語や特定領域ごとに、専門性の高いテックリードから技術を教わることができます。通常、テックリードはプロダクト・プロジェクトごとに配置されているものですが、ゆめみのテックリードは特定のチームに所属せず、いつでも相談を受けられるようにと、稼働の5割近くをスタンバイ状態にしています。
さらに、よく会社への帰属意識を「エンゲージメント」と表現しますが、ゆめみの場合、それが埋め込みを意味する「エンベデッドネス」という言葉を使っています。
ほかの会社で上手くハマるポジションがなかったとしても、ゆめみのような柔軟な組織構造なら、組織自体の形を変えられるので、独自の価値を発揮できるようになる。一例を挙げると、「フロントエンドエンジニアで、テックリード志向で、かつ技術執筆にも非常に興味があるんだ」という人もゆめみはウェルカムです。「ゆめみにはあるが、他社にはないしっくりくるポジション」をすべてのメンバーに用意したいと考えています。
ぜひ転職活動をIT業界のこと、自分自身のことを深く知る機会にしてほしいです。
いまはエンジニアが会社を選べる時代です。そんな中、自分にはどんな企業が合うか見極めていくのは、難しいことかもしれません。メガベンチャーもスタートアップもあるし、変革に果敢に取り組む大企業も増えています。自社プロダクトを提供する企業もあれば、我々のように内製化支援という形でスタートアップや大企業を支援する会社もある。知っている業界、聞いたことがある企業と決めつけるのではなく、一度幅広くリサーチしておきましょう。
企業について知るのと同時に、自分にはどんな働き方が合うのかも考えてみましょう。職種はもちろん、専門性を極めるのか、フルスタックでやっていくのか。あるいは、技術志向なのか、それとも技術を手段として事業を推進していきたいのか。そういう志向性によって職種の選び方も変わってきます。
自分ひとりで考えるのがむずかしいなら、外部のメンターを活用したり、カジュアル面談を受けたり、なるべく他者の視点が得られるような機会を多く設けるのも一つの方法だと思います。
業界理解・自己理解を深めたうえで、ゆめみが合うかどうかを検討してくれたら嬉しいですね。ありがとうございました。
取材・文/古屋江美子
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