SmartHRのVPoEに聞く、変化を続ける組織に対応できる高い成長志向を持つエンジニアとは

2022年9月15日

株式会社SmartHR 執行役員 VPoE(VP of Engineering)

森住 卓矢

2012年からウェブ業界で働きはじめ、受託開発や事業会社でのSaaS開発を経て2018年8月にSmartHR入社。バックエンドエンジニアとしてSmartHRの開発に携わりつつ、スクラムやアジャイルの普及活動を行う。その後、オプション機能を開発するチームのプレイングマネージャーを担当し、30名ほどのマネジメントを行うエンジニアマネージャーを経て、2022年1月より現職。

エンジニアの採用担当者に選考のポイントや求める人物像について尋ね、現場のリアルな声を届ける「採用担当者の本音」シリーズ。第10回目は、株式会社SmartHRのVPoE・森住卓矢さんに登場していただきます。

クラウド人事労務ソフトを開発・運営するSmartHR。ユニコーン企業として注目を集める同社が求めるエンジニアの人物像はどんなものなのか? VPoEとしてエンジニア組織を牽引する森住さんに伺いました。

変化を楽しむプロダクト志向な組織

Q1. SmartHRのエンジニア組織について教えてください。

2022年8月時点で約80名のエンジニアが在籍しています。SmartHRの基本機能のプロダクト開発チームが約30名、そのほかのメンバーは、年末調整や分析レポートなどの機能に特化した、本体にアドオンする形で使える「オプション機能」単位でチームが分かれています。

当社のエンジニア組織の特徴の一つは、正社員比率が高く、ほぼ100%自社内で開発をしていることです。コアなプロダクト開発は全部スクラム開発を採用していますが、具体的な進め方はプロダクトのフェーズや各チームの規模に応じて柔軟に選択できます。SaaSプロダクトということもあり、長期にわたって同じチームで動くことが多いですね。

ソフト面では、全体的に変化を楽しめる人が多いように思います。SmartHRは1年前に比べて社員数が倍増しており、会社規模が大きくなるにつれ、組織形態や社内制度も変化しています。例えば以前はフロントエンドチームとバックエンドチームで、担当分野がはっきり分かれていました。でも、よりプロダクトの改善速度を上げようと、今は両者の垣根を取っ払ってお互いの開発に参加できるようにしました。そういう変化が起きたときに、前向きに対応できる組織かなと思います。

なお、働き方はフルリモートを取り入れており、選考やオンボーディングもオンラインで行っています。最近は月に1回、希望者がオフィスに集まる日をつくりました。フルリモートの導入によって遠方に住む方も増えたので、遠方居住者を対象に月2回まで、出社にかかる交通費をサポートしています。これは、対面での交流によって仕事のパフォーマンスを発揮しやすくするためのもので、全社的にも懇親を重視しています。仕事はもちろんのこと、チームメンバーとの雑談を楽しんだり、同じ趣味を持つ人で集まり交流を深めるといったこともあるそうです。

Q2. 今求めているエンジニアはどんな方でしょうか?

全社的には、採用ページで公開している通り、さまざまなポジションのエンジニアを求めていますが、中でも「ウェブアプリケーションエンジニア(バックエンド)」は特に採用したいポジションです。採用後は、SmartHR基本機能とオプション機能の開発の希望をお聞きしつつ配属を決めていきます。

プロダクトエンジニアに最も求めているのは、ユーザー志向であることです。もちろん技術的スキルも重要ですが、技術だけを追求するよりは「技術を通して何を解決するか」への関心を大事にしています。あとは当社とのカルチャーマッチですね。面接を通して本人のモチベーションが当社で満たせるかを確認し、その方のやりたいことを最大限に叶えられる配属先を判断しています。

Q3. 採用はどういうふうに行われていますか? そのプロセスを教えてください。

直接応募の場合はまず書類をいただいて、お互いの理解を深めるためにカジュアル面談を実施します。スカウトの場合は、先にカジュアル面談があって書類選考に進みます。正式にご応募いただける場合、それ以降の流れは同じで、一次面接では主に技術スキルをチェックし、二次面接では当社とのカルチャーマッチを確認します。最後に現職の上司や同僚にリファレンスチェックをお願いしています。

Q4. SmartHRに応募するエンジニアはどんな人が多いですか?

プロダクト志向で、チームでお客さまに向き合って、ユーザーに喜んでもらうことがモチベーションになる方は多いですね。あと、前職よりもっと社会貢献を実感したい、という意識を持った応募者も多いです。そういう意味では求める人材像と一致する方に来ていただいています。

また、SmartHRのユーザーとしてプロダクトを使ったことから、興味を持ってくださる方も結構いますね。実は僕自身、前職時代に年末調整でSmartHRを利用して「こんな便利なプロダクトがあるのか」と思ったことがきっかけで入社を決めました。

ただ、ゆっくりとしたスピード感で働きたいと考えている方は、少しギャップを感じてしまうかもしれません。創業者の宮田もブログに書いているように、SmartHRは外から見えているより実力主義なカルチャーで、常に自主的に能力を伸ばし続けないと、周りに置いていかれてしまいます。

良いプロダクトを提供するために、スキル幅を広げ続ける

Q5. SmartHRが高く評価するエンジニアの条件は何でしょうか?

採用で高く評価しているのは、学習意欲の高いエンジニアです。事業が高速に成長するなかで、エンジニアにも仕事に活かせる知識・スキルをキャッチアップすることが求められます。

例えば、先ほどお話ししたようにフロントエンドとバックエンドの垣根を取っ払ったことで、フロントエンド担当の方にもRailsを、バックエンド担当の方にもReact・TypeScriptを勉強してもらっています。社内でも勉強会を開催するなど、学習できる環境を提供しています。

SmartHRの2022年のプロダクトサイドの方針は、「顧客の価値で語ろう」です。顧客を理解した上で、必要なものを最短距離で提供することがミッションになっています。

そのためにはエンジニアリング領域に留まらずに、ユーザーヒアリングを行い、プロダクトマネージャーはもちろん、セールスといったbizサイドの意見も聞きながら、ユーザーが何に困っているのかを理解する必要があります。場合によっては商談に同行したり、カスタマーサクセスのオンボーディング動画を見たりもする。技術スキルだけでなく、ユーザーに喜んでもらえるプロダクト開発に必要な能力の幅を広げる努力が求められます。

Q6. エンジニアのスキルチェックはどういうふうに行われていますか?

これまでは一次面接でスキル感を確認したあと、次に進んでいただくか悩む場合はコーディングテストを行っていました。最近では面接担当者側のノウハウも蓄積されつつあるので、面接のみで判断する場合が多いですね。これまでに経験したプロジェクトについて深掘りしながら、苦労したことやその解決方法などを聞いてスキルの判断をしています。

Q7. 面接で必ずする質問はありますか?

前提として、スキル、モチベーション、カルチャーマッチの3つの観点から様々な質問をさせていただいています。その中から、「必ずする質問」として挙げるならば、下記の3つが挙げられます。

1つ目は、当社のバリューの一つでもある「自律駆動」です。オーナーシップを広く持ち、自分で課題を見つけ、解決に向けて主導して取り組むことが求められます。例えば、プロダクトの技術的課題を自ら探し、チームに解決方法を提案したり、チーム内で開発優先度を議論する際、積極的に議論に貢献するなど、プロダクトを良くするために必要なあらゆることにオーナーシップを持つ必要があります。

2つ目はチームで働くことへのモチベーションです。スクラム開発に必要な検査、適応、透明性をいかにチームで担保できるかを重視しています。毎週チームで行うレビューをよりスムーズに進めるために、常にプレゼン方法を改善したり、得たフィードバックをいかにプロダクトに反映するかをまたチームで議論したりしなければいけない。 HRT(謙虚・尊敬・信頼)を持って協力するのは最低ラインで、その上でチームをより良くする取り組みに貢献する意思が求められています。

3つ目は、前述の通り成長志向です。「これまでの失敗経験と失敗から何を吸収したか」「最近自主的に勉強していることは何か」などの質問を通して確認するようにしています。

Q8. 面接で「いいエンジニア」をどう見極めていますか?

自分の技術力を活かして、どのような価値をどれだけ届けられたかを語れるエンジニアは高く評価しています。SmartHRは日本一のSaaSを目指しており、当然、エンジニア組織も日本一のレベルにならなければいけません。それは、プロダクトをユーザーに届けるために必要なスキルを備えていて、ユーザーにとって必要なものをつくれる組織だと思っています。

ユーザーに価値を届けた上で事業をドライブさせるという目的に対して、何をしたのか。そこを明確に話せるかどうかは、面接で重視して聞いていますね。

労働市場の未来をともにつくりあげる

Q9. 採用プロセスの中で気をつけているポイントは何ですか?

重視しているのは、「選考はあくまでもお互いにマッチするかを確かめる場である」ということ。入社後のミスマッチを防ぐために、もちろん候補者にも腹を割って話していただきたいし、やりたいことが当社で叶えられるかを判断するために必要な情報があれば、こちらもできるだけお話しするよう意識しています。

面談や面接の場だけでなく、候補者から要望があれば社員との面談をセッティングするなど、コミュニケーションをとる場をなるべく設けるようにしています。

Q10. オンボーディングではどういうことをしていますか?

全社的には、入社前から企業やサービスに関するさまざまな情報をお渡ししていますし、内定者にも全社キックオフなどに参加していただいています。入社後も最初の2週間はオリエンテーションがあり、各部署の役割や組織の動き方、プロダクトの特徴などについて、各担当者から詳しい説明があります。

チームに配属されてからも、1カ月ほどのオンボーディング期間を設けています。各チームで新しくジョインしたメンバー用にチェックリストを作成しているほか、チームの雰囲気と働き方に馴染んでもらえるように設計しています。プロダクトを理解するのにもある程度時間がかかりますし、最初はとにかくキャッチアップのハードルを下げることを意識し、「馴染むこと」を目標にしています。

また、スクラム未経験で入社する方も多いので、オンボーディングとは別に週に1回、任意参加のスクラムマスター養成講座を2カ月にわたって行っています。なので、ジョインして最初の3カ月間は、オンボーディングが多い期間として捉えていただくとよさそうです。

Q11.エンジニアの方に「SmartHRに来るべき」とおすすめする理由は?

一つは高い社会貢献性とサービススケールの大きさです。「SmartHR」は4年連続シェアNo.1(※)のクラウド人事労務ソフトとして、今後アクセスできる対象は日本の労働力人口のおよそ6000万人。その一人ひとりにアカウントが付与されるので、管理するアカウント数の規模が非常に大きいです。これだけ広くアクセスされるSaaSプロダクトはそれほど多くありません。

残念ながら日本の労働力人口が今後減り続けるのは、避けられません。だからこそ、社員の働く幸せを考え、エンゲージメントを高く保つとともに、生産性を高めることは不可欠です。そのような社会変化がある中、SmartHRは日本の働き方を支えるプラットフォームを目指しています。

その際、今後はSmartHRの中だけでアプリをつくるのではなく、サードパーティのアプリも提供し、それがユーザーの価値提供につながるような世界観を目指しています。サードパーティのアプリがSmartHR上で動作する、つまりプラットフォーム化していく上での技術的な課題を、自分の手でクリアするやりがいもあると思います。

また、SmartHRは2015年にサービスローンチしてから今年で7年目を迎えました。多くのユーザーにご利用いただいている中で、良質なサービスを安定して提供しながら、溜まった技術的負債を解消することが大きな課題となっています。大変な挑戦でありながら、面白い仕事でもあると思います。

SmartHRはまだまだ未完成であり、これから新規で立ち上げたり、既存のアプリをグロースさせたりと、さまざまなフェーズのプロダクトがあります。ある程度PMF(プロダクトマーケットフィット/プロダクトが対象市場の顧客課題を解決でき、その市場に受け入れられている状態)ができていて、どう伸ばすかを考えるものもあれば、まずはPMFできるかを検証する段階のものもある。希望に応じて異動もあるので、エンジニアの皆さんに幅広い経験を提供できると思いますね。
※出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ『HRTechクラウド市場の実態と展望 2021年度』

Q12.SmartHRを希望するエンジニアに、今からしてほしい準備は何ですか?

特にございません。面接はお互いを知る場なので、準備はむしろしなくて大丈夫です。実際、内定者の方にも「入社前は何もしなくていい」とお伝えしていますし、ドメイン知識などを学んでいただくのは入社後でかまいません。

まずは今、目の前にある仕事に全力で取り組むことが、SmartHRであれほかの環境であれ、今後の仕事に繋がっていくと思います。もちろん、転職先としてSmartHRを希望していただけるならば、とても嬉しいです。

取材・執筆:天野夏海
撮影:若子jet

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