バーチャルデータサイエンティストアイシア=ソリッドが語る もう一度DAY ONEを始めるために「仕込み」を続ける真意

2022年6月6日

バーチャルデータサイエンティスト

アイシア=ソリッド

2018年5月から活動しているデータサイエンスVTuber。データサイエンスに本気で取り組む人を応援するべく、YouTubeを中心に統計・機械学習・深層学習などの動画をアップロードする。運営を担当する杉山聡氏は、2017年に東京大学大学院で博士(数理科学)を取得の後、株式会社アトラエに入社。同社1人目のデータサイエンティストとして、Data Science Team を立ち上げ、エンゲージメント解析プラットフォームWevoxのデータ分析を担当。

一般社団法人日本CTO協会が開催した「Day One – CTO/VPoE Conference 2022 Spring -」。バーチャルデータサイエンティストとして活動するVTuber、アイシア=ソリッド(Twitter:@AIcia_Solid YouTube:AIcia Solid Project)氏が語った、「仕込み」というキーワードを軸に、自分を、チームを、組織を、そして世界の明日をより良くする、そんな大きな流れの共犯者になる方法を紹介する。

※イベント開催当日は「真空管の破裂によるAIの不具合」によりセッションがキャンセルされ、こちらは後日動画として限定公開されている内容です。

結論から言うと、「仕込める限り、仕込むのだ!」

「Hello, world! アイシアです!」といういつもの挨拶から、データサイエンスVtuberのアイシア=ソリッド氏はセッションを始めた。DAY ONEをやっていく、新しい挑戦を続けていくにあたり心がけるべきこととして同氏が掲げるのは、「仕込める限り、仕込みましょう。そのために大事なのは、直感と論理と仲間」とのことだ。

アイシア=ソリッド氏について改めて紹介すると、2018年5月30日に誕生したバーチャルデータサイエンティストである。スプレッドシートの使い方に始まり、ベイズ統計や機械学習などの統計学、深層学習の重要モデルであるTransformerの解説などをYouTubeに動画投稿している。

そして、アイシア=ソリッド氏のAIをつくって学習させ、実装しているマスターの杉山聡氏。数理学の博士号を取得しており、株式会社アトラエ(Atrae, Inc.)に入社してからは、マーケティングに従事。2018年に社内1人目のデータサイエンティストに転向し、データサイエンスチームを立ち上げている。

データサイエンティスト協会のスキル定義委員も務めており、2021年度版「データサイエンティスト スキルチェックリストver.4」の作成や「データ前処理の100本ノック」の作成などに携わっている。

今回のセッションでは、この杉山氏の経歴をモデルに、今まさに「DAY ONE」を実践している人材のリアルなカオスと、データサイエンティストとして成長していくにあたって必要な「仕込み」について語られた。

杉山氏は最近、『イシューからはじめよ』『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』などの著書や、應義塾大学環境情報学部教授、ヤフー株式会社CSO、 データサイエンティスト協会理事・スキル定義委員長といった肩書でも知られる安宅和人氏のある言葉に深く感動したという。

経営っちゅうのは、幸せの量がこうなっていくために、
仕込めることを仕込めるだけ仕込んでいくってことなんですけど

つまり、人生における幸せの出来事を最大限に増やすためには、仕込めることは何でもやっておこうということである。

では、安宅氏が語るこの「仕込み」とは、何を指しているのだろうか。アイシア氏は杉山氏のキャリアを例に振り返ってみた。

杉山氏は2017年から、松尾研の機械学習・深層学習の社会人向けのオンライン講座を受講。その後、社内にはデータ分析の需要があると思い、インターン生とともに社内でデータ分析の仕組みをつくった。2018年には、社内一人目のデータサイエンティストに転向することとなる。

その後も、社内で機械学習やディープラーニングの勉強会を開始したり、有志と将棋部をつくって将棋AIで対戦したりもしていた。その他に「業務時間の10%を、本業とは別の個人プロジェクトに使う」という10%ルールを実践したり、AtraeのAl-Ready化などにも取り組んでいる。

アイシア氏は、これらはすべて「仕込み」だったのではないかと指摘する。

「これまでやってきた仕込みの花が開いて、今があるのかもしれない。さらに今やっている作戦や組織づくりが、将来的に花開いてもっとすごいことが起こるかもしれない。輝かしい未来に向かい、ウルトラグレートの戦略がロジカルに導き出されているように見えるかもしれない」

未来に向けて計画ある仕込みをすべき?! と思いきや…

しかし、現実はそんなことはないという。「ここはどこ?わたしはだれ?」という先が見えない混乱のなかでひたすら走っていたのが杉山氏のリアルだったらしい。

実際、Javaに憧れて7回勉強を始めては挫折。YouTubeも4回始めた。裏を返せば3回やめている。統計力学の勉強も5回始め、20%ルールは3回、データサイエンスの勉強会も4回挑戦してやっと続けてきたという。

「好奇心から複数のことを始めてはほとんどを飽きてやめる。そのうち唯一やり続けていたことが、次のステージにつながる。これを繰り返していただけなので、後から振り返れば目標に向けて戦略を立てて頑張ってきたように見えるんですね」

じゃあ、何を仕込めばいいのか?「直感」「論理」「仲間」が道標になる

「仕込み」の段階では、未来の道が見えていたわけではなかった。ある意味不都合な事実かもしれない。「仕込める限りのことを仕込めるだけ仕込んでおく。何が当たるかはわからないので、当たるまで出るように頑張るしかない」と、繰り返し語るアイシア氏。では、何を仕込めばいいのだろうか。

私にもわかりません

「この不確実性時代のなか、何を仕込めばいいのかに対する答えはないんですよね。ただ、なんとなくこれから進むべき方向を見定め、新しい場所に向かうための道標についてお伝えしたいと思います」

アイシア氏が挙げた道標は、「直感」「論理」「仲間」の3つである。それぞれその理由が説明された。

・直感:仕込みは楽しいほうがいい

仕込みには時間がかかる。仕込んですぐ成果が出ることは少なく、全て無駄になる可能性もなくはない。これからこの技術が来ると思って勉強したのに、来なかったという経験をしたことがある方もいるのではないだろうか。だから、「楽しい」を1つの軸に置きながら直感的にやりたいものを選ぶことがおすすめだという。

「私のマスターは数学者なので、統計の勉強や機械学習、ディープラーニングの勉強を選んでいますね。好きな技術に触っているときは楽しいという感覚を大事にしているみたいです」

・論理:せめて打率の高いことを

「仕込みは基本外す。超不確実でわからない」ことだらけではある。そのため、直感ばかりに頼るのではなく、イシュードリブンで考えて、真面目に調査したうえでせめて打率の高いものを仕込むべきだという。

アイシア氏はセッションのテーマでもあるデータ分析分野を例にあげ、何から始めるべきかの指針は「AI-Ready化ガイドライン」が参考になるとアドバイスする。

AI-Ready化ガイドラインは以下の図のように、横軸は経営マネジメント層、専門家、一般の従業員、システムレベル・データがどうあるべきかを、縦軸にはレベル1からレベル5まで、AIを活用するという観点でまとめられている。

「この表を自分のレベルと照らしチェックしていけば、どこから着手すればいいのかを論理的に絞ることができると思います」

AI-Ready化ガイドラインに沿って実践した事例に関しては、世界の時価総額トップ100の企業の事例を探すこと、先ほども紹介した安宅氏の著書『イシューからはじめよ』を実践することだと語られた。

「最近政府主導で作成している資料も質が高いものが多いし、各分野でもガイドラインをまとめてくださる有志の方は意外と多くいます。手にできる資料を参考にしながら、何から仕込めばよいかをじっくり考えていきましょう」

・仲間:みんなで進むため、みんなで考える

3つ目に挙げられたのは、仲間である。社会に大きなインパクトを与え、世界を良くする面白い仕事にステップアップしていこうと思ったら、一人では無理。アイシア氏はみんなで考え、みんなで進むことの重要性を訴えた。

「大きいことを仕込むにはリスクがある。不確実に挑むには、みんなで信じられるものをみんなで探す必要があります。仲間と考えれば、アイデアの精度が上がるのはもちろん、チームで検討することでより本質的なもの見える気がします」

正解の選択肢はない だからもう1回DAY ONEをはじめませんか

正しい方法論があって、それにそって仕込めば必ず成功できる、といったコスパのよい選択肢などない。試行錯誤を繰り返しながら考え続け、うまくいくまで頑張るしかないと、アイシア氏はメッセージを送った。

「何が当たるかわからない。せっかく本業の合間を縫って3個未来の種を仕込んだけど全部だめだったということもあるかもしれません。だからこそ、仕込めるだけ仕込んでおく、やれる限りのことをやっておきましょう。そんな自棄みたいでもあり、魂のブルース的な言葉を皆さんにお伝えしたいと思っています」

最後にまとめとして、アイシア氏は「もう1回DAY ONEをはじめませんか?」と呼びかける。それはたぶん一番苦しい時期であると同時に、後から振り返ったら面白くて楽しい時期でもあるはずだとメッセージを送り、セッションを締めた。

「私は今回語ったのは精神論だったけれど、他の講演の動画を見れば具体的なDAY ONEがたくさんあると思います。いろんなDAY ONEを見て、魂のエネルギーを補充しましょう。5年後に私がろくろを回していたら、この話は正しかったんだと思います。回してなかったらそっと忘れてください。というわけで、皆さんまたどこかで会いましょう、バイバイ!」

文:馬場 美由紀

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