炎症反応を脳や体が制御する仕組みを解明、Nature誌に掲載 コロナ後遺症の治療法につながる可能性も【研究紹介】

2024年5月8日

山下 裕毅

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米コロンビア大学などに所属する研究者らが発表した論文「A body–brain circuit that regulates body inflammatory responses」は、体の炎症反応をコントロールする、体と脳をつなぐ神経回路を発見し、その仕組みを明らかにした研究報告である。

▲論文のトップページ(スクリーンショット画像)

研究背景

人間の体には、病原体や異物から身を守るために免疫システムが備わっている。免疫システムが活性化すると、炎症反応が起こる。この炎症は、病原体を排除するために必要だが、度が過ぎると体に悪影響を及ぼす。そのため、免疫システムは絶妙なバランスを保つ必要がある。では、この免疫システムを適切にコントロールしているのは一体何なのだろうか。

研究内容

Nature誌で今回発表された研究によると、脳幹の孤束核にあるDBH(ドーパミンβ水酸化酵素)という物質を作り出す細胞が全身の炎症を監視し、サイトカインを調節することで炎症を抑制する役割を持つことを発見した。この細胞が、体の末端から送られてくる免疫シグナルを感知し、炎症を促進したり抑制したりする指令を送り返しているという。

研究チームは、マウスの腹腔内に細菌の成分(LPS)を注射して炎症反応を引き起こし、脳幹や血中サイトカインを観察した。すると、炎症反応は脳と体をつなぐ迷走神経を通り、孤束核が活性化した。

さらに、薬物を使ってこれらの細胞を活性化させると、マウスの血中の炎症性物質が減少した。一方、これらの細胞の働きを抑制すると、免疫反応が制御不能になり、炎症性物質が通常の約3倍も増加した。

また、迷走神経に、炎症を促進するシグナルに反応する細胞と、炎症を抑制するシグナルに反応する細胞が分かれて存在していることも突き止めた。

これらの発見は、自己免疫疾患やLong COVID(新型コロナ後遺症)などを治療する方法の開発に役立つ可能性があると、論文第一著者のHao Jin氏がこちらの記事で述べている。

Source and Image Credits: Jin, H., Li, M., Jeong, E. et al. A body–brain circuit that regulates body inflammatory responses. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07469-y

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