「1日1万歩で健康」説はやっぱり本当? 歩数や座位時間と死亡率の関係を調査、7万人を対象に【研究紹介】

2024年3月12日

山下 裕毅

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オーストラリアのシドニー大学などに所属する研究者らが発表した論文「Do the associations of daily steps with mortality and incident cardiovascular disease differ by sedentary time levels? A device-based cohort study」は、1日の歩数と、全死因死亡率およびCVD(心血管疾患)発症率の関連性を調査した研究報告である。

この研究は、UKバイオバンク(英国)の参加者を対象に実施。対象となった参加者7万2,174人(平均年齢61.1、女性57.9%)は、24時間7日間にわたって加速度計を装着し、1日の歩数と座位時間の測定を受けた。追跡期間(平均6.9年)中に1,633人が死亡し、6,190人がCVDを発症した。

研究内容

研究チームは、座位時間が1日10.5時間未満のグループ(座位時間が短い群)と10.5時間以上のグループ(座位時間が長い群)に分けて解析を行った。そして、各群において1日の歩数と全死因死亡率およびCVD発症率との関連を調べた。

その結果、座位時間の長さに関わらず、1日2,200歩(参加者の5パーセンタイル値)と比較して、1日9,000〜1万500歩が死亡率を最も低下させる最適値であることがわかった(座位時間が長い群でハザード比0.61、短い群で0.69)。これは1日2,200歩と比べ、1日9,000〜1万500歩では31〜39%、死亡率リスクが低下することを示す。また、最適値の約50%の歩数にあたる4,000〜4,500歩が、死亡率の大幅な低下に関連する最小閾値であった。

CVD発症率に関しては、座位時間が長い群では1日9,700歩が最適値であり、ハザード比は0.79(95%信頼区間:0.72〜0.86)であった。座位時間が短い群では、1日9,800歩が最適値であり、ハザード比は0.71(95%信頼区間:0.61〜0.83)であった。これは、1日2,200歩と比較して、CVD発症リスクがそれぞれ21%と29%低下することを示している。

▲座位時間の長さ(X軸)と全死因死亡率(Y軸・左)および心血管疾患発症率(Y軸・右)との関連を示した図。赤い丸印で示された1日10.5時間の座位時間を境界として、それより長い場合にリスクが顕著に上昇することがわかる。
▲1日の歩数と全死因死亡率の関係を示した図。黒い四角の点は最小有効量の歩数で、黒丸は最適値の歩数を表している。
▲1日の歩数とCVDリスクの関係を示した図。黒い四角の点は最小有効量の歩数で、黒丸は最適値の歩数を表している。

研究評価

興味深いのは、1日4,000〜4,500歩でも、死亡率とCVD発症率を大幅に低下させることである。1日2,200歩と比べ、死亡リスクが16〜20%低下し、CVD発症リスクが10〜14%低下することを示している。

また、同等の歩数であれば、座位時間が長い群と比べて短い群の方が、CVD発症リスクが約10%低いことが示された。一方、死亡率については、6,000歩から9,500歩の範囲では座位時間の群間でリスクの差はほとんど見られなかった。

これらの結果は、1日の歩数を増やすこと(目標9,000〜1万500歩)が死亡率とCVD発症率の低下につながり、そして座位時間を減らすことでさらなる効果が期待できることを示唆している。

Source and Image Credits: Ahmadi MN, Rezende LFM, Ferrari G, et alDo the associations of daily steps with mortality and incident cardiovascular disease differ by sedentary time levels? A device-based cohort studyBritish Journal of Sports Medicine 2024;58:261-268.

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