人間の脳組織を3Dプリンタで印刷。成長し神経ネットワークを形成、疾患研究への応用に期待 米研究者ら発表【研究紹介】

2024年2月6日

山下 裕毅

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米ウィスコンシン大学マディソン校などに所属する研究者らが発表した論文「3D bioprinting of human neural tissues with functional connectivity」では、人間の脳組織のように機能する神経組織を3Dバイオプリンティング技術で印刷する研究が報告されている。この技術で作成された神経組織は、人間の脳の特定部分や機能を模倣する能力を持ち、神経疾患の研究や薬物試験への応用が期待されている。

▲印刷された神経細胞の3D再構成

研究背景

人間の脳は、特化した神経細胞やグリア細胞からなる複雑なネットワークで構成されており、神経ネットワークがどのように機能するか理解することは、脳の健康や疾患に関する研究に不可欠である。しかし、動物モデルでは人間の脳の複雑な情報処理を完全に再現するのが難しいため、より適切な人間の神経組織モデルの開発が求められている。

▲研究の概要図

研究内容

3Dバイオプリンティング技術は、これらの神経組織をより正確に作成する方法を提供する。ただし、柔らかい生態材料による複雑な3D構造のサポートや、硬いゲルを使用しての機能を実現には課題が存在する。

この研究の目的は、組織層内および層間でシナプスを形成しながら成熟する層状の神経組織を構築することである。研究チームは、人間の神経細胞を希望の寸法で組み立てられる3Dバイオプリンティングプラットフォームを開発した

多層の脳組織は通常、層を積み重ねたり垂直に組み立てたりする方法でつくられるが、この際には硬いゲルなどのサポート材料が必要である。しかし、これが神経細胞間の接続を妨げる可能性がある。研究者たちは、この問題に対応するため、各層の厚さを50μmに設定し、層を水平方向に隣り合わせて積み重ねることで、薄いながらも多層で機能的な神経組織を構築した。また、印刷されたこの組織は、栄養と酸素を十分に受け取ることができるよう設計されている。

 

▲神経組織の印刷プロセス

神経細胞の印刷には、バイオインクが神経細胞の成熟を促進し、適切な分布を維持することが重要である。フィブリンゲルは、フィブリノゲンとトロンビンを主成分とし、神経細胞に対して生体適合性があることが示されている。研究チームは、フィブリンゲルをベースとして選択し、ヒアルロン酸を混合して印刷可能なバイオインクを開発した。

研究結果

これらの3Dバイオプリンティング技術により、印刷された神経前駆細胞は数週間で神経細胞に分化し、層内および層間で特異的に機能的な神経ネットワークを形成することが確認された。これらの神経ネットワークは、皮質から線条体への投射、自発的なシナプス電流、神経細胞の興奮に対するシナプス応答など、具体的な機能的特性を示した。

また、印刷されたアストロサイト前駆細胞も成熟したアストロサイトに発達し、ニューロンとの間で機能的なネットワークを形成することが示された。これらの神経組織は、人間の神経ネットワークの仕組みを理解するための研究、病理プロセスのモデル化、薬物試験のプラットフォームとして役立つ可能性がある

Source and Image Credits: Yuanwei Yan, Xueyan Li, Yu Gao, Sakthikumar Mathivanan, Linghai Kong, Yunlong Tao, Yi Dong, Xiang Li, Anita Bhattacharyya, Xinyu Zhao, and Su-Chun Zhang. 3D bioprinting of human neural tissues with functional connectivity.

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