脳に電流流してトレーニングすると学習効率アップ 米ジョンズ・ホプキンズ大の研究者らが検証【研究紹介】

2024年1月10日

山下 裕毅

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米国のジョンズ・ホプキンズ大学などに所属する研究者らが発表した論文「Anodal cerebellar t-DCS impacts skill learning and transfer on a robotic surgery training task」は、後頭部に軽い電流を受けた人たちがそれを受けなかった人たちよりも学習効率が良くなるかを検証した研究報告である。

▲脳に電流を受けながらロボット手術訓練タスクを行っている参加者

研究内容

実験では、36名の参加者(平均年齢27歳)が、非侵襲的な脳刺激の手法である経頭蓋直流電気刺激(tDCS)の適用を小脳に受けながら、仮想現実と実世界それぞれの設定でロボット手術訓練タスクを行った。訓練に使用された機器はda Vinci Research Kit(dVRK)で、タスクは手術器具を操作し、カーブした外科用針を3つのリングに通すことであった。参加者は、実際の刺激またはプラセボ(偽の)刺激を受けながらタスクを実施し、針の軌道エラーに関する多次元視覚フィードバックの提供を受けた。

研究結果

この研究の実験結果では、小脳に対する非侵襲的な脳刺激がロボット手術訓練タスクにおけるスキル学習と移行に有意な影響を与えることがわかった。具体的には、小脳刺激を受けたグループはプラセボを受けたグループと比べ、高速での実行が求められる状況においてタスクのパフォーマンスが顕著に向上した。

また、これらの参加者は仮想トレーニングで習得したスキルを実世界の環境へ効果的に移行することができた。これらの結果から、小脳刺激が運動学習プロセス、特に高速で要求される複雑なタスクにおいて有効であることが示された。

▲実験のセットアップ
▲dVRKで外科用針を3つのリングに通している様子

研究評価

この研究は、非侵襲的な脳刺激が実世界で関連するタスク、特に複雑な運動学習におけるスキル学習と移行を強化する可能性を示している。小脳は、運動学習、特に誤差に基づく学習において重要な部分として機能することが明らかになっており、tDCSによってこれらの領域への定電流を適用すると行動変化に影響を与える可能性がある。

この知見から、医療分野や他の仮想現実トレーニングを多用する産業における新たな訓練方法としての応用、ならびにロボット手術訓練プログラムにおける訓練時間の短縮や学習曲線の縮小に対する影響が期待される。今後の研究において、異なる実世界タスクにおける脳刺激の有用性や、タスクの複雑さがスキル学習と移行に与える影響を試していきたいとしている。

Source and Image Credits: Caccianiga, G., Mooney, R.A., Celnik, P.A. et al. Anodal cerebellar t-DCS impacts skill learning and transfer on a robotic surgery training task. Sci Rep 13, 21394 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-47404-1

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