【2024年新卒動向特別編】SIerが人気!? ITエンジニア新卒採用に異変あり

2022年6月29日

合同会社エンジニアリングマネージメント 社長 兼 流しのEM

久松 剛

2000年より慶應義塾大学村井純教授に師事。動画転送、P2Pなどの基礎研究や受託開発に取り組みつつ大学教員を目指す。博士課程(政策・メディア)修了。その後高学歴ワーキングプアを経て、2012年に株式会社ネットマーケティング入社。マッチングサービス SRE・リクルーター・情シス部長・上場などを担当。2018年にレバレジーズ株式会社入社。開発部長、レバテック技術顧問としてエージェント教育・採用セミナー講師などを担当。2020年より株式会社LIGに参画。海外拠点EM、PjM、エンジニア採用・組織改善コンサルなどを担当。現在は合同会社エンジニアリングマネージメント社長 兼 流しのEMとして活動中。X(@makaibito

レバテック株式会社 就・転職領域事業責任者

泉澤 匡寛

IT専門職特化型の転職エージェント「レバテックキャリア」にて、企業の採用支援や年間400名以上のエンジニア・クリエイターのキャリア支援を担当。その後、新卒エンジニア特化型の就職支援サービス「レバテックルーキー」を立ち上げ、国内最大規模の新卒エンジニア就職支援サービスへと成長させる。大学でのキャリア講師を兼任し、現在は就・転職領域の事業責任者を務める。

合同会社エンジニアリングマネージメントの社長兼「流しのEM」の久松です。IT界隈を歴史やエピソードベースで整理し、人の流れに主眼を置いたnoteを更新しています。

私は2013年からITエンジニアの新卒採用に携わってきました。新卒というのは、毎年入れ替わりが発生するため、トレンドがよく変わります。今回は、すでに動き始めた2024年新卒の市場動向について、エンジニア専門転職エージェント「レバテック」の関連調査データ*1を引用しつつ、そこから湧いた疑問を同社就・転職領域事業責任者の泉澤 匡寛氏に質問してみました。

調査概要

調査対象:新卒エンジニアを採用する企業の新卒採用担当者289名
調査会社:楽天インサイト株式会社(調査協力)
集計期間:2022年2月8日~2022年2月13日
調査方法:Webアンケート調査
有効回答数:289名
新卒エンジニアに求めるプログラミング経験年数、3社に1社が「1年以上」と回答

 

新卒エンジニアに求められる事柄の拡大

▲出典:新卒エンジニアに求めるプログラミング経験年数、3社に1社が「1年以上」と回答(レバテック調査)

久松:企業が求めるプログラミングスキルがJava、 C/C++など保守的に感じました。この調査の対象企業はSIerが多いのでしょうか。

泉澤:はい。母集団としてはSIerが多くなっています。

久松:それでもC/C++の需要が高いのはちょっと意外でした。需要増の背景はどういったものでしょうか。C/C++の案件が多いということでしょうか。

泉澤:いいえ、現場での肌感としては必ずしもC/C++の案件が増えているわけではないですね。需要が高い理由としては、アカデミックな知識を必要としなくても開発ができてしまう軽量言語よりも、C/C++を学んだ学習経験そのものを企業を評価しているように考えられます。

SIerの新卒に求めるレベル感の変化

久松:SIerというと、特に大手については適性検査を実施し、未経験人材でも手厚い社内教育制度によって人材育成をするイメージでした。ここについてはいかがでしょうか。

泉澤:はい。ここ数年は、新卒に求める要件が少し変化しているように感じます。ある程度学習実績のある方を、優先的に相応の年収提示で受け入れる姿勢が各社で確認されています。

久松:スキルレベルを求めるとなると、自社サービス企業では、新卒採用にプログラミングテストを実施するところも少なくありません。SIerはいかがでしょうか。もう研修を辞めたりしているところもあるのでしょうか。

泉澤:自社サービス企業のようにスキルテストを実施しているところはまだ少なく、多くの場合は面接での口頭質問で確認していると思います。引き続き研修を行っている企業も多いですね。ただ、これまで素養ベースで採用していたところが、今は具体的にどんなスキルが必要か、採用要件が細分化したというイメージです。

久松:このようなSIerの採用要件変化の背景はなんでしょうか?

泉澤:SIerが採用基準を引き上げているというより、以前と比べてより高いスキルの学生が採れるようになった、といったほうが正しいかもしれません自社サービス企業に志望が集まっていたプログラミング経験のある、あるいは情報系の教育背景のある学生が、SIerにも応募するようになったため、求めるスキル水準が自然に高くなったのではないでしょうか?

就活生の間で高まるSIer人気

久松:SIerが採用を強化し、採用要件や期待値が上がっていることは理解しました。若手エンジニアの採用市場において、学生の間では自社サービス > SIer > SESというヒエラルキーが存在しているように思いますが、今の就活生はいかがですか?

泉澤:ここにきてSIerの志望度が高まっている印象ですね。人気の背景としては下記のようなものがあります。

  1. 1. 不景気の中、企業としての安定性を求めている
  2. 2. 就活生の親(40代後半~50代)がSIerに在席し、子供に勧めるケースが増えている
  3. 3. 外資コンサルの人気が依然として高く、クライアントワークへの抵抗がなくなってきている
  4. 4. 自社サービス企業と比較して、SIerにより高い社会貢献度を感じる学生が増えている

久松:4点目はちょっとイメージと違いますね……

泉澤:自社サービス企業の多くは各事業を通しての社会貢献性を強く打ち出してきたが、企業数が多く、学生にとって馴染みの薄い事業を営んでいるところも多い。そのため、クライアントワークのほうが社会貢献性が高いのではないかと就活生に思われる傾向が出てきました。

久松:そのような変化があったのですね。外資コンサルは他社調査でも就活生の人気企業になっていますね。

泉澤:このようにSIer人気が高まっていることから、ある程度SIerが強気のスキル条件をつけても、問題なく新卒採用ができていると思いますね。

久松:SIer人気の背景にある社会貢献に対する認識は個人的に面白い部分です。企業からすると何かしらのお金が動いている以上、社会貢献には違いないものの、それをあえて明示することで採用に繋がっていたのが、ここ数年の新卒ITエンジニア採用でした。

しかし、ここに来て悟ったような動きが見られるのは興味深いです。自社サービス企業は、これまでのように社会貢献性を言語化するだけでは学生に訴求しきれなくなるリスクがありますね。

インタビューを終えて

私自身、自社サービス、クライアントワーク問わず若手・新卒採用に関わってきました。

ここ数年の傾向としては、自走(自学自習)できる人材は自社サービス、手厚い研修とサポートを受けたい人材はSIer、という流れがありました。しかしここに来て、進んでSIerに行く流れが出てきたようです。

経営者界隈がDXの文脈で内製化を目指す動きがあるなかで、今回の取材を通して下記の理由でSIerの必要性を感じています。

  • ・少子化が進む日本では正社員確保が難しいため、人的資源のシェアが不可避
  • ・高校卒業後すぐに大学に進学する日本においては、情報系学部進学者が新卒に占める割合が少ない。そのため、まとまった研修体制のあるSIerは教育機関の役割をある程度担っている

今後の景気や、各企業や職種に対するイメージの変化で、来年以降の採用シーンもまた今年と違う動きを見せるでしょう。コロナの影響で、学部生であれば大学生活のほとんどがオンラインだったこともあり、それによる価値観の変化も考えられます。企業としては過去の採用成功体験にとらわれず、採用戦略を立てて行く必要がこれまで以上に求められています。

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