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最終更新日:2024年9月12日

IT業界の元請けとは?特徴や企業例、下請けについても解説

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IT業界で耳にする「元請け」という単語について、「元請けとはどういう意味なのか」「元請けにはどんな企業があるのか」などの疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?

この記事では、IT業界における元請けの特徴を下請けとの関係性も交えて解説します。また、元請けの企業例についても紹介します。元請けと下請けについて理解を深め、IT業界の特徴を理解しましょう。

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IT業界の元請けと下請けについて

「元請け」と「下請け」の関係は、ビジネスにおいて様々な業界で存在します。ここでは、IT業界の例に絞り、それぞれについて解説します。元請けと下請けの定義や特徴について理解を深めましょう。

元請けとは

元請けとは、クライアント企業から直接仕事を請け負うことを指します。IT業界の場合、あるシステムを開発したいと考えているクライアントから、システム開発の案件を直接受託するSIer(エスアイヤー)が元請け企業です。これらの企業は、「直請け」「一次請け」「プライム」「元請負人」などと呼ばれることもあります。

IT業界の元請け企業は、案件を受託する際に、まずクライアントの要望をヒアリングし、予算やスケジュールを決めてクライアントに提案を行います。その後、開発するシステムの要件定義やシステム設計などの上流工程に対応し、下請け企業へ実際の開発業務やテストなどの工程を委託していくことが一般的です。また、元請け企業は、プロジェクトがスケジュール通り円滑に進むようにプロジェクトマネジメントを行う役目も担っています。

このように、IT業界の元請け企業は、クライアントから受託した開発プロジェクトの統括的な役割を担うことが多くなります。

下請けとは

下請けとは、元請け企業が請け負った業務の一部または全部を請け負うことを指します。下請け企業は、他にも「2次請け」「下請負人」などと表現されることもあり、IT業界の場合、元請けが決めた要件や仕様書などに沿ってシステム開発を行ったり、テストをしたりする企業がこれにあたります。基本的に、クライアント企業との接点はなく、元請け企業とのやりとりが中心です。

また、元請けから下請けに業務を委託する際は、請負契約や準委任契約などの契約を結ぶことが一般的です。請負契約とは、受注者(請負人)が委託された仕事を完成することを約束し、発注者は完成した仕事に対して報酬を支払う契約を指します。また準委任契約には、履行割合型と成果完成型の2種類があり、履行割合型であれば委託された行為の遂行にかかった工数や時間に対して、成果完成型であれば委託された行為の遂行によって得られる発注者の利益に対して報酬が支払われる契約です。

>関連記事:請負契約と準委任契約の6つの違い|それぞれの特徴と選ぶ基準を解説

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IT業界によくある多重下請け構造とは

多重下請け構造とは、クライアントから元請け企業に委託された業務が、2次請け企業、3次請け、4次請けのように何層にもわたって再委託されている構造を指します。

公正取引委員会の「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」では、多様化したエンドユーザーのニーズや幅広いIT技術への対応を自社の社員だけで行うことなどが難しいこと、プロジェクトの繁忙期のために社員を雇用するリスクがあることなどが、多重下請け構造が生じている要因であると言及されています。

この構造は建設業界でもよく見られる構造です。建設業界では、大手のゼネコンがクライアントから大型の案件を受注し、その案件を分割して下請け業者であるサブコンに発注、サブコンもまたさらに下請け業者へ業務を発注していく流れがあります。このように、IT業界と建設業界では下の表のようなピラミッド構造が形成されており、その構造が似通っていることから、IT業界における元請け企業は「ITゼネコン」と呼ばれることもあります。

このような多重下請け構造の問題点は、プロジェクトで問題が発生した際の責任の所在がわかりにくくなったり、より深い階層の労働環境が悪くなったりする傾向にあることです。たとえば、下請け企業への再委託が増えるほど、間に入る企業の中間マージンが発生するため、下の階層にいくほど受け取る利益は少なくなります。その結果、そこで働く労働者の賃金にも影響が生じています。

くわえて、下流の下請企業になるほど扱える予算が少なくなるため、プロジェクトに問題が発生した際もリソースの補充を行うことができず、そこで働くエンジニアの長時間労働につながっている点も、多重下請け構造の問題点となっています。

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元請け企業のメリットとデメリット

ここでは、元請け企業にはどのようなメリットとデメリットがあるのかについて解説します。

メリット

まずは元請け企業のメリットについて解説します。元請けのメリットは大きく2つです。

幅広い案件を受注できる

自社のリソースや技術のみでは受注が難しい場合でも、下請け企業と連携することでより幅広い案件を受注することができます。顧客のニーズの多様化しており、必要な技術の幅も広がっているため、自社だけですべてを網羅することは難しくなりつつあります。

下請けと比べて利益率が高い

元請け企業は、クライアントから受注した案件を下請け企業に委託する立場にあります。そのため、上位の会社による中間マージンが発生せず、より利益率が高くなる傾向があります。また、下請け企業に委託時のコストも抑えることができれば、より利益率を高めることが可能です。ただし、この点は後述する下請法に抵触しないように注意を払う必要があります。

デメリット

元請け企業のデメリットは、責任範囲の広さです。プロジェクトにて下請け企業が原因でトラブルが発生した場合でも、元請け企業が責任を負う必要があります。そのため元請け企業は、下請け企業を選定する際はより信頼できる企業を慎重に選ぶことが重要です。

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下請け企業のメリットとデメリット

元請け企業と同様、下請け企業にもメリットとデメリットがあります。それぞれについて解説します。

メリット

下請け企業は、新規の営業活動や広告宣伝活動を行わずとも、元請け企業との信頼関係が構築できている場合は、元請け企業から安定的に案件を受注できる可能性がある点はメリットです。

どのような案件を受注できるかは元請け企業に依存するため、自社の強みを活かしやすい元請け企業との取引を意識することが重要です。

デメリット

下請け企業のデメリットは、どうしても元請け企業に対して立場が弱いことです。元請け企業が下請け企業に案件を委託する際、複数の下請け企業に業務委託するケースが一般的です。その際、相見積もりの結果、各社に技術的な差がない場合はより価格が低い企業へ案件が流れてしまう可能性があります。

そのため、元請け企業からの値引き交渉に応じざるを得ないなど、下請け企業の立場が弱くなり、下請け企業の取り分が少なくなるリスクがあります。

元請け企業の義務や禁止事項とは

元請け企業には、下請法にもとづき下請け企業に対して果たすべき義務や禁止されている行為が定められています。下請法は、下請取引の公正化および下請事業者の利益保護を目的とした法律です。

下請法の対象となる企業は資本金によって決まる

下請法はすべての取引に適用されるわけではなく、当該事業者の資本金規模と取引の内容によって対象となる企業が決められています。

下請法第2条第1項〜第8項によると、物品の製造・修理委託および政令で定める情報成果物・役務提供委託(※)を行う場合で、下請法の対象となる取引は以下の2種類です。IT業界におけるシステム開発や運用の業務委託はこちらにあたります。

  • ・親事業者の資本金が3億円超かつ下請事業者(個人を含む)が資本金3億円以下の場合
  • ・親事業者の資本金が1千万円超3億円以下かつ下請事業者(個人を含む)が資本金1千万円以下の場合

(※)具体的な定義の詳細については下請法第2条第6項を参照

また、上記以外の情報成果物・役務提供委託を行う場合の取引は、以下の2パターンが下請法の適用対象となります。

  • ・親事業者の資本金が5千万円超かつ下請事業者(個人を含む)が資本金5千万円以下の場合
  • ・親事業者の資本金が1千万円超5千万円以下かつ下請事業者(個人を含む)が資本金1千万円以下の場合

なお、元請け企業A社から案件を受託した下請け企業B社が、さらに他の下請け企業C社に業務委託した場合、B社とC社の関係ではB社が親事業者、C社が下請事業者となります。

元請け 下請け 下請法

親事業者の4つの義務と11の禁止事項

下請法では、対象となる元請け企業に対して、以下の4つの義務と11の禁止事項が定められています。下請法が適用される対象を正しく理解して、対象となる親事業者はこれらの義務や禁止事項を遵守するようにしましょう。

※参考:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における 下請適正取引等の推進のためのガイドライン 

IT業界の元請けにはどんな企業がある?

IT業界の元請け企業にはどのような企業があるのでしょうか?ここでは、国内の元請け企業をそれぞれの持つ特徴ごとに区分けして紹介します。具体的には以下の表のとおりです。

メーカー系とは、NECや日立など、メーカー企業を親会社に持つ企業を指します。ユーザー系は、金融や商社などメーカー以外の企業を親会社に持つ企業です。いずれも、親会社の情報システム部門が子会社として独立した企業が多く、親会社に関する開発案件を請け負うことも多くなります。

一方で独立系とは、親会社を持たず独自で経営を行ってきた企業です。元請け企業以外も含めた場合、日本では独立系の情報システム会社が最も多くなります。

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