フルDart体制の10X。Dart未経験でも即戦力になれるエンジニアの特徴とは

2023年8月25日

株式会社10X エンジニアリング本部 本部長

小迫 明弘

立命館大学を卒業後に数回の起業で企画やデザインなどを経験した後、2015年Rettyにエンジニアとして入社。 長年VPoEを務めた後、2023年1月に10Xへジョイン。エンジニアリング本部 本部長としてエンジニア組織全体のマネジメントを担当。

株式会社10X HRBP

萩原 美緒

2008年にクックパッド株式会社に入社後、採用全般とコーポレートブランディング、海外事業等を担当。育休のタイミングで北海道へ移住し、2019年に食品開発の会社を創業。併行して2022年2月に10Xに入社し、HRBPを担当。

エンジニアの採用担当者に選考のポイントや求める人物像について尋ね、現場のリアルな声を届ける「採用担当者の本音」シリーズ。第14回は、株式会社10XのHRBP萩原美緒さんとエンジニアリング本部長の小迫明弘さんに登場していただきます。

ネットスーパーやネットドラッグストアの立ち上げと成長を支援する小売ECプラットフォーム「Stailer」を運営する株式会社10X。2020年に提供を開始したこのサービスは、ライフ、スギ薬局などをはじめ、日本中の多くの小売り企業に導入されています。

「Stailer」の開発に際しフレームワークにFlutterを採用し、プログラミング言語をDartに統一した同社。Dart未経験のエンジニアも多い中、すぐにキャッチアップして活躍できる人材かどうかを、面接でどう見極めているのでしょうか。採用担当者の2名にお話を聞きました。

採用面接は現場のエンジニアが中心

Q1. 10Xのエンジニア組織について教えてください。

小迫:エンジニアの人数は約35名(2023年7月時点)。会社は事業本部と機能本部、コーポレート本部から成るマトリクス組織です。エンジニアリング本部内には、アプリケーション開発、リライアビリティ&セキュリティ、品質管理、機械学習&検索という4つの部があります。開発体制は業務領域でチームを分けるドメインベースで、各チームにQAやPdMをアサインし、1チーム3~5名で動いています。

Q2. 採用のプロセスを教えてください。

萩原:職種によって多少違いはありますが、ソフトウェアエンジニアの場合は、書類選考、コーディング試験、1次面接、ディスカッション面接、人事面談、最終面談の流れで進みます。エンジニアの選考プロセスはすべて、社内のエンジニアが担当します

Q3. 各プロセスでの観点と目的を教えてください。

小迫:プロセスごとの観点と目的は公開しているので、選考を受ける前に確認できます。

▲公開されている10X社の選考ガイド。プロセスとその目的、選考担当者、所要時間などを事前に確認できる

小迫:書類選考においては、経験年数や関わってきたプロジェクト規模をみています。次のコーディング試験は、基礎的なスキルの確認が目的です。コードの読みやすさや名前の付け方も見ています。チームで開発する上では、わかりやすいコードを書くことは重要ですから。

萩原:1次面接は、当社のバリューとのフィットを確認します。選考に進むときにお渡しする面接ガイドに面接の目的を記しているので、事前にある程度準備はしていただけます。

小迫:ディスカッション面接は、実際に仕事を一緒にしたときにどういう議論ができるのか、お互いに確認できる場として設けています。所要時間は約70分で、前半でシステム設計の課題に取り組んでいただき、後半で、ご自身の設計に関して社内の2名のエンジニアとディスカッションをします。

まずは課題に対し、どういうアプローチをとったか説明したもらった後、「この可能性にはどう対処しますか?」「別のやり方もありますが、選ばなかった理由は?」など深掘りしていきます。実際の業務で直面する課題は複雑なものが多いので、1つの問題に1つの解法しか持たないと、イレギュラーなケースや急な仕様変更に対応できません。起きうることをどこまで考慮できているか、いわば設計力のようなものを確認させていただいています。

萩原:最終面談では、バリューフィットやお互いの期待値を改めて確認しています。全てのプロセスが終了した後、内定の場合にはオファー面談に進みます。

「技術力の高さ」より、「技術を使ってバリューを体現できるか」

Q4. 業界内でも珍しいフルDart体制ですが、Dart未経験でもすぐキャッチアップできるエンジニアには、どんな特徴がありますか?

小迫:キャッチアップの速さについては、一般論ですが、「今までいくつのプログラミング言語を扱えるようになってきたか」という経験の量が影響していると思っています。

エンジニアが1つ目の言語を覚えるにはものすごく時間がかかります。2つ目もまあまあ、3つ目もそれなり、でも4つ目くらいになると劇的に速くなることがある。プログラミング言語は、表現が違っても基本的な概念は同じですから、ある程度の経験があれば新しい言語のキャッチアップは容易にできます。とくにDartは学習難易度が高い言語ではないので、比較的すぐ習得できると思います。

もちろんそのスピードは人によって違いますが、経験による言語習得スキルの差以外では、比較的堅めのシステムをつくってきた人は設計の勘所をつかみやすく、キャッチアップが速い傾向です。

Q5:高く評価するエンジニアの条件は何でしょうか?

小迫:そもそもDartを扱った経験があるエンジニアが少ないのは承知の上ですから、当社では即戦力として入社当日からバリバリ働けるかどうかではなく、1次面接で確認するバリューフィットを重視しています。具体的には「Think 10x」「Take Ownership」「As One Team」の3つのバリューを掲げており、人事評価もこれに沿って実施しています。もちろん、技術力も大事ですが、その技術力をもって3つのバリューを体現していただきたいんです。個人的にはバリュー7割、技術3割くらいの感覚ですね。

萩原:ちなみに3つのバリューはどれも等しく大事なのですが、ユニークなのは「Think 10x」かもしれません。簡単にいうと、理想の未来を見据え、そこから逆算して今やるべきことを考え、探索的な一歩を重ねていくということ。大きな目標に向かって進むのは多くの方がやっていると思いますが、それが好きだったり、自然にできる方は、当社に合うのではないかと思っています。

Q6:面接で必ずする質問はありますか?

小迫:「10X Values」へのフィットを見るための質問をします。たとえば「Take Ownership」へのフィットを確認するなら、過去のプロジェクトでオーナーシップを発揮したと思うエピソードや、なぜ発揮できたかなどを聞きます。といっても「オーナーシップについて詳しく聞かせてください」という直接的な質問の仕方ではなく、プロジェクトの成果の出し方や苦労の乗り越え方をいろいろな角度で質問させていただき、判断しています。

Q7. オンボーディングではどんなことをしていますか?

萩原:入社から3カ月間はオンボーディング期間と設定し、メンターが伴走しながら10Xのカルチャーに慣れていただきます。全社共通のプログラム、エンジニアリング本部独自のプログラムをそれぞれ受けていただきます。

小迫:逆にいうと、3カ月かかるのはまったく問題ないですし、半年くらいで独り立ちしてほしいという感覚です。オンボーディングは、用意してあるドキュメントで各自学びつつ、メンターやマネージャー、チームメンバーにも適宜相談してもらっています。

面接は、会社と応募者がお互いに見極め合う場に

Q8. 採用プロセスの中で気をつけているポイントは何ですか?

萩原:10Xは勤務地をオフィスかリモートか選択でき、全国の好きなところに住めますし、面接も基本的にリモートで完結します。ただ、オンラインだとどうしても雑談がしにくかったり、違和感をキャッチしにくかったりすることがあるので、カジュアル面談など選考ではない会話の機会を積極的に設けるようにしています。

▲HRBPの萩原さんの背景には「好きな食べ物」の表示が。リモートでも和やかな雰囲気をつくれるよう工夫されている

小迫:採用は企業が一方的に見極めるのではなく、企業と志望者のマッチ度を見極める場だと思っています。お互いの「ここで働きたい」「この人に働いてほしい」という気持ちがマッチするのが一番なので、ぜひ志望するエンジニアのみなさんにも10Xを見極めてほしいですね。

今いるエンジニアは、経験年数が長く職人気質のタイプが多いこともあって、外部からは割と「怖い」というイメージを持たれているようですが、エンジニアとして成熟しているからこそ優しくてオープンな人ばかりです。ただ、仕事のスタンスは結構ストイックかもしれませんね。ノリや勢いでどうにかしようというよりは、地味でも正攻法で課題解決を目指す組織です。そういうアプローチが好きな人には非常に合っていると思います。

萩原:確かにキラキラしたスタートアップ、という雰囲気とは違いますね(笑)。社員の年齢層は30代中心なので、子どもがいるエンジニアも多く、会議で子どもが映りこんで和むことも。男性でも3カ月から半年くらい育休を取得する人が多く、代表の矢本も5月~7月中旬まで育休を取得していました。

Q9. 事業の成長に伴い、今後開発組織にはどんな変化が起こりそうですか?

小迫:今はシニアなメンバーが多いのですが、今後はジュニアのメンバーも、育成が可能な範囲で少しずつ増やしていきたいと考えています。今いるメンバーは育成経験も豊富なので、比較的バランスはとりやすいはずです。ただ、ジュニアのメンバーを増やしすぎると、シニアのメンバーが開発に工数を割けなくなったり、全体のスキルレベルが下がったりするリスクも生まれます。全体としてのスキルレベルは保ちつつ、のびしろのあるメンバーを少しずつ迎え、なるべく早く成長できるようにしていきたいと考えています。

また、直近では、エンジニアの人数増加に伴う組織的な課題もあります。3年前はエンジニアは7~8名しかおらず、マネジメントをしなくても各自が必要な作業をすれば事業が進んでいました。しかし今は35名まで増えたので、それでは回りません。マトリクス組織の採用やドメインベースのチーム分割など、すでに組織改革を進めていますが、まだまだ十分とは言えないのが実情です。ジュニアのメンバーを迎えられるよう、組織づくりにも注力していきます。

Q10. 10Xを希望するエンジニアに、今からしてほしい準備は何ですか?

小迫:とくに準備は必要ないです。Dartを勉強しておいたほうがよいということもありません。強いて言うなら、今の職場で仕事を精一杯頑張ってほしいですね。

萩原:やはり目一杯挑戦されてきた方のお話は、失敗も含めて非常に魅力的ですよね。もし少しでも興味を持ってくださったら、まずはカジュアル面談などでも気軽にお話できたらうれしいです。

取材・執筆:古屋 江美子

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