2024年1月25日
サイボウズ株式会社 システムコンサルティング本部 DevRel
forks
2012年にサイボウズに入社。現在は「kintone(キントーン)」について、リアルやVRイベントでの展示、ブログ執筆を通して発信している。趣味でもBlenderを使い、毎日オリジナルのアバターキャラクターを改造している。特技は片手でアーモンドを割ること。
サイボウズ株式会社 システムコンサルティング本部 テクニカルライター
chick-p
2019年にサイボウズに入社。同社製品に関する情報を開発者向けサイトで発信している。趣味は散歩とラーメンの食べ歩き。最近はうどんも食べる。推しのキャラクターはワドルディ。
サイボウズ株式会社 開発本部 テクニカルライター
hebiko
2021年にサイボウズに入社。同社製品のヘルプページやUI上の文言の執筆を担当している。趣味はゲームと料理。最近はホットサンドをよく作っている。マイブームはシナぷしゅ。
コロナ禍を背景に、オンラインミーティングが広く浸透しました。物理的な距離の制約を受けることなく打ち合わせができて便利な一方で、ミーティングのたびに、自分の姿と対面するのに疲れたりなど、そもそも自分の顔を映すことに抵抗を覚えるときもあるのではないでしょうか。とはいえ上司の手前で「カメラ完全オフ」も、それはそれで気が引ける。
そんなモヤモヤには、「アバター」が解決策になるかもしれません。「kintone(キントーン)」や「サイボウズ Garoon(ガルーン)」を手がけるサイボウズ社では、社内ミーティングにおいて、一部の社員がアニメキャラクター調の3Dアバターを日常的に用いています。そのメリットについて聞くと、「日々のオンラインミーティングで疲弊している方におすすめ。元気が出ますので」「自己肯定感が上がった」など、気になる感想が飛び出しました。
forks:入社面接や社外とのミーティングはさすがに使っていませんが、それ以外は基本的にアバターを使っています。上長との1on1も、アバターで出ています。
chick-p:私も社内のミーティングだと、ほぼ100%アバターで参加しています。
hebiko:自分の場合は社内では8割アバターです。例外の2割は、VTuber文化やアバターという概念に馴染みのない方や高年齢層が多いミーティング、また初対面の社員と話すときです。こうした場合はリアルアバター(現実の姿)で一回出席し、「アニメ調のアバターで参加しても問題ないですか」と聞くなど、様子を見ています。
forks:始まりは2021年です。当社ではもともとオンラインでのミーティングが広く浸透してはいましたが、コロナ禍により、私は21年にほとんど出社した記憶がなく、ミーティングはいよいよすべてオンラインに。これが連続すると、かなり疲れます。というのは、ミーティング中は自分がどう見られているのか意識し続けることになりますし、何より、自分の顔に見飽きちゃうというのが大きい。
ミーティング中のカメラのオン/オフは、
転機になったのが21年10月、弊社が提供している業務用アプリをノーコードでつくれるサービス「kintone」を使った面白いカスタマイズを披露するコンテストイベント「kintone hack」への参加です。私が発表したのは、アバターとkintoneを連携させるというネタでした。
forks:kintoneのAPIを使って、Unity上につくったVR空間とkintoneでつくった業務用アプリを連携させ、VR空間にアプリを表示させました。
このときは出張申請アプリをサンプルにしていました。社員がkintone上で申請内容を入力すると、その内容がVR空間内に表示され、私が操作している美少女アバターがその申請を確認したり、承認したりできるようにしました。現実世界の私が顔を横に振ると、アバターも顔を横にふり、次の申請レコードにスライドしたり、笑顔を浮かべると申請を承認できたりと、ジェスチャーで操作可能にしたのです。
残念ながらこのイベントでは、ファイナリストにはなれなかったのですが、その後イベントでの敢闘者を対象とした社内インタビューに出演したとき、発表内容にちなんでアバターの姿でインタビューを受けました。
それからしばらく経って22年に入り、相変わらず続くビデオ会議に心をすり減らしていたところ、「過去の社内インタビューでアバターを使ったから、ミーティングにも美少女姿で出席していいのではないか?」とふと考えたんです。
実際にやってみたら、オンラインミーティングが楽しくなっちゃって(笑)。これまで毎日「またミーティングか…」とつらい思いで過ごしていたのに、「かわいいところを見せたい!」という欲が出るようになり、気づけばミーティングが楽しみになりました。
chick-p:私はforksさんからの影響が大きいですね!
きっかけは、テクニカルライティングに関する社外での勉強会で、オンライン登壇する機会があったこと。登壇自体はぜひやってみたいと思ったものの、顔出しにはどうしても抵抗がありました。そもそも目立ちたくないタイプですし、意図せず知り合いに見つかってしまうかもしれないという心配もあって。なんとか顔を出さずに登壇できないかと考えたとき、アバターでミーティングに参加しているforksさんのことを思い出して、自分で手法を調べ、美少女アバターで登壇しました。
その後、社内ミーティングでもアバターを用いるようになりました。forksさんが日常的にアバターでミーティングに参加していて、社内でも自然と受け入れられていましたから、私も後に続く形で。アバターを使っていると、結果として目立っている気もするんですけれど(笑)。
hebiko:私は、forksさんやchick-pさんがアバターを使い始めたのを見て、「うわめっちゃかわいい!」と惹かれていました。しかもなんと、chick-pさんがご自身のブログで、アバターを用意してビデオ会議に参加するまでの具体的な手順を詳しくまとめていたんです。私の環境もMacなので大変助かりました。そのブログに沿って自分もアバター参加を試してみようと思い、2人とも美少女なので、「どうせなら」とイケメンのアバターをつくりました。
forks:心が復活しました。潤ってきました。
見飽きたリアルアバター(現実の姿)と対面しなくてよくなったことはもちろん、アバターの見た目を好きに変えられるのもめっちゃ楽しいんですよね。
この間の夏のミーティングで、アバターがパーカーを着ているのを見た上司から「暑苦しい!」と冗談を言われたことがありました。「じゃ、次回は涼しい格好してきます」と返したのをきっかけに、時季に応じて着せ替えをするようになりました。冬には防寒着、夏には薄着、祝日などのときはそれ相応のコスチュームを身につけていました。見た目に飽きがこないし、着せ替えたことに反応をもらえるのもうれしいです。
chick-p:カメラをオンにすることへの抵抗がなくなりましたね。顔出しはしたくないのですが、オフにすると、会議のファシリテーション担当者にとってはやりづらいのではないかとの気持ちもあります。その点、アバターで参加すると、ミーティングに前向きに参加している様子は伝わる。カメラオフ時のちょっとした申し訳なさから解放されました。
hebiko:VTuber文化に馴染みのある社員さんからは、好意的に「そのアバターすごいですね」「どうやっているんですか」と話しかけられたり、打ち合わせのアイスブレイクでツッコまれたりと、アバターをきっかけにコミュニケーションが生まれることもあります。アバターの方が実写よりもかえって話しかけやすいと言っている方もいて、面白いなと思います。
あとSlackのハドルミーティングでカメラをオンにすることへの抵抗がなくなったのは大きいです。他のツールに比べて、顔の色味などの補正機能がほとんどないので、リモート中自分の顔を映すのが特にしんどかったんです。でもアバターを使うようになってからは、ハドルで話そうと声をかけられるたびに、むしろ「受けて立つぜ!」との気持ちになりました。
chick-p:そうですね。むしろ画面を見たときに映るアバターを見てテンションが上がります。「自分かわいい」と自信を持てるというか。「chick-pさんのアバター、かわいいね!」と褒めてもらえると、「でしょでしょ?」とうれしくなります。それで自己肯定感も上がりますね。
forks:上がる、上がる。
衣装の3Dモデルを探して、ミーティングで使えるように準備するのにはそれなりに手間も時間もかかります。でもやりきって披露したとき、周りの人から反応をもらえるのは本当にうれしいですね。自分でがんばって選んだものが他の人に認められた高揚感があります。
hebiko:褒められると、「私がつくったアバターいいでしょ?」という気持ちと、「私(自身が)、いいでしょ?」という気持ちとでうれしくなります(笑)。
forks:もともと「100人100通りの働き方」を掲げている会社なので、仕事のやり方は割と自由です。勤務時間や場所を柔軟に調整できますし、ひとりひとりの独自の働き方を理由なく否定することはありません。
このような企業文化なので、アバターを使う準備ができた後、ある日のミーティングにしれっとアバターで参加してみたんです。参加前には、好意的に受け止めてもらえない可能性もなくはないと覚悟していたものの、驚くほどすんなり受け入れてもらえました(笑)。
その後、実はちょっと心配になって、1on1などで都度、アバター参加を変に感じていないかをメンバーに確認していましたが、「全然気にしていない」という声が多かったですね。
forks:まだまだ課題はたくさんありますね。たとえば、手の動きのトラッキングはソフトによってできたりできなかったりします。コミュニケーションにおいては、手を使って何かを表現したい場面もありますが、実際の手の動きと全く同じようにアバターを動かすことはまだ難しいです。
現状では、拍手や手を左右に振る動作など使うシーンの多いモーションを、Windows PC上でアバターを動かせるソフト「VMagicMirror」に事前に登録しておき、それを適宜選択して再生することで、ミーティング中にアニメーションとして表現する形で対処しています。
表情については、私は「iFacialMocap」という、iPhoneのカメラで顔の表情や動きをキャプチャできるアプリを使っています。これで得た情報を、「VMagicMirror」に送信し、デスクトップ上で3D美少女の表情や頭の傾きを操っているわけです。
「iFacialMocap」はお手軽で便利なアプリですが、あくまで顔の動きしか取得できないため、アバターの体までは動かせません。
chick-p:forksさんと異なり、私はまだモーションキャプチャには手を出していません。直近では、顔の表情を自由に伝えられないというのが一番の課題ですね。たとえばミーティング中につらい話や悲しい話をしているとき、それ相応の表情をしたいのですが、アバターの顔を制御できず「不謹慎」な顔になってしまうことがあり、困っています。逆に楽しい気持ちを伝えたいときも、私のアバターでは「笑顔」を多彩に表現することはできません。今は、アバターの口を開かせて、笑っていると伝わるように気をつけています。
hebiko:私は手の動きを表現できるようになりたくて、必要なハードウェアを買い揃えましたが、まだ実装できていないですね。
VR界隈ではゲーミングPCでアバターを使っている人が多い分、Windowsならすぐに連携できるのですが、私が使っているMacで動かすには、自分でいちから環境を構築しなければなりません。いまはなかなかまとまった時間が取れず、まだできていないですね。
forks:ちなみに3人とも、アバターのモデリングは「VRoid Studio」という初心者でも扱いやすいソフトを使っています。VRoid向けの髪型セットや衣装はBOOTHなどで販売されており、着せ替えも手軽です。ミーティングにアバターを用いる手順については、あくまで一例ではありますが、Windows向けの方法は私のnoteで、Mac向けの方法はchick-pさんのブログで解説しています。
取材・執筆:田村今人
編集:光松瞳、王雨舟
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