ゲームの「主人公の声」を「自分の声」にしたらどうなる? 米研究チームは声の類似性がユーザーに与える影響を実験【研究紹介】

2021年12月13日

コラム「海外最新IT事情」は、各国のIT情報に詳しいコラムリストの方々が、海の向こうで起きているIT業界の動向を解説します。

山下 裕毅

先端テクノロジーの研究を論文ベースで記事にするWebメディア「Seamless/シームレス」(https://shiropen.com/)を運営。

米パデュー大学と米ミシガン州立大学の研究チームが発表した論文「The Effects of a Self-Similar Avatar Voice in Educational Games」は、ゲームにおいて、自身の声と自身が動きを操作するアバターの声の類似性がユーザーにどのような影響を与えるかを検証した研究だ。

アバターの声は、バーチャルYouTuberやソーシャルVRのようなリアルタイムに自分の声が反映されるコンテンツではなく、予め決められたセリフをゲーム上のアバターが発するものを想定している。今回は、主に娯楽を目的としたゲームではなく、教育的な学習ゲームで声の類似性を研究した。

▲実験中のプレイ画面

実験背景

ゲームにおいて、自分とアバターとの同一性を高めることは、ユーザーのモチベーション、臨場感、パフォーマンス、感情的なリアリズム、他者への信頼などの向上が先行研究で実証されている。

しかし、自分とアバターの同一性を高めるための研究は多数あるにもかかわらず、そのほとんどはアバターの視覚的な側面にのみ焦点が当てられており、聴覚的な側面には焦点が当てられていない。アバターの見た目はユーザーに似せても、ユーザーの声に似た声で話すアバターはいないのだ。これは、聴覚的な側面がアバターの重要ではない要素として認識されていることや、ユーザーの声に似た合成音声を開発するためのコストが高いことなどが考えられる。

これらの課題に対して、音声合成エンジンや音声クローニングなどの技術が発展し、アバターの合成音声の開発に必要なリソースは大幅に削減された。それによって、アバターの合成音声の効果に関する研究の新たな機会を生んでいる。

実験内容

実験では、被験者140人を対象に、ニューラルネットワークによる音声クローニングを用いて、声の類似度を調整した。半数の被験者には自分の声を基に作成した合成音声を、残り半数の被験者には他の人を基に作成した合成音声をアバターの声とした。また、ピッチシフト(声のピッチを上下にずらしたり、まったく変えなかったりする調整)を被験者全員に行った。

被験者には、今回のために作られたアバターの音声付きゲーム「CodeBreakers」をプレイしてもらう。 CodeBreakersは、プレイヤーが徐々に難しくなるコードの問題を解決していくプログラミング学習ゲーム。アバターの見た目は、視覚的に影響が少ない青一色に設定した。

▲音声はアバターの吹き出しのテキストと連動する

実験結果

プレイ後、没入レベルやプレイ時間、ゲームのパフォーマンス、モチベーションなどの測定をリッカート尺度で行った。その結果、声が似ている条件の被験者は、声が似ていない条件の被験者に比べて、有意に没頭し長い時間をプレイした。また声が似ている条件の被験者の方が、ゲームのパフォーマンスが良くモチベーションも高くなる傾向があるとわかった。一方で、20Hz程度のピッチシフトでは成果に影響を与えなかった。

この結果は、アバター音声の重要性を示したと同時に、音声の類似性を高める方法でゲームをより魅力的な体験にでき、またユーザーにとってもより高い成果を得やすくなる方法だと示された。

この効果は、ゲームだけではなく、言語学習や音声アシスタント、バーチャル空間でのプロテウス効果など、さまざまな分野で同様の効果が得られる可能性を示唆した。

 

Source and Image Credits: Dominic Kao, Rabindra Ratan, Christos Mousas, and Alejandra J. Magana. 2021. The Effects of a Self-Similar Avatar Voice in Educational Games. Proc. ACM Hum.-Comput. Interact. 5, CHI PLAY, Article 238 (September 2021), 28 pages. DOI:https://doi.org/10.1145/3474665

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