2024年8月9日
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オーストラリアのマッコーリー大学と英オックスフォード大学に所属する研究者らが発表した論文「Do people sincerely believe conspiracy theories that they endorse?」は、陰謀論の支持と不誠実な回答の関係を調査した研究報告である。
研究チームは、オーストラリアの有権者1,044人を対象に、陰謀論に対する態度を調査した。この調査では、平均年齢48.1歳の参加者を対象に、6つの既存の陰謀論と1つの架空の陰謀論について尋ねた。
既存の陰謀論には、「人類が地球温暖化を引き起こしているという考えは、人々を欺くためにつくられたデマである」や「政府は、5G通信がコロナウイルスを拡散させているという事実を隠蔽している」「コロナウイルスは、いくつかの強力な勢力によって創造されたつくり話であり、実際にはウイルスは存在しない」などが含まれる。架空の陰謀論は、「カナダ軍は、近隣国を侵略するために超知能を備えた遺伝子組み換えの巨大アライグマのエリート部隊を秘密裏に開発している」という突拍子もない内容である。
さらに、これらの7つの陰謀論に対する支持度を「完全に誤り」「おそらく誤り」「分からない」「おそらく真実」「完全に真実」のいずれかで評価するよう回答者に求めた。そして、調査の最後には、不誠実な回答をしたかどうかを参加者に自己報告させた。
調査の結果、まず参加者の34.4%が少なくとも1つの既存の陰謀論を支持し、4.69%の参加者が全ての陰謀論(架空のものを含む)を支持した。そして、不誠実な回答をした群が支持した陰謀論の数は平均2.04個だったのに対し、誠実に回答した群は平均0.79個だった。また、架空の陰謀論を支持した群は平均4.08個の既存の陰謀論を支持したのに対し、支持しなかった群は平均0.50個だった。
回答の信頼性が疑わしい参加者(不誠実な回答をしたと報告したか、架空の陰謀論を支持した参加者)のうち、63.9%が少なくとも1つの既存の陰謀論を支持し、26.0%が全ての陰謀論を支持した。一方、回答の信頼性が疑わしくない参加者では、それぞれ26.0%が1つの既存の陰謀論を支持し、全ての陰謀論を支持する回答は0.1%にとどまった。
要するに、回答の信頼性が疑わしい人は陰謀論を支持する傾向が高く、回答の信頼性が高い人は陰謀論を支持する傾向が低いという結果が示された。
さらに興味深いのは、明らかに矛盾する2つの陰謀論を同時に支持する傾向も、不誠実な回答や架空の陰謀論の支持と関連していた。例えば、「コロナウイルスは存在しない」という説と「5Gがコロナウイルスを拡散させている」という矛盾する2つの説を同時に支持する傾向が、回答の信頼性が疑わしい参加者で顕著に高かった。
この研究結果は、陰謀論の信念の拡散に関する分野の調査では、回答が過大評価されている可能性を示唆している。多くの参加者が、実際には信じていない陰謀論を「支持している」と回答している可能性があるのだ。研究チームは、この問題が陰謀論研究だけでなく、回答の誠実さが疑問視される他の分野、特に誤情報に関する研究にも影響を与える可能性があると指摘している。
Source and Image Credits: Ross, R. M., Gleeson, K., Wilson, S., Ashton, L., & Levy, N. L. (2024, July 31). Do people sincerely believe conspiracy theories that they endorse?. https://doi.org/10.31234/osf.io/zsncr
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