脳に注射で極小ゲルセンサーを埋め込む。 サイズ米粒以下、数週間後に溶解、中国の研究者ら発表【研究紹介】

2024年6月10日

山下 裕毅

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中国の華中科技大学など所属する研究者らが発表した論文「Injectable ultrasonic sensor for wireless monitoring of intracranial signals」は、頭蓋内の生理学的信号を超音波でワイヤレスに計測できる、注射可能で生分解性のあるゲルセンサーを開発したとする研究報告である。このセンサーは脳の健康状態を監視するために使用され、数週間で体内にて溶解するという特徴を持つ。

▲立方体の柔らかいゲルセンサーは注射針で脳内に注入する
▲米粒以下のサイズのゲルセンサー

このセンサーは、各辺が2ミリメートルの柔らかいハイドロゲルの立方体であり、精密に配置された空気の柱によって構造化されている。非常に小さいため、大がかりな手術を必要とせずに注射針で脳内に注射して埋め込むことが可能である。

頭蓋の内圧や温度、酸性度(pH)などが変化したときにゲルセンサーの形状が微小に変形する。このゲルセンサーに向けて外部から超音波を当てることで、内部のチャネルが超音波の反射を制御し、脳内の変化を観察できる。

▲注射器で脳内に埋め込んだゲルセンサーを外側から超音波で観察する

これにより、深さ10センチメートルまでの脳内の状態をワイヤレスで知ることができる。また、頭蓋の内圧、温度、pH、血流の流量を、それぞれ独立して測定できる。

研究チームは、ラットやブタの脳に注入したゲルセンサーが、頭蓋の内圧、温度、pH値、血流を測定できることを動物実験で示した。ゲルセンサーによるモニタリングの結果は、従来の有線臨床プローブを用いた結果と同等であった。さらに、ラットの脳に埋め込まれたゲルセンサーは、長期間にわたって頭蓋内圧を安定してモニタリングできることが示された。

▲ゲルセンサーを豚の脳に埋め込んだ実験の概要

また、動物の脳内に注入されたゲルセンサーは、18週間でほぼ完全に分解されることが確認された。分析結果から、ゲルセンサーの機能と分解のサイクル全体を通して、ラットの脳におけるゲルセンサー埋め込み部位での免疫反応は最小限であることが示された。

Source and Image Credits: Tang, H., Yang, Y., Liu, Z. et al. Injectable ultrasonic sensor for wireless monitoring of intracranial signals. Nature 630, 84–90 (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07334-y

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