青と黄を混ぜると「きちんと」緑色になるお絵かきデジタルツール 油絵や水彩画などのデジタル再現に活用【研究紹介】

2022年1月21日

山下 裕毅

先端テクノロジーの研究を論文ベースで記事にするWebメディア「Seamless/シームレス」(https://shiropen.com/)を運営。

チェコ工科大学の研究チームが開発した「Practical Pigment Mixing for Digital Painting」は、実際の絵具が混ざったような色を表現できるペイントデジタルツールだ。これまでと違い、忠実度の高い混色を出力し、油絵、パステル画、水彩画などのスタイルをリアルに描ける。

先行研究

青色と黄色を混ぜると緑色になることはよく知られているが、Adobe PhotoshopやProcreateなどの従来のペイントソフト/アプリでは、緑色にならずに灰色っぽくなる。これは、青と黄の光を同じ場所に当てると白っぽい色になるように、色光の加法混色に対応するRGBで絵を表現しているためだ。一方で絵具の色は、光を複雑に吸収と散乱させる顔料の粒子の塊から得られるため、混合結果が異なってくる。

▲(左端)実際の絵具で青色と黄色を混ぜた時の様子(中央6つ)従来のペイントソフト/アプリを使って混ぜた時の様子(右端)本手法を使って混ぜた時の様子
▲本手法を使って混ぜた結果

混ぜるときちんと緑色になる効果だけでなく、他にも、白と混ぜると彩度が下がるRGBとは異なり、絵具では彩度が上がり、生き生きとした鮮やかな仕上がりになる。このように、絵具と従来のペイントデジタルツールでは、異なる点が多様にあるわけだ。

先行研究でもこれらの議論はされており、絵具をシミュレーションした手法も何十年も前から登場している。しかし、各ピクセルで利用可能なすべての顔料の濃度を追跡する必要などで、各ピクセルのチャンネル数を増やさないとならないデメリットがあった。顔料混合物ではRGBの全色域をカバーできないのも一因して、現在の主要なペイントデジタルツールには反映されていないのが現状だ。

▲(左)従来のペイントデジタルツールで採用されているRGB表現(右)絵具のような表現をしたい場合、各ピクセルのチャンネル数を増やす必要がある

実証実験

そこで本研究では、RGB情報のみで動作する顔料混合の新しいアプローチを提案する。現在のペイントソフトウェアで使用されている最も基本的な混合演算は、線形補間(LERP)で、2つの色と混合パラメータを受け取り、入力の線形結合として混合された色を生成する、RGB入力/RGB出力を基本としている。

これに習い、今回はRGB入力を受け取りながら、混合顔料を予測するモデルに従い、実際の絵の具を混ぜた場合に生じる色を再度RGBで出力し、LERPの代替バージョンを構築する。これをKMERPと呼んでおり、入力RGBの色を顔料濃度のベクトルに変換し、濃度と残差の両方を結合し、結合された濃度を再び混合して、最終的なRGB色を出力する手法である。本手法は、顔料から混合できないRGBの全色域もすべて対応している。

さらに本実験では、これらをカプセル化し、既存のソフトウェアに実用的に組み込めるようにした。インメモリのペイント表現をそのまま維持し、色混合コードの中でLERPのすべての出現箇所をKMERPに置き換えるだけで実行でき、容易に従来のペイントデジタルツールに統合できる。

実験では、Escape Motions社と共同で、同社のペイントソフト「Rebelle」に本手法を組み込んだ。8ビットRGBのキャンバスに、通常のHSVホイールから選んだ色で油絵、パステル画、水彩画の3種類の技法で混ぜた色を検証した。

実験結果

その結果、従来の手法では常に灰色がかったくすんだ色になるのに対し、本手法では、描画時の顕著な遅延も見られず、自然な色合いを示した。油絵、パステル画、水彩画のすべての技法において、青色と黄色が混ざり自然な緑色が出力された。またパステル画では、マゼンタと黄色を混ぜた場合、従来の手法では彩度が低く弱いオレンジ色で出力されるのに対して、本手法では燃えるようなオレンジ色が得られた。

▲上から油絵、パステル画、水彩画をシミュレーションした混色で、(左)従来の手法と(右)本手法の出力結果を比較した

さらに、白色と絵具を混ぜた実験では、従来の手法では色が脱色して薄暗くなるのに対して、本手法では色相の変化や彩度の上昇が顕著になり、グラデーションが鮮やかに保たれた。

▲(左)従来の手法で白と絵具を混ぜた結果(右)本手法で白と絵具を混ぜた結果

これまでと違い、本システムを導入することで、ユーザーは元に戻したり、レイヤーを組んだりするなどのデジタルの利点を享受しながら、紙などに描いた時の本当の混色を駆使した環境で作品を生み出せる。

Source and Image Credits: Šárka Sochorová and Ondřej Jamriška. 2021. Practical pigment mixing for digital painting. ACM Trans. Graph. 40, 6, Article 234 (December 2021), 11 pages. DOI:https://doi.org/10.1145/3478513.3480549

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