ブラックホール内部の量子状態をもとにエントロピーを計算 ホーキング博士の理論と一致【研究紹介】

2024年4月9日

山下 裕毅

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米ペンシルベニア大学などに所属する研究者らが発表した論文「Microscopic Origin of the Entropy of Astrophysical Black Holes」は、ブラックホール内部をモデル化し、それらの状態の数を数え上げる式を導き出し、ブラックホールの総エントロピーを計算した研究報告である。

▲論文のトップページ

研究内容

スティーブン・ホーキング氏とヤコブ・ベッケンシュタイン氏は1970年代に、ブラックホールはエントロピーを持つこと、そしてそのエントロピーがブラックホールのホライズンの面積に比例することを発見した。しかし、統計力学の観点から、こエントロピーがブラックホール内部のどのような微視的状態の数に対応するのかは長年の謎であった。

本研究では、この問題に解決の糸口を見出したと述べている。ブラックホールの内部には、膨大な数の微視的状態が存在しており、これらの状態の数を数え上げることで、ブラックホールの総エントロピーを計算できる。研究者たちは、ブラックホールの内部の状態をモデル化し、それらを数え上げる式を見出した。

ただし、ブラックホールは量子的な物体なので、その内部の状態も量子的な振る舞いを示す。量子状態は互いに重なり合うため、一部の状態は他の状態の線形結合として表現できる。つまり、エントロピーを計算する際、そのような重複は除外しなければならない。

研究者たちがこの量子効果を考慮に入れたところ、ブラックホールの内部の線形独立な状態の数が、ホーキング・ベッケンシュタインの式と一致することがわかった。

この発見は、ブラックホールのエントロピーを解釈するだけでなく、「ブラックホール情報パラドックス」と呼ばれる宇宙の謎を解明する手がかりにもなるかもしれない。また今回の成果が、ひも理論など難解な理論なしに、一般相対性理論と量子力学から導かれた点にも注目したい。

▲2つのブラックホールをつなぐワームホールが、量子状態の重なりに対してどのように寄与するかを表現している図

Source and Image Credits: Vijay Balasubramanian, Albion Lawrence, Javier M. Magán, and Martin Sasieta. Microscopic Origin of the Entropy of Astrophysical Black Holes.

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