重力を媒介する未発見の粒子「重力子」に似たものが見つかる Nature誌で論文発表、半導体使った実験で【研究紹介】

2024年3月29日

山下 裕毅

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中国の南京大学、米コロンビア大学、ドイツのミュンスター大学、米プリンストン大学に所属する研究者らが発表した論文「Evidence for chiral graviton modes in fractional quantum Hall liquids」は、重力を媒介すると考えられている「重力子」に似たものを半導体から発見した研究報告である。

▲論文のトップページ(スクリーンショット画像)

アインシュタインの一般相対性理論によると、重力は時空の歪みによって生じるとされる。一方、量子力学の枠組みでは、力を媒介するのは粒子であり、重力の場合は「重力子」と呼ばれる仮説上存在する粒子が媒介すると考えられてきた。しかし、長年の探索にもかかわらず、宇宙空間で重力子が直接観測された例はなかった。

ところが今回、研究チームが半導体中で重力子に酷似した性質を持つ集団励起モードの検出に成功した。研究チームは、ガリウムヒ素半導体の薄片を極低温に冷却し、強い磁場をかけることで、電子が集団で奇妙な振る舞いをする特殊な状態を作り出した。この状態で現れる粒子的な励起が、重力子に特有なスピン2を持つことが、精密なレーザー分光実験により明らかになったのである。

ただし、半導体中の電子は2次元平面に閉じ込められており、宇宙空間とは異なる環境にあるため、今回の発見をそのまま重力子を検出したものとして同一視することはできない。しかし、物質の物理と重力理論を結びつける成果であり、量子重力理論の一部を検証する舞台になると考えられている。

Source and Image Credits: Liang, J., Liu, Z., Yang, Z. et al. Evidence for chiral graviton modes in fractional quantum Hall liquids. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07201-w

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