材料を「空中に浮かせながら」工作するロボット、部品や接着剤の液を音で浮遊させ、接触なしで組み立て可能【研究紹介】

2022年7月12日

山下 裕毅

先端テクノロジーの研究を論文ベースで記事にするWebメディア「Seamless/シームレス」(https://shiropen.com/)を運営。

スペインのPublic University of Navarre、英Ultraleap社、ブラジルのUniversity of São Pauloによる研究チームが開発した「LeviPrint: Contactless Fabrication using Full Acoustic Trapping of Elongated Parts.」は、超音波を用いて材料を空中に浮遊させながら非接触で組み立てを行うロボットアームだ。ビーズや細い棒、接着剤の液滴を超音波で浮かせて、さまざまな構造物を組み立てる。

▲超音波を用いて細い棒を浮遊させている様子

研究背景

通常の組立・製造技術に共通する特徴は、操作・吐出される部品や材料が機械に直接接触することである。そのため、小さな部品や壊れやすい部品を操作するためには特別な装置が必要となり、また液体や粉体、高温の材料を取り扱うことは困難になる。

さらに、接触型の工程は本質的にクロスコンタミネーション(交差汚染)を引き起こすため、危険な材料やバイオ材料を使用する場合は、複数のロボットアームを用意するか、材料交換の間に滅菌する必要がある。

本研究ではこれら課題に挑戦するため、材料に接触せず、材料を浮かしながら組み立てを行うアプローチを提案する。物体浮揚の原理はたくさんあるが、今回は音波による方法を採用する。これまでにも人が聞こえない超音波を用いて物体を浮遊させる試みは多数報告されてきたが、物体を浮遊させながら移動させ接着し製造する一連のプロセスをロボットアームで行った事例はない。

▲棒を浮かせて移動させながら構造体を製作している様子

研究過程

これらを実現するために、超音波フェーズドアレイというデバイスを使う。これは振動子を適切な幅で複数配列したデバイスで、例えば16×16、計256個の振動子を配列した正方形の超音波フェーズドアレイがよく使われる。振動子は個別にプログラム制御でき、それぞれを1点に集め超音波ビームも生成できる。集束させたところにビーズなどの軽い物体を置くことで、浮遊が行える。

今回は、お椀型に配列した超音波フェーズドアレイを2つ作成した。2つが上下対になるようにロボットアームの先端に取り付け、その間に材料を挿入することで浮遊を行う。

浮遊できるのは小さいビーズなどの軽くて小型なサイズに留まり、大きく重たい物体の浮遊はできないが、今回は細い棒(長さ30mm、幅2mm、高さ1mm)を浮遊させ、位置と向きを操作できる音場の生成に成功した。

一方で、浮遊させる材料は固体だけでなく液体も可能で、今回も接着剤の液滴を浮遊させて棒をくっ付けるために使用している。

▲液体を浮遊させている様子

これまでの超音波フェーズドアレイはボックス内に固定しているセットアップが多かったが、今回は多自由度で駆動するロボットアームの先端に取り付ける。そのため、浮遊させたままの移動や方向転換が容易になり製作工程に汎用性をもたらす。

▲部品を浮遊させながらの移動が容易

実証実験

デモでは、細い棒を空中で方向転換しながら接着剤の液で接着し合い、立方体や橋を組み立てることに成功した。組み立て後は、ロボットアーム搭載機器から紫外線を照射して接着剤を固めるか、樹脂を硬化させる。

この結果から、小型で壊れやすい部品や、液体・粉体を操作し構造物を製造できることが実証され、本アプローチの有効性が示された。またロボットアームが部品や材料に触れないため、クロスコンタミネーションが起こりにくくなり、空洞に通したり任意の方向に追加したりと従来の3Dプリンターでは実現できない新しい製造方法を示した。

▲ 今回の手法で試作された構造物

Source and Image Credits: Iñigo Ezcurdia, Rafael Morales, Marco a.b. Andrade, and Asier Marzo.“LeviPrint: Contactless Fabrication using Full Acoustic Trapping of Elongated Parts”

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