2023年5月18日
検索とインターネット広告のプロバイダーであるグーグルは年次開発者会議「Google I/O」の基調講演で、最近取り組んでいるものを含め、多くの製品やサービスを矢継ぎ早に発表した。
本記事では、基調講演で発表された主要なニュースをわかりやすく、各記者の記事を拾い読みしやすいリスト形式で紹介する。
Googleマップ関連で、新機能「イマーシブビュー・フォー・ルート」が発表された。一部の都市で展開する。この機能は交通シミュレーション、自転車レーン、複雑な交差点、駐車場などユーザーが必要とするすべての情報を1か所に集約している。詳細記事はこちら。
撮った写真にいつも何か手を加えたいと思っている人は少なくないだろう。今回発表された「Magic Editor」機能は、AIを搭載しており、写真の特定の部分、例えば前景や背景などにより複雑な編集を施すことができる。
写真の隙間を埋めたり、良いフレーミングの写真になるよう被写体の位置を変えたりすることもできる。詳細記事はこちら。
またデモでは、新機能「Magic Compose」も披露された。メッセージや会話で文章をさまざまなスタイルに書き換える様子が紹介されている。
「例えば、この機能でメッセージをより前向きな調子のものに、あるいはよりプロフェッショナルな感じのものにしたりできる。この機能で遊んでもいい。メッセージを『シェイクスピアとして知られるあなたのお気に入りの劇作家が書いた』ようにすることもできる」(TechCrunch記者サラ・ペレス)詳細記事はこちら。
グーグルの最新の大規模言語モデル(LLM)「PaLM 2」。
「PaLM 2はOpenAIのChatGPTと競合するグーグルのアップデートされたBardチャットツールに搭載され、グーグルが本日発表した新しいAI機能の大半で基礎モデルとして機能する」(TechCrunch記者フレデリック・ラーディノイス)詳細記事はこちら。
また、記者のカイル・ホイッガーズはPaLM 2をさらに深く掘り下げ、グーグルが執筆した研究論文の視点から、より批判的にこのモデルをとらえている。
グーグルは「Bard」のウェイティングリストを撤廃して、180以上の国・地域で英語で利用できるようにするだけでなく、日本語と韓国語のサポートも開始する。近い将来40言語をサポートすることを目指している。また、Bardのレスポンスに画像を表示する機能も新たに追加された。詳細記事はこちら。
さらに、グーグルはAdobeと提携し、Bardを使ったアート生成機能をいくつか提供する。
「BardのユーザーはFireflyで画像を生成し、Expressでそれを修正することができるようになる。ユーザーはBardの中でテンプレート、フォント、ストック画像、Expressのライブラリにある他のアセットを選択できるようになる」(カイル・ホイッガーズ)
「Workspace」の各機能もAIでよりスマートになり、Sheetsでは表の自動生成(数式は不可)、SlidesとMeetでは画像の作成の機能が追加される。差し当たり、表の自動作成はシンプルなものだが、フレデリックはAIを使った数式の作成に関しては今後発表があると指摘している。SlidesとMeetの新機能では、どのような視覚イメージを求めているかを入力するとAIがその画像を作成する。Google Meetでは具体的にはカスタムの背景を意味する。詳細記事はこちら。
「MusicLM」はテキストを音楽に変える新しい実験的なAIツールだ。例えば、夕食パーティーを開催する場合、「夕食パーティー向けにソウルフルなジャズを」と入力するだけで、ツールが曲のいくつかのバージョンを作ってくれるという。詳細記事はこちら。
検索結果でユーザーが見ている画像のコンテンツとコンテキストをより理解できるよう、2つの新機能が加わった。
「About This Image」機能でさらなる情報を取得でき、ファイル自体の新しいマークアップで画像に「AI生成」というラベルを付けることができるようになる。これらはいずれもすでに行われている作業の延長線上にあるものだが、AI画像の誤情報という大きな問題に対する万能の解決法ではないとはいえ、「画像が信頼できるものか、あるいはAIで生成されたものか」について透明性を高めることを意図している。詳細記事はこちら。
TechCrunch記者のアイシャ・マリクは、グーグルがAIを搭載した会話モードの実験を行っていることなど、検索に関する詳細を書いている。
「ユーザーは検索を行う際に次のステップを提案され、検討すべき重要な情報のAIによるスナップショットを目にし、そこにはさらに深く掘り下げるためのリンクもある。次のステップの候補をタップすると新しい会話モードに移行し、調べているトピックについてグーグルにさらに質問することができる。質問から質問へと文脈が引き継がれる」詳細記事はこちら。
また、検索結果が「他の人の経験から恩恵を受ける」場合に、一部の検索結果の上部に間もなく表示される新しい「Perspective」フィルターも発表された。例えば、掲示板やQ&Aサイト、ソーシャルメディアへの投稿だ(動画付きも含む)。RedditのリンクやYouTube動画を見つけるのが簡単になる。詳細記事はこちら。
Sidekickは「より良いプロンプトを提供するのに役立ち、生成AIループ全体において人が最も得意とするはずのことを奪う可能性がある」ように設計されている。Sidekickパネルは、Google Docsのサイドパネルにあり、「あなたが書くそばから絶えず文書全体を読んで処理し、あなたが書いたものに明確に関連する文脈上の提案を提供する」。(TechCrunch記者ダレル・エザリントン)詳細記事はこちら。
私たちはグーグルの新しいコード補完・コード生成ツール「Codey」の名称が気に入っている。Codeyは発表された数多くのAI中心のコーディングツールの一つで、GitHubのCopilot(コーディングに関する質問に使われるチャットツール)に対するグーグルの答えでもある。Codeyはコーディング関連のプロンプトに加え、Google Cloud全般に関するクエリも処理できるように訓練されている。詳細記事はこちら。
新しいA3スーパーコンピュータ仮想マシンが登場した。TechCrunch記者のロン・ミラーは「このA3はリソースを大量に消費するユースケースのかなりの要求を処理するために特別に構築された」と書いている。A3は「NvidiaのH100 GPUを搭載し、それを専用のデータセンターと組み合わせることで、高処理能力と低レイテンシーで膨大な計算能力を引き出し、そのようなパッケージに通常かかるよりも合理的な価格帯となるようだ」と説明している。
グーグルはフルマネージドAIサービスである「Vertex AI」に搭載される新しいAIモデルも発表し、その中には「Imagen」と呼ばれるテキストから画像を生成するモデルも含まれている。Imagenは昨年11月にグーグルのAI Test Kitchenアプリでプレビューされ、画像の生成や編集はもちろん、既存の画像にキャプションを書き込むこともできる。
アップルとブルートゥーストラッカーの安全対策と新仕様で提携したことに合わせて、グーグルは展開する「Find My Device」ネットワークに一連の改善を施した。この改善には、一緒に移動する不審なトラッカーについての積極的な警告も含まれ、アップルのAirTagなどをサポートする。新機能としては、携帯電話が一緒に移動する怪しいトラッカーを検出した場合のユーザーへの通知や、他のブルートゥーストラッカーとの接続などがある。
グーグルのこうしたアップグレードの目的について、記者のサラは「これらのアラートがプラットフォームをまたいで同じように機能するようにすることで、各プラットフォームのユーザーの安全性とセキュリティを高めることだ。つまり、例を挙げるとAirTagがストーカー行為に使用されているという報告を受けてアップルがAirTagをより安全なものにするために行った作業はAndroidデバイスでも行われるということ」と書いている。
グーグルのPixel 7aの価格はPixel 7(499ドル)より100ドル安い(5月11日発売)。Pixel 6a同様、6.1インチのスクリーンを搭載している。Pixel 7は6.4インチだ。インドでも発売された。カメラに関しては、解像度はわずかに高い。
記者ブライアン・ヒーターは「7 Proの柔軟性とズームが本当に恋しいが、7aのカメラで素敵な写真を近所で撮ることができた」と書いている。搭載している新しいチップにより、「Face Unblur」や「Super Res Zoom」などの機能が加わった。詳細記事はこちら。
この名称は政府の諜報活動のように聞こえるが、グーグルにとって「Project Tailwind」は、ユーザーの自由形式のメモを取り、自動的に整理して要約することを目的として構築しているAI搭載のノートブックツールだ。このツールは刷新されたグーグルの実験的製品のためのハブであるLabsを通じて利用できる。ユーザーがGoogle Driveからファイルを選ぶと、Project Tailwindはその情報に精通したプライベートなAIモデルと、メモや文書を選り分けるのに役立つように設計されたパーソナライズされたインターフェイスを作成する。詳細記事はこちら。
When your device matches your energy >>> With just a few taps, you can create Generative AI wallpapers to customize your experience. Coming soon to Android. #GoogleIO pic.twitter.com/dJQLynq7rY
— Android (@Android) May 10, 2023
新しいPixel 7aを手に入れたからには可愛く飾りたいものだ。グーグルはAndroidユーザーがプロンプトに答えることでイメージを表現することができる生成AI壁紙を今秋展開する予定だ。この機能はグーグルのテキストから画像を生成する拡散モデルを使用して新しいオリジナルの壁紙を生成する。そしてAndroidシステムのカラーパレットは選択した壁紙に自動的に一致するようになる。詳細記事はこちら。
スマートウォッチ用オペレーティングシステム(OS)の次期バージョンWear OS 4が初めて公開された。バッテリー寿命と機能性の向上、テキスト読み上げなどの新しいアクセシビリティ機能などが目玉だ。また、開発者向けには新しいWear OSウォッチフェイスを構築し、Google Playに公開するための新ツールが用意される。今年後半にリリースされるWear OS 4に注目してほしい。詳細記事はこちら。
また、Gmailやカレンダーといった一連のサービスの改善だけでなく、WhatsAppやPeloton、Spotifyのアップデートなど、スマートウォッチ向けの楽しい新アプリや機能も登場する。
グーグルはビデオで使われている言語を別の言語に変え、話し手の唇と別言語を同期させる強力な新しい翻訳サービスをテストしている。「Universal Translator」と呼ばれるこのサービスは、「AIの進歩によってつい最近可能になったものの一例だが、同時に最初から想定しなければならない深刻なリスクがある」と記者デビン・コルドウェイは書いている。
この「実験的」サービスであるUniversal Translatorでは、ビデオ(この場合、もともと英語によるオンラインコースの講義)が入力されると、音声を書き起こして翻訳し、翻訳された言語で(スタイルとトーンを合わせて)音声を新たに作る。そして、話者の唇が新しい音声によりマッチするようにビデオを編集する。詳細記事はこちら。
予期されていたPixel Tabletがついに登場した。ブライアンにはインターフェイスが「巨大なNest Home Hub」のように見えたが、ドックとデザインは気に入ったようだ。
タブレットは主に家庭で使われるものであるため、「単なるタブレットではなく、スマートホームのコントローラー/ハブ、電話会議装置、ビデオストリーミングマシンでもある。テレビの代わりにはならないが、YouTubeを観るにはうってつけだ」と指摘している。詳細記事はこちら。
「Pixel Foldの体験における真骨頂は意外にもソフトウェアだ。外部画面と内部画面を切り替える際のアプリの連続性は非常にシームレスで、画面サイズを変えても中断した場所が表示される。当然ながらグーグルはGmailやYouTubeなども含め、最も人気のあるサードパーティアプリを大画面向けに最適化している」(TechCrunch記者ブライアン・ヒーター)。詳細記事はこちら。
アプリケーション開発者向けのグーグルのバックエンド・アズ・ア・サービスプラットフォームである「Firebase」にはPaLM APIを利用したAI拡張機能が追加されている。またFirebase拡張マーケットプレイスをより多くの開発者に開放する。
記者のサラとフレデリックは、開発者がグーグルのAIを使用してAndroidアプリを構築し、Playストア向けに最適化する新しい方法と、自動翻訳やその他のプロモーション活動を通じてアプリの利用者を増やすための多数のツールついて紹介した。
新機能とアップデートは以下の通り。
Playストアのリスティング作成
グーグルのPaLM 2モデルを使用し、いくつかのプロンプト(オーディエンス、主要なテーマなど)を入力するだけでシステムがドラフトを生成し、開発者はそれを心ゆくまで編集することができる。
アプリレビューのまとめ
今のところ英語版だけ。ポジティブなレビューにのみ対応している。
ストアリスティンググループ
昨年グーグルが導入したカスタムストアリスティングと連動し、基本リスティングをカスタマイズし、特定の要素を優先して作成される。
プロモーションコンテンツ
Playストア通知、PlayストアアプリのアプリとゲームのタブのFor Youセクション、Playストア検索結果内、特定のアプリをタイトルで検索した結果の中、さらにはクエリを入力する前の検索画面、他のレコメンデーションの上など、Playストアでは新しい場所でアプリ内イベントも取り込むようになる。
詳細記事はこちら。
PlayストアがAIによってアップデートされたことに加え、開発者が試せる新しいセキュリティとプライバシーの機能が追加されたとサラは書いている。その中には、Play Consoleアプリの新しいベータ版や、Playストアのデータの安全性に関するセクションの変更も含まれている。
一方、Playストアのユーザーはアプリが動作しなくなったときに開発者が出したり、自動的に出されたりするアプリ更新のプロンプトを受け取ることができる。詳細記事はこちら。
健康データを保存するための「Health Connect」は現在ベータ版かもしれないが、今年後半にAndroid 14がリリースされればAndroidとモバイル端末で利用できるようになるとアイシャは書いている。
ランニングするルートのマップをシェアできる新しいエクササイズルート、月経周期を記録する簡単な方法、コントロールの共有など、いくつかの楽しい機能が追加される予定だ。さらに、MyFitnessPalはHealth Connectと統合し、1型および2型糖尿病を患うユーザーはMyFitnessPalアプリ内で血糖値データにアクセスできるようになった。詳細記事はこちら。
「Android Studio」には「Android Studio Hedgehog」を通じてAIが注入された。Android Studio Hedgehogは開発者がコードを書いてバグを修正したり、より一般的なコーディングの質問に答えたりするのをサポートする新しい会話体験だ。詳細記事はこちら。
「ML Hub」は、AIについての経験が浅かろうと熟練したプロであろうと、MLモデルの学習やデプロイの方法について手引きを得たい開発者のための1カ所で事足りる場所だ。一般的なユースケースのツールキットが用意されており、グーグルは今後、定期的に更新・追加していく。詳細記事はこちら。
Wear OSのウォッチフェイスをデザインするための新機能もある。
Flutterベースのアプリは100万以上公開されている。オープンソースでマルチプラットフォームのアプリケーションフレームワークであるFlutterには、既存のウェブアプリへのFlutterコンポーネントの統合を容易にするなど、いくつかの変更が加えられる予定。
3D遠隔会議用ビデオブース「Project Starline」の最新プロトタイプが発表された。最大の変更点として、カメラの数を減らすなどハードウェアをコンパクトにし、立体映像の生成にAIやMLを一層活用しているところだという。詳細記事はこちら。
TechCrunch記者のレベッカ・べランとキルステン・コロシェッツ自動車関連のニュースをまとめた。
ビデオ会議、ゲーム、YouTubeなど自動車向けの新機能やサービス
グーグルは2つの経路で自動車に進出してきた。ユーザーの携帯電話上で動作し、ワイヤレスで通信して車両のインフォテインメント・システムにナビ、駐車場、メディア、メッセージを映し出すアプリ『Android Auto』。それからAndroid Automotive OSを搭載し、グーグルのサービスを直接車両に統合する『Google built-in』だ。Android Automotive OSはLinux上で動作するオープンソースのモバイルOSを模倣している。だがスマートフォンやタブレットを動かすのではなく、自動車メーカーが各社の自動車で使えるように変更されている。
Android Autoもアップデートされる
ここにはCisco、Zoom、Microsoftなどを使った会議が含まれる。
さらに、Polestarを皮切りにより多くの車にYouTubeが搭載されるという。
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元記事:Google I/O 2023 is a wrap — here’s a list of everything announced
By:Christine Hall
翻訳:Nariko
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