導入から5年、グーグルは今なお Kotlin に全力投入【テッククランチ】

2022年9月1日

執筆者

Frederic Lardinois

2012年にTechCrunchに参加。クラウドニュースサイト「SiliconFilter」の創設者。エンタープライズ、クラウド、デベロッパーツール、Google、Microsoft、ガジェット、交通など、面白いと思ったことは何でも取り上げる。

グーグルが開発者会議「Google I/O 2017」で、JetBrainsが手がけたJava仮想マシン用の静的型付け言語KotlinをAndroidアプリ開発の第一言語とすることを発表してから5年あまりが経った。それ以来、グーグルは2019年にKotlinをAndroidアプリの開発の優先言語として取り組みをさらに一歩進めた。多くの開発者がまだJavaを使っているが、Kotlinは急速にグーグルのモバイルOS用アプリ開発のデフォルトとなりつつある。2018年にグーグルとJetBrainsは提携してKotlin の促進を目的としたKotlin Foundationを立ち上げた。

▲Google I/O 基調講演 (Google I/O ’17)

8月15日の週に、筆者はグーグルのKotlin担当プロダクトマネージャーであるJames Ward(ジェームズ・ワード)氏にインタビューし、AndroidのエコシステムなどにおけるKotlinの役割、そして同社の今後の計画について聞いた。

すべてのAndroid開発者が今後Kotlinに移行することを、グーグルが望んでいることは驚きではない。「AndroidではまだかなりJavaが使われている」とワード氏は言う。「一般的に、開発者はJavaよりもKotlinに満足していることが分かっている。開発者の生産性は高く、アプリケーションの品質も高いため、より多くの開発者にもっと多くのコードを移行してもらうよう注力してきた。KotlinとJavaの相互運用性によって、人々は徐々にコードベースを移行することができるようになりました。今後、全てがKotlinで統一されるようになれば素晴らしい」と同氏は話した。

しかし、まだそこまでには至っていない。その一つの理由としては、Javaのエコシステムは非常に大きく、まだ多くの魅力があるためだ。KotlinはJavaとの相互運用性があり、開発者はライブラリを組み合わせることができるが、Kotlinの利点をフル活用するには、開発者はKotlinのエコシステムに留まらなければならない。また、Kotlinに注目が集まっているが、Androidプラットフォームのコア部分とそのAPIは依然としてJavaで構築されている。現在、Kotlinで書かれたAndroidライブラリはあるものの、プラットフォーム全体から見ればほんの一部にすぎない。

しかし今日のKotlinはAndroidにはるかにとどまらないものでもある。現時点で、サーバーサイドのKotlinはグーグルでかなり一般的になりつつあるようで、グーグル内部のコードベースには、すでに850万行以上のKotlinのコードが含まれている。その数は毎年倍増しているという。

結論から言うと、グーグルとJetBrainsは近年、Kotlinコンパイラをゼロから書き直すことに懸命になっている。より高速で、IDE(統合開発環境)がより優れたコードヒントや静的コード解析などの機能を向上させるためのより良いインターフェースを提供することを約束するその新しいコンパイラは現在ベータ版で、おそらく来年リリースされる。同社はこのプロジェクトにかなりのリソースを割いており、現在2つのコンパイラを並行してメンテナンスしているため、言語自体の開発は少し遅れている。

「2つのコンパイラを並行して動かしているため、言語の変化速度を意図的に遅くしている」とワード氏は言う。「新しいコンパイラをリリースし、皆がそれを使うようになれば新しい言語機能にもっと投資できるようになる」。

これらの新機能の中には、現在まだ日の目を浴びていないコンテキストレシーバーがある。例えばデータベースに接続するためのコードや値を一度だけ記述し、その接続が必要になるたびに同じコンテキストを再び使用するような、関数へのパラメータの受け渡しができるようになるものだ。

Kotlin Foundationについては、これまではグーグルとJetBrainsだけがメンバーで、2社はKotlinへの投資を調整するためにこの財団を利用していたことは注目に値する。しかしワード氏は、2社が新たなメンバーを加えて財団を拡大しようとしていると説明した。「我々はさらに拡大する計画を持っている。それはKotlinのエコシステムを成長させる核となり、創設メンバーである2社だけでなくKotlin財団を成長させる」と言う。同氏はまた、財団をLinux Foundationのような組織の傘下に置く理由がまだないとも指摘した。メンバー2社ではやり過ぎかもしれないが、時間の経過とともにグーグルとJetBrainsがメンバーを増やしていくことでそれは変わるかもしれないという。

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