2022年11月17日
寄稿者
Sudheesh Nair
データ分析のためにGoogleのような直感的なインターフェースを構築したビジネスインテリジェンス企業、ThoughtSpotのCEO。ThoughtSpot以前はNutanixの社長を務めた。
景気が減速し、企業が支出を減らすなか、多くのスタートアップにとって今後数カ月が成功を左右する。ビジネスは「何としても成長する」という考え方から、より慎重な考え方へと移行しつつある。つまり、リーダーは状況に応じて積極的に行動することができるよう、どこで節約し、どこで金を効果的に使うか、またどの顧客が解約しそうかを知る必要がある。
SaaS企業は、こうした意思決定の拠り所となるデータにアクセスできるため、他の企業よりも有利な立場にあるだろう。顧客が製品を購入したということだけでなく、誰が、どのように、どれくらいの頻度で製品を使用しているかを知っている。経営陣は顧客行動の変化の兆候を捉えるべく、このデータに細心の注意を払い、どこに費用をかけて、どこで削減すべきか、手がかりを得るために営業パイプラインを注視する必要がある。
さらに、今年の景気後退が自社の需要に影響を及ぼしているかどうか、またそれがどこで起こっているかを、そうした事態が明らかになる前に把握する必要がある。目標は警告のサインを早期に発見して軌道を修正することだが、そのサインはしばしば履歴の中に隠されている。
すべての業界が同じように影響を受けるわけではないため、冴えないニュースばかりだからといって、顧客が今年支出を減らすと決めつけてはいけない。
SaaS企業の指標としては、現在抱えている顧客がどのように製品を使用しているかを調べることで、懸念事項を特定して対策を講じることができるようになる。また、どこの支出を削減し、どこに投資すべきかを理解するために、パイプライン(見込み客を顧客へと転換するプロセス)を吟味する必要もある。
どの会社の最高財務責任者(CFO)も、どこでコスト削減できるか点検するために契約書をよく見ている。真の価値を提供するテクノロジーだけが生き残るため、SaaSベンダーは先手を打つ必要がある。NPSのような従来の顧客満足度指標は遅行指標であり、迅速な対応には役立たない。より積極的な行動が取れるよう次のような点に着目しよう。
アクセスポイント、登録ユーザー数、照会量など、その他製品によって異なる指標で利用動向を測ることができる。ここで注目すべきは、SaaS企業として、誰が、いつ、何のために、どれだけ製品を使用しているか、そしてそれが変化しているかどうかを推測する必要がないということだ。
例えば、1日に10回ログインしてあなたの会社の製品を使用している顧客がいて、その数が過去1年間増えていないとする。それは新しいユースケースが増えておらず、新たな価値を創造していない証拠だ。
このようなシグナルが見られたら、その顧客との会話を優先すべきだ。製品アイデアを具体化するプロダクトチャンピオンに連絡を取り、使用率を上げるための採用計画を提案するといい。逆に、顧客が特定の機能に群がっている場合は、その機能が現在の状況下で特に価値があることを示している可能性がある。アカウントチームにそのユースケースを売り込むように指示するといい。
Amplitude(アンプリチュード)、Google Analytics(グーグルアナリティクス)、Mixpanel(ミックスパネル)などの製品分析ツールは、どの機能が使われていて、どの機能が使われていないのかについて多くのことを教えてくれる。最近追加された主要な新機能を顧客が有効化していない場合、意図したよりも顧客が効率の悪い使い方をしている場合、あるいは有益なユースケースに新機能を適用していない場合、顧客に使い損ねているものを知らせる時だ。
多くのベンダーがこの種のフィードバックのために顧客諮問委員会を利用しているが、NPSと同様、市場が急速に変化しているときには役に立たない遅行指標だ。SaaS企業であれば、ユーザーが何をしているのかをリアルタイムで見ることができる。注意を払い、必要なところには積極的に取り組むべきだ。
大半の製品はまず1つの部署で頻繁に使われ、徐々に社内に広まっていくが、それは必ずしも放っておいて自然に起こることではない。製品主導の成長アプローチで、誰がそのツールをチェックしているのかを見てみよう。
ある部門にコアなユーザーがいても、別の部門の潜在的なユーザーから多くの閲覧が表示されることがある。このような閲覧は、他の部門に利用を拡大させるチャンスがあることをリアルタイムで証明するものだ。
また、あなたの会社がSaaS型コラボレーションツールを提供していて、このツールの利用がIT部門とマーケティング部門に限定されている場合、プロダクトチャンピオンにコンタクトを取って利用範囲を拡大するよう働き掛けよう。
すべての業界が同じように影響を受けるわけではないため、暗いニュースが多いからといって、あなたの顧客が今年支出を減らすと決めつけてはいけない。景気後退の際には往々にしてマーケティング予算が最初に削減されるが、サイバーセキュリティへの支出は重要なニーズを満たすものであるため削減対象になりにくい。
事業で何が起きているかを評価し、必要に応じて調整するために以下の指標に注目すべきだが、調整が必要でない場合でも素通りしないでほしい。今何が起きているか把握するのにデータを使おう。
販売サイクルは長くなっているか。もしそうなら、どこで、どの程度か。全体的な案件の量は減少しているか。
景気後退を懸念する声が出始めていた昨年は、当社は定着したばかりで動きが加速している新しいコマーシャル・チームから支出を削減するのは簡単だっただろう。ただし、地域的な視点を持っていれば分かる通り、欧州・中東・アフリカ(EMEA)のコマーシャル事業が支出を続けていた。このような地域的な視点がなければ、欧州でのマーケティングを不必要に削減していたかもしれない。広い視点を持っていたからこそ、当社は地域マーケット間の差を把握でき、それに合わせて調整できた。
顧客を正確に把握し、マーケティングや人員などの分野で調整を行うには、どこで変化が起きているかを正確に理解するために踏み込んだ指標分割に注力することが重要だ。
販売承認サイクルの変化に注目してほしい。IT部門ではなく財務部門で滞留している案件が通常より多い場合は、経済面での懸念が高まっていることを強く示すサインであり、自社製品の投資利益率(ROI)やコスト効率の良さを強調するメッセージに変えることが必要かもしれない。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、サービス業や外食産業から、eコマースやロジスティクス産業へとリソースをシフトすることが賢明な行動だっただろう。現在のインフレ圧力は、あなたの会社にとって大事な市場にどのような影響を及ぼしているだろうか。
これを理解するには、店舗の客足や小売支出などマクロ経済と地域のトレンドの両方を見渡すことのできるサードパーティデータを活用するといい。Snowflake(スノーフレーク)、Google(グーグル)、DataBricks(データブリックス)などのデータマーケットプレイスでは、情報がクラウド上で共有されているため、このようなことが簡単にできる。こうした情報を自社のパイプラインデータと組み合わせて、これらのトレンドが事業にどのような影響を及ぼしているかを確認することができる。
適切な指標が特定され、測定されたら、ビジネスチームが有意義で十分な情報に基づいた変更を行うために必要なものを入手できるようにする。地域のマネジャーは、地域の状況に迅速に対応するための権限と自律性を持つべきだ。データがあることと、そのデータに基づいて行動する必要のある人々が直接アクセスできるようにすることは、全く別のことだ。つまり、調査結果を端に追いやり、現地の人々が現地のパターンや行動に基づいて意思決定できるようデータを委ねる。すべてのマネジャーが最新の正しい情報で動けるように「信頼できる唯一の情報源」を提供し、可能な限りリアルタイムのデータを利用できるようにする。
今後1年間は厳しい状況が続くかもしれないが、経営がうまくいっている企業は不況下でも成功を収めることができる。SaaSベンダーは利用可能なシグナルを最大限に活用し、それを使って市場の変化に先んじる必要がある。経済データや営業パイプラインを注視し、リーダーが顧客基盤で実際に起きていることに基づいて意思決定できるようにすべきだ。
SaaS企業は手探りで進むのではなく、可視性が高ければ高いほどより良い意思決定ができるようになる。
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元記事:6 key metrics that can help SaaS startups outlast this downturn
By:Sudheesh Nair
翻訳:Nariko
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