Web2.0とWeb3の架け橋になるためにできること【テッククランチ】

2022年11月4日

寄稿者

Devin Abbott

Deco(Airbnbが買収)の創業者。デザインおよび開発ツール、React、Web3 アプリケーションを専門とする。最近ではブロックチェーンのデータを整理するためのプロトコルThe Graphで活躍中。

はじめに

最近のイーサリアム・ブロックチェーン・マージ(コンセンサスアルゴリズムを移行する大型アップデート)の影響をすべて予測するのは時期尚早だが、Web3に対する最も多い(そして妥当な)批判である、「過剰なエネルギー消費」に確実に対処することに間違いはない。批評家はまだ、イーサリアム(ETH)に反対する新しい理由を見つけるかもしれないが、筆者は、このマージが他の何かにつながってほしいと願っている。その何かとは、Web2.0の良いところとWeb3の最もエキサイティングなところを統合するチャンスだ。

シリコンバレーでは、従来のWeb2.0業界と急成長しているWeb3のエコシステムが互いに対立するものととらえられていて、溝が深まっているようだ。そして、その中間に位置するのが新興のスタートアップだ。

筆者はこの3つのグループすべてで活動しているが、論争のほとんどは開発者ではないVCやその他の熱烈な支持者による乱暴な宣言や誇大広告に基づいていると思う。例えば、NFT取引に使われる暗号資産(仮想通貨)の有名人による過剰宣伝は、Web3全体がねずみ講であるかのような印象を与える一因となった。実際、NFTはWeb3のエコシステムのほんの一部にすぎず、筆者の考えでは、最も興味深いものでもなければ、変革の可能性を秘めたものでもない。

Web2.0とWeb3は相容れないように見えるかもしれないが、ブロックチェーンやETHのような技術は、すべての企業が直面するスケーラビリティの課題に対する潜在的なバックエンドの解決策と捉えた方が良いように思う。同じように、Web2.0はすでに多くの中核的なユースケースにとって不可欠なものになっていることを、Web3の支持者も認識すべきだ。

Web3は大きな可能性を秘めているにもかかわらず、Web2.0のアプリを開発するほうがはるかに簡単だ。それはシンプルに、Web2.0のエコシステムがすでに成熟しており、大規模で活発な開発者コミュニティがあるからだ。

Web3とWeb2.0それぞれが、何かしら貢献できることをいくつか挙げよう。

Web3:オープンソースにおける新たな革命

Web3開発で今何が起きているのかを把握するためには、Web2.0以前までさかのぼる必要がある。

インターネット・バブルの頃、オープンソース、Linux、Red Hatのようなホットな企業はもてはやされた。LinuxをOSとして導入する消費者はほとんどいなかったが、大きく貢献した。Linuxはほとんどの人に気づかれることなく、あっという間に上位100 万のウェブドメインの96.5%のバックエンドサーバーを実行するオペレーティングシステムになった。

しかし、オープンソース・コードには重要な課題が残っている。特に、コードの文書化が不十分で、積極的な活動をしている開発者がいない場合、そのコードをセットアップして実行できなければあまり意味がない。Web3の開発コミュニティは、実際に実用的な方法で従来のオープンソースへのよりダイナミックで透明性の高いアプローチをつくり出している。

Web3では、生きたコードを実行するETHという、巨大で一般の人がアクセス可能な単一のコンピュータを提供する。これを使えば、GitHubから誰かのコードをダウンロードし、物事が良い方向に発展することを祈る必要はなくなる。また、コードがETHブロックチェーン上で実際に動いているのを目にすることができる。そして世界中の開発者がアクセスし、自分のアプリケーションに統合することができる。例えば、アプリケーションの開発者は、オープンソースライブラリの独自のコピーを展開する必要があるかもしれないが、ETHではオープンソースライブラリが一旦展開されると、すべての開発者がそれと同じバージョンを再利用することができる。

開発者のエコシステムは急速に拡大している。多くの技術系メディアが縮小するNFT市場に注目している中、SolcやHardhat(ETHスマートコントラクトの記述と展開のための主要な開発ツール)のダウンロード率は2020年以降10倍に上昇している。現在、これらのツールは合わせて週50万回ダウンロードされている。

Web2.0:成熟したエコシステムの力

Web3が大きな可能性を秘めているとはいえ、Web2.0のアプリを開発するほうがはるかに簡単だ。というのも、このエコシステムは非常に成熟しており、大規模で活発な開発者コミュニティを抱えているからだ。さまざまな開発者用ツールはどれも質が高く、ウェブホスティングやデータベース、ビデオトランスコーディングなど数多くのサービスやユーザー提供の無料チュートリアルがある。

その上、人気のある多くのWeb 2.0サービスは、スタートアップがアプリを立ち上げるのに、ほとんど、あるいはまったくコストをかけずに利用できる無料のものを提供している。多くの場合、数千人、数百万人のユーザーに拡大する必要がある場合にのみ料金を支払う。

なによりも、成熟したエコシステムとしてWeb 2.0は優れた垂直統合を提供する。たとえば、Googleのサービスだけでアプリを完全に構築することが可能だ。ドメインを購入し、サイトをホストし、Googleのプログラミング言語を使用して構築し(Dart、Go)、Googleのウェブフレームワーク(Angular、Flutter)を使い、Android で実行し、Google Playストアで公開することができる。Google Fiber経由でインターネットに接続されたChromebook上でコードを書くことさえできる。

Web3が少なくとも現時点では控えめでなければならない理由

Web3の技術は急速に進化しているが、コミュニティはWeb3が提供するものに対して現実的な期待を抱くべきだ。異論もあるだろうが、Web3は筆者がGoogleを使って説明した垂直統合のレベルには到底及ばないと思われる。

実際、Web3の会社がこのようなことをするのは非常に考えにくく、間違いなくWeb3の核となる分散化の哲学に反している。また、Web3の基礎となるツールはこのような垂直統合を行うにはまだ十分に成熟していない。

とはいえ、ほとんどのWeb3開発者は自分たちのツールがかなり強力になってきているという転換点をすでに目にしていると思う。5年前、スマートコントラクトを書くことはほとんど不可能だったが、Hardhatやethers.jsのようなツールによってかなり簡単になった。また、最新のスマートコントラクトツールキットであるFoundryのような新しく優れたツールも登場している。

特にWeb3開発者ではないテック分野の人たちは、おそらくこの進化に気づいていない。そして、同じことが多くのWeb2.0サービスにも言える。Web開発以外の技術分野のほとんどの人は、AWSがすでに圧倒的な力を持つようになるまでその巨大さに気づかなかった。

マージ後の未来の計画

Web2.0とWeb3が共に実験する初期の有望な兆候はすでにいくつか見られる。

例えば、Reddit(レディット)は最近、NFTについてはっきりとした言及を避けながら、実際にはNFTであるカスタマイズされたアバターの販売を開始した。CEOのSteve Huffmma(スティーブ・ハフマン)氏は「私たちは暗号を使わないようにかなり心がけている」と説明した。

だからといって、RedditがWeb 2.0のクラウドサーバーから移行するということではない。Web3のアイデアの種をより大規模で複雑なWeb 2.0に取り込みつつ、Web3の利点を顧客に提供しようとしているにすぎない。

Web2.0とWeb3の間の均衡がどのようになるかはわからないが、この方向での実験が増えることを筆者は期待している。成長するバックエンドソリューションとしてWeb3が支える均衡だ。

From TechCrunch. © 2022 Verizon Media. All rights reserved. Used under license.

元記事:Building the bridge between Web 2.0 and web3
By:Devin Abbott
翻訳:Nariko

関連記事

人気記事

  • コピーしました

RSS
RSS