Linux Foundation、相互運用可能なデジタルウォレットを開発する「OpenWallet Foundation」を発表【テッククランチ】

2022年10月3日

執筆者

Paul Sawers

イギリスロンドンを拠点に活動するライター。VentureBeatとThe Next Webで10年以上にわたりテクノロジー最新事情を取材し、TechCrunchにジョイン。イギリス・ヨーロッパのスタートアップ情報を中心に執筆。

Linux Foundationは9月13日(現地時間)に、オープンソースの基盤上に構築されたデジタルウォレットの相互運用性をサポートするために設計された新しい協働計画を発表した。

OpenWallet Foundation (OWF)はオープンバンキングのスタートアップYes.com の CEO を務めるDaniel Goldscheider(ダニエル・ゴールドシャイダー) 氏による新しい取り組みだ。発表では、 Okta、Ping Identity、 Accenture、 CVS Health、OpenID Foundation などの官民団体を含む複数の業界関係者が広く賛同していることが明らかとなった。プレスリリースによると、Linux Foundationがプロジェクトのホスト役を務めているため、ゴールドシャイダー氏が「共通のコアに基づく多様なウォレット」と呼ぶものを実現しようと努力しているOWFは、大きな影響力を持つことになる。

さらにこのニュースは、現在メッセージングの相互運用性を実現しようとしているヨーロッパを含め、世界中の規制機関がシステム間の相互運用性を強化することで、競争を支援しようとする動きを見せていることを示唆している。

・デジタルウォレットの進化

デジタルウォレットとは、ソフトウェアベースのオンラインサービスで、人や企業との電子取引を可能にするものである。現在最も人気のあるウォレットとして、PayPal、Apple Wallet、Google Wallet、Venmo、Cash Appなどが挙げられる。しかし、デジタルウォレットは次第に決済の枠を超え、物理的な財布の代わりとなる可能性が出てきている。例えば、アップルは現在、ドライバーが運転免許証をデジタル形式でiPhoneに保存できるようにしている。

ブロックチェーンを活用した暗号の登場も、デジタルウォレットの新たなユースケースを開拓している。しかし、これらのサービスは概して互換性がないのだ。またメタバースに関しても、その実現には相互運用性とオープンな技術規格に大きく依存すると見られている。メタバースの参加者は仮想世界全体で支払いやIDの取得をできるようになるだろう。

このような背景から、OWFはさまざまな業界の組織や利益団体から支援を受けながら、その存在をアピールしているのだ。

アクセンチュアでメタバースとブロックチェーンのプロジェクトを率いるDavid Treat(デビッド・トリート)氏は、「普遍的なデジタルウォレットのインフラは、デジタル世界のあちこちにトークン化されたアイデンティティやお金、そしてモノを運ぶ能力を生み出すでしょう」と語っている。「大規模なビジネスモデルの変革期が到来しています。そして、私たちの財布の中にある実際のデータに直接アクセスし、より優れたデジタル体験を実現するための信頼を勝ち得た者が、デジタルビジネスの勝者となるでしょう」とも同氏は述べている。

OWFは本人確認、決済、デジタルキーなど、さまざまなユースケースのサポートを計画している。(プロバイダが違ってもメッセージを送れる)メールやSMSが相互運用可能であるのと同じように、OWFは「セキュアで多目的のオープンソースエンジン」とでも呼べるものを開発し、誰もが他のデジタルウォレットとうまく連携できるデジタルウォレットの構築を推進している。ゴールドシャイダー氏が言うところの「複数(のウォレット)」という言葉は、OWFの真意が何であるかを知る手がかりとなる。その真意とは、唯一最大のデジタルウォレットプロバイダをつくり、アップルやグーグルのような企業をその王座から叩き落そうとするのではなく、この分野の新しいプレイヤーと手を組んで巨人たちに勝てる新しいプロバイダを生み出すことにあるのだ。実際、OWFの目標は、最終的に「最も優れたウォレットと同等の機能」を実現することだという。

OWFはデジタルウォレットそのものを開発したり、新しい規格をつくったりすることを意図していない。OWFが目指しているのは、あらゆる組織が独自のデジタルウォレットをつくれるオープンな基盤を開発するために、共同作業やコミュニティ努力を促進することにほかならない。

Linux Foundation のエグゼクティブ・ディレクターである Jim Zemlin(ジム・ゼムリン)氏 は、「私たちは、デジタルウォレットがデジタル社会にとって重要な役割を果たすと確信しています」と話している。「オープンなソフトウェアは、(デジタルウォレットの)相互運用性と安全性の鍵となるのです」とも同氏は語っている。

From TechCrunch. © 2022 Verizon Media.  All rights reserved.  Used under license.

元記事はこちら:Linux Foundation announces the OpenWallet Foundation to develop interoperable digital wallets
By:Paul Sawers
翻訳:吉本 幸記

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