【BASE えふしん】長期Webサービスのリファクタリングと、渋谷駅の切り替え工事の類似性とは? そこで高まるエンジニアの市場価値

2023年4月26日

BASE株式会社 上級執行役員 / SVPoD

藤川 真一

Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボ株式会社に入社。2007年から携帯向けTwitterクライアント「モバツイ」の開発・運営を個人で開始。「モバツイ」譲渡後、2012年に想創社設立。その後、モイ株式会社にてツイキャスのチーフアーキテクトを勤めた後に、BASE株式会社 取締役CTOに就任。2019年7月から同社取締役EVP of DevelopmentおよびPAY株式会社取締役に就任。2021年4月から上級執行役員SVP of Development。

エンジニアの採用担当者に選考のポイントや求める人物像について尋ね、現場のリアルな声を届ける「採用担当者の本音」シリーズ。第13回は、BASE株式会社から上級執行役員 SVPoDの藤川真一さん(えふしんさん)に登場していただきます。 

「100億円の売り上げのある1社と組むのではなく、10万円の売り上げがある10万人の人たちの味方でありたい」。この想いのもと、個人やスモールチームを支援するため、2012年にサービス提供を開始したBASE株式会社。ネットショップ作成サービス「BASE」内のショップ開設数は、2022年12月時点で190万を突破しています。よりよいサービスの提供に向けて改善を続けるとともに、今後10年をかけて購入者向けショッピングサービス「Pay ID」とのシナジーを高めていく方針を掲げています。 

インターネットを活用した新しい取引の形を社会に提案している「BASE」。いまでも採用現場に立つえふしんさんに、同社が求めるエンジニア像を伺いました。 

「 BASE」を通じてユーザーに提供する新しい価値体験

Q1.「 BASE」のエンジニア組織について教えてください。

社員の約4割がエンジニアです。2012年に創業した若い会社なので、メンバーは30代がボリュームゾーンですね。

社内のエンジニアは、そもそも「BASE」や、私たちの提供するサービスが好きという人が多いですね。もちろん技術力の高いエンジニアばかりですが、新しい技術をひたすら追い求めるような組織ではありません。

大切なのは、あくまでも「『BASE』を通じてユーザーにより良いサービスを提供すること」。そこに価値を見いだしているエンジニアが多いです。

そのためには、ショップやユーザーから指摘を受けて改善する受け身の姿勢では不十分です。「BASE」が好きで、「BASE」のユーザーのためにUXを高めるにはどうしたらいいんだろう、と自分から考えて、どんどん提案できる人が活躍していますね。「BASE」のドメイン知識を自分なりに咀嚼し、そのうえで常に業界の動向を追っているようなメンバーがチームを支えてくれています。 

Q2. 御社を希望するエンジニアはどんな方が多いのでしょうか?

私たちは、インターネットでみんなが何気なく活動する、そこにいつも『BASE』がある状態を目指していて、そういう考え方を面白がってくれる人、自分もやってみたいと思う人が来てくれていますね。

たとえばいまは、SNS経由で「BASE」に来てくれるユーザーが主軸ですが、今後メタバースがもっと一般に広がれば、その中にショップを出店したり、ユーザーがモノを購入したりする時代が来るかもしれません。そんなふうに、時代の流れを読みながら、「インターネットの中で価値の交換手段を提供する」という「BASE」の大切にしたいことを一緒に実現していきたいという方に来てほしいと思っています。 

実際の応募者として多いのは、toB、toC問わずポータルサイトやECサイトなど大規模なWebサービスを運営する会社で働いていた方ですね。SaaSプロダクトやASPサービスのような、マルチテナントのシステムに関わっていた人たちもマッチしやすい。とくに決済に興味関心がある方は、入社後もスムーズに活躍していただいています。 

「Pay ID」を大きくしていく。長期サービスのリファクタリングが高めるエンジニアの市場価値

Q3. エンジニアの方にとって御社の一番の魅力は何だと思われますか?

BASE社は創業から10年が経過し、サービスや組織の最適化を目指して次のステップにつなげていくフェーズに入りました。

業界全体を見渡すと、「BASE」にかぎらず10年以上続く様々なサービスがリファクタリングのタイミングを迎えています。中には技術的負債に向き合うのはつらいとか、いまさら変えるのは大変そうだなと、あまり魅力を感じないエンジニアもいるかもしれません。でも「10年続くサービスのリファクタリング」を経験できること、そしてそのスキルを身に付けられることって、これからのエンジニアの市場価値を高めることにつながると思うんですよ。 

人はつい新しいものに目を向けがちですが、いかなるサービスも「最新のサービス」であり続けることはできません。ゼロイチでプロダクトを立ち上げる楽しさもわかりますが、多くのユーザーがいて、守らなければいけない資産と信頼があるなかで、より良いサービスにしていくことは、エンジニアにとって解きがいのある面白い課題だと思います。

「BASE」のリファクタリングを説明する際に僕がよく紹介するのが、2013年の渋谷〜代官山駅間での地下化切り替え工事の話。これは東横線と副都心線の相互直通運転の開始に向けて、1,200人の人たちが何日もかけて準備して、たった一晩で地上の線路を地下へと切り替えたものです。 

電車はインフラとして、毎日たくさんの人たちが安全に利用し続けられるものでなければなりません。それに、渋谷というどんどん姿を変えていく都市の中で、常にリファクタリングしていかなくてはならない。

これをWebサービスに置き換えると、同じようにマネジメント力を発揮してアーキテクチャを設計できるかというと、かなり難しいと思うんです。きっと、エンジニアにしてみると、「一からつくり直したい」という人の方が多いのではないでしょうか。 

しかし、ユーザーからするとある日突然、「BASE」のネットショップの仕様がすべて変わるとなると困惑しますよね。ショップの運営にも支障をきたすだろうし、そこで雇われているスタッフや、商品の発送をお願いしている業者にも影響が出るかもしれない。この混乱を避けるためには、現状のサービスをうまく維持しながら中身のアップデートをする必要があるんです。

できるだけユーザーへの影響範囲が少ない形で、通常運用とリファクタリングを同時進行させるって、ものすごい高いマネジメント力、技術力が必要なことなんですよ。

それから、今後ますますの発展が見込まれるクラウドネイティブなサービスでの経験は、エンジニアの市場価値を高めると思います中でも「BASE」では、高い信頼性が求められるECサービスを展開しているわけです。 

年齢を重ねるほど、これまでに触ったことのない領域のスキルが求められる未経験転職は難しくなります。「BASE」の開発チームにジョインしていただくことで、アジャイル開発のプロセスやクラウドネイティブの環境など、エンジニアのキャリアにとってプラスになる経験を提供できると考えています。 

Q4. いま最も採用に力を入れているポジションはどこでしょうか?

「BASE」で買い物するための購入者向けショッピングサービス「Pay ID」に携わるエンジニアです。「Pay ID」は、旧ショッピングアプリ「BASE」と、ID決済サービス「PAY ID」を統合して生まれたサービスです。累計ID登録者数はすでに1,100万を突破していて、次の10年の事業の柱になるサービスです。

先程の渋谷駅の話ではありませんが、これは既存サービスを統合してアップデートしていくため、いまあるサービスを動かしながら、古くなった技術をどんどん新しいものに入れ替えていく必要があります。日常の運用に加え、決済基盤のつくり直しやアプリアーキテクチャの刷新、新機能の開発など、やるべきことは多岐にわたります。

それに、「BASE」はECサービスの中でも、一つの店舗に多数のショップがある「モール型」ではなく、それぞれのショップのブランドを全面に出す「ストアフロント型」の構造を取っています。ストアフロント型のECを展開するサービスの中で、決済システムまで自社で備えているところはほとんどありません。

前例がない状況で、再構築・バリューアップしていかなければならないというこの状況は、難しい反面、ほかでは経験できない面白さがあるはず。また、BNPL(Buy Now, Pay Later/後払い決済)の導入も開始し、これまでの延長線上の開発だけではなく、もう少し先の未来を見据えた開発も求めているフェーズです。

開発チームに求めるのは、これまで以上に多角的に議論できる視野の広さ。既存のコードやドメイン知識も尊重しつつ、チームでの活発な議論を楽しみながらサービスのバージョンアップに挑戦する姿勢が必要です。サービスに対するホスピタリティが高いエンジニアの数を増やしていきたいですね。 

面接で問われる「問題に直面したときの対応の仕方」

Q5. キャリア採用はどういうふうに行われていますか?

入り口は紹介やスカウトなどまちまちですが、その後はカジュアル面談→書類選考→一次面接→リファレンスチェック→最終面接→オファー面談という流れになっています。

カジュアル面談ではお互いの志向をフランクに話し、ご興味を持っていただければ書類選考か一次面接にご案内します。書類選考も一次面接も原則、現場のマネージャーが中心となって選考を行います。 

最終面接は僕とCTO、あるいはCTOとマネージャーといった組み合わせで実施することが多いですね。候補者のみなさんとは、このフェーズでお目にかかることが多いです。

最終面接でお聞きするのは、主に僕がこれまでの経験、CTOが「いまの会社でどういうバリューを発揮したか」。技術に関する質問は一次面接でマネージャーが行っているので、我々はこれまでの選考過程との整合性や伸びしろを見ています。

その後、「内定判定会議」を開いて、面接やカジュアル面談に参加した社員一人ひとりが応募者をレビューします。そうしたプロセスを踏んで「この人と一緒に働きたいね」となれば採用です。 

面接で見ているのは、問題に直面したときにどう対応したか、与えられたポジションにどれだけ主体的に関わったかということです。コーディング試験のようなスキルチェックをしない分、会話の中から仕事への向き合い方や姿勢がにじみ出てくるといいなと思っています。

Q6. 採用プロセスにおいて、えふしんさんが気を付けているポイントはなんですか?

面接で候補者の方を見るポイントではなく、「BASE」についてどう伝えるかという話になりますが、「ただネットショップを簡単につくれるツールを提供している会社」だとは思われたくないんですよね……。そう思う人はまだまだいるかもしれないのですが。だから、そこをどう伝えるかは工夫しています。

私たちは、「インターネット上での取引の民主化」を切り開いている会社です。「民主化」とは、誰でも手軽にできるようになること。

たとえば、かつて「情報の発信」って、記者や大学教授など限られた権威や力を持った人しかできないものでした。でもいまや、インターネットの広がりによって、誰でも簡単にTwitterやブログで情報を発信できるようになりました。そんなふうに、もう「情報発信の民主化」は実現していますよね。

「BASE」は、インターネットを介したお金と商品の価値を交換する取引を、誰でもできるようにしたい。

実際、「BASE」で初めてショップをつくってビジネスを始めたという人もたくさんいますし、2019年10月に上場できたのも、シンプルにショップの売上が伸びたおかげです。これは取引の民主化を少しずつ実現できているからだと思います。そんな「取引の民主化」を一緒に叶えていきたいんだ、そういう会社なんだということを、候補者には伝えたいですね。

本番データを消したことのあるエンジニア、大募集!?

Q7.えふしんさん自身はどのようなエンジニアと一緒に働きたいか、教えていただけますか?

「チャレンジを繰り返し、失敗をリカバリーした経験のある人」です。要は、障害やトラブルにしっかり立ち向かってくれる人。

かつて、「本番データを消したことのあるシニアエンジニア大募集!」という求人を出したことがあります。これは単に「やらかした人」を求めてるわけではありません。本番データを消せるということは、会社が信頼してそれだけの裁量を与えているということです。そして、本番データを消してしまった後に、自分が持っている知識やスキルを総動員して、いかに早くリカバリーしたか、その考えたプロセスやどう対処したかが重要なんです。

▲2016年に募集をかけた当時のページキャプチャー

それから、クリティカルシンキングができる人でしょうか。「BASE」はショップ開設数やユーザー数、そこから発生する問題の数など、とにかく「数が多い」サービスです。何かトラブルが起きるたびに、その膨大な数の中からいち早く問題点を絞り込み、解決策を講じる力が求められます。

ただそのたびに一人で考え込むのではなく、チームで議論し、問題解決のためにコミュニケーションをきちんと取ることも重要です。何かトラブルが起きたら、結局みんなで問題解決の道筋をつけるために情報を集めて解決策を考え、全員が納得した上で対応に当たるのが一番早いんですから。

Q8. 最後に、BASE社を志望するエンジニアに伝えたいメッセージはありますか?

自分が「こうしたい」と思うことがあったら、ぜひ僕やCTOをうまく利用してほしい。言語化できていなくても全く問題ありません。けっこう、Slackとかでフランクにメンバーから相談をもらうことも多いんですよ。

急速に発展してきた「BASE」には、コストや緊急度の観点からどうしても後回しにせざるを得なかった技術的負債や課題が残っています。私たちも、決してこのままの状態でいいとは思っていません。先ほど伝えたとおり、この負債や課題をうまく解消して、次の10年をつくっていくことこそが、長く続いたサービスにいま携わる面白みですし、「Pay ID」のような会社の成長を新たに牽引する事業とのシナジーをつくるフェーズにも期待いただけたら嬉しいです。

そのような問題に対して、BASE社ではエンジニアとして技術的な知見からアプローチを図ることができる単にコードを書くだけではない面白さも感じてもらえると思います。 

執筆:松田小牧
写真:赤松洋太
取材・編集:椛沢はるな、石川香苗子

関連記事

人気記事

  • コピーしました

RSS
RSS