爆速で成長する若手エンジニアの共通点とは? 1000万ダウンロードのビッグタイトルに携わる新卒4年目コンビに聞く「チャンスの掴み方」

2021年8月24日

株式会社アプリボット 運用タイトル開発リーダー兼「Applibot Voxel Studio」責任者

大洞 祥太

2018年株式会社サイバーエージェントに新卒入社後、株式会社アプリボットに配属。新規タイトルにて開発を担当し、2018年サイバーエージェント全社総会では新人賞に受賞。2019年より、運用タイトルの開発リーダーを務め、2021年よりビッグタイトルを担当。その他にもゲームエンジニアの新卒採用責任者を任されるなどし、2021年よりグラフィック技術力のさらなる向上を目的としたスタジオ「Applibot Voxel Studio」の責任者を務める。

株式会社アプリボット 運用タイトル開発リーダー兼アプリボットクライアント責任者

杉浦 優介

2018年株式会社サイバーエージェントに新卒入社後、株式会社アプリボットに配属。入社以降ビッグタイトルの開発を担当し、2021年サイバーエージェントグループ全社総会ではベストエンジニア賞を受賞。現在はクライアントエンジニアとして、UI周りや通信部分に加え、アセット管理やビルド周りの開発を担う。それに加え、アプリボットのクライアントエンジニアが抱える課題を解決する組織「クライアントボード」の責任者や、アプリボット技術広報チームのリーダーを務める。

「多くの人に使われるアプリを開発したい」「有名なゲーム開発に携わってみたい」といった漠然とした“やりたいこと”はある。だが、どのようなアクションを起こせば実現できるのか、悩む若手エンジニアも多いのではないだろうか。

「世界震撼」を経営理念に掲げるゲーム開発会社、アプリボットでゲームエンジニアとして働く入社3年目の大洞祥太さんと杉浦優介さんは、夢へと向かう階段をハイスピードで駆け上がっている。両名ともに1年目にして1000万ダウンロード突破を記録したビッグタイトルの開発に携わり、現在は開発組織のリーダーとして組織を引っ張る立場に。さらに開発以外の仕事も積極的に引き受けているというから驚きだ。

理想のキャリアに向かい、若手エンジニアが爆速で成長できるのはなぜなのか。2人の入社以来の歩みを聞くと、“やりたいこと”を実現したいエンジニアが取るべきアクション、若手が育つ組織の特徴が見えてきた。

仕事の掛け持ちは当たり前。チャンスに貪欲なのは、“役割”が人をつくるから

──まず、お2人の現在の業務内容を教えてください。

大洞:新卒でサイバーエージェントに入社後、アプリボットに出向しました。現在は約15人のエンジニアが所属する「NieR Re[in]carnation」開発プロジェクトでセクションリーダーを務めています。4つに分かれているセクションのうち、自分は3Dのメインストーリーの部分や2Dのあらすじの部分の制作を担うセクションを担当しています。

また、今年の3月からは、「Applibot Voxel Studio」という会社全体のグラフィック技術向上を目指す組織の責任者にもなりました。Applibot Voxel Studioでは、グラフィックに関するプロジェクト間の知見の差を補う目的で研究や発信活動を行っています。これらの業務と並行して、ゲームエンジニアの新卒採用の責任者もしています。

杉浦:自分もサイバーエージェントに入社してすぐにアプリボットに出向し、Unityエンジニアとして「NieR Re[in]carnation」開発プロジェクトにずっと携わってきました。通信やゲーム全体のフロー、アセット管理などを担うセクションに所属し、現在はセクションリーダーをしています。

この業務とは別に、各プロジェクトの一部のクライアントエンジニアが集まる「クライアントボード」という組織の責任者も務めています。クライアントエンジニアが抱える課題などについて会社全体の視点から話し合い、方針を決めるのが主な活動内容です。

加えて、アプリボットの技術広報リーダーとしてCEDECへの登壇サポートや技術書典で販売する書籍の制作や販売、さらにサイバーエージェント全体の技術広報ブログ「CyberAgent Developers Blog」の運営にも携わっています。

──2人ともセクションリーダーという重要な役割を担っているだけでなく、複数の業務を掛け持ちしているのですね。なぜそんなに幅広い業務を担当しているのでしょうか?

大洞:マネジメントや組織づくりにずっと関心があったので、「Applibot Voxel Studio」の運営に責任者として携われるのはチャンスだと思って引き受けました。採用に携わっているのも同じ理由です。

もともと、自分1人で成果を出すよりも組織の成果を最大化することに貢献したい気持ちが強いんです。例えば2ヶ月という時間があったら、自分1人では小さいゲームを1本つくるのがやっとだと思います。でも100人のエンジニアが集まって本気を出したら、トップセールスを狙えるタイトルを生み出せるかもしれませんよね。

タイトル開発の仕事も負荷は高いので大変ですが、自分の伸ばしたいスキルを伸ばせる機会なので、積極的に挑戦していきたいと思いました。

──ご自身の意思で役割を増やしていったのですね。杉浦さんも複数の業務を兼任していますが、自ら活動範囲を広げていったのですか?

杉浦:そうです。クライアントボードのリーダーは手を挙げてやらせてもらいました。サイバーエージェントには経営・人材育成を支える非常に重要な「あした会議 」という合宿型の会議があります。そのアプリボット版で「みらい会議 」というものがあって、アプリボットの“みらい”をつくる新規事業案や組織課題解決案などを提案したり議論したりするのですが、そこで自分から提案しました。会社ができるだけ若い人に責任ある仕事を任せようとしているので、挑戦はしやすかったですね。

技術広報の仕事を始めたのは、もともと情報を発信することが好きだったからです。1年目でアプリボットの技術広報をしていたときに、広報は採用をはじめとする会社のあらゆる課題に幅広くアプローチできる手段だと知って、サイバーエージェントの広報にも興味を持つようになりました。

──やりたいことにどんどん取り組んでいく姿勢が素晴らしいと思います。挑戦をしやすい社風があるのでしょうか?

杉浦:そうですね。たとえまだ実力が伴っていない人にも、まず任せてみることで一気に実力を引き上げる「挑戦させる文化」が、サイバーエージェントグループ全体にあると思います。たとえそれで失敗したとしても、自分でやると宣言して完遂することで実行力が高まるので良しとしてくれるんです。 サイバーエージェント全体のMission Statement(行動指針)の1つに「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを。」という言葉があって。 挑戦する若手をベテランがあたたかく応援してくれる空気感もすごくありがたいです。

大洞:サイバーエージェントCHOの曽山は、よく「役割が人をつくる」と言っていて、その考え方はアプリボットにも浸透しています。

付け加えるなら、経営陣や先輩たちとの距離の近さも挑戦しやすさにつながっていると思います。代表の浮田は、僕たちが1年目の頃からどんな成長の機会を与えるべきかをすごく考えてくれていました。浮田以外にも、若手の成長に向き合ってくれる人が社内にたくさんいるのが、アプリボットのいいところですね。

▲サイバーエージェントグループの「挑戦させる文化」について教えてくれた杉浦さん(左)と大洞さん(右)。

必死に食らいついて乗り越えた1年目。「信頼される働き方」が次のチャンスを呼ぶ

──現在のポジションに至るまでにさまざまな努力を積み重ねてこられたと思います。どんな困難を乗り越えてきたのでしょうか。

杉浦:いま関わっているプロジェクトの立ち上げ時に、プロデューサーから「ゲームのUI部分を設計から全て任せる」と言われたときは驚きました。そのプロデューサーとは内定者バイト中に別タイトルで一緒に仕事をしていて、当時の自分の動きを覚えてくれていたことが抜擢につながったようです。

大役を任せてもらえて嬉しかったのですが、まだ1年目なので知識もなければ気軽に頼れる人もおらず、かなりきつかったですね……。それでもデザイナーと一緒にUIを必死に考えて、それをどう実現するか練りに練りました。尊敬できる先輩がいたので必死に食らいついて、何度も相談に乗ってもらいながら乗り越えました。そのときは、なりふり構わずなんでもやりましたね 。いま思うと、1年目の新卒にビッグタイトルのUI部分を全て任せるなんて、かなり裁量が大きいなと思います。

──大洞さんは、これまでにどんな困難がありましたか?

大洞:入社してすぐにジョインしたタイトルが、ガチャなどのアウトゲーム部分(メインストーリー以外のゲーム要素 )のつくり直しを行うこと決まったんです。その全てを自分1人で対応したのはとても大変でした。

開発中盤での大きな変更だったため、スケジュールはかなりタイトで、クオリティとスピードのバランスを取るのに苦労しましたね。もう、やることは無限にある、という感じでした。

──2人とも入社直後から高いハードルを乗り越えてきています。折れずに頑張ってこられたのはなぜだと思いますか?

大洞:入社した瞬間から、「新卒だからこそ誰よりも食らいつこう」という気持ちだけは強く持っていました。でも、たぶん1人だったら無理だったと思います。杉浦とはよく業務の合間に食事に行って励まし合っていました。「いやー、そっちはどう?」「こっちもなかなか大変だよ」みたいな感じで(笑)。同期やプロジェクトメンバーの頑張る姿を見て、自分も奮起できていましたね。

杉浦:自分も大洞と同じで、同期と日々励まし合えたのは大きいです。「しんどいけど、ぼら(大洞さんのこと)も頑張ってるから折れないようにしよう」って。それから、ビッグタイトルに参加させてもらえたので、リリースしたときのインパクトがずっと楽しみでした。辛くても頑張ってこられたのは、常にゴールの先をイメージしていたからだと思います。

▲2021年グループ全社総会で杉浦さんはベストエンジニア賞を受賞。755の投稿からは大洞さん共に成長してきた日々が垣間見える。

──振り返ってみて、ご自身のどのようなアクションが成長を促したと思いますか?

大洞:自分のやりたいことだけを自由にやるのではなく、会社やプロジェクトのために必要な業務にもしっかり取り組んできたことです。対エンジニアだけでなく、さまざまな職種の人に信頼される働き方は常に意識してきました。

杉浦:自分も、任されたことは常に120%で返すようにしてきました。それと同じくらい心掛けていたのが、丁寧なコミュニケーションです。わからないことやトラブルがあったら、すぐに周りの人に相談するようにしていました。まめな情報共有で大きなトラブルを防ぎ、「杉浦に任せておけばとりあえず安心」と思ってもらえたことで、大きな仕事も任せてもらえるようになったんだと思います。

新卒4年目コンビの成長を支えた「若手の挑戦をベテランが応援する」カルチャー

──20代半ば でマネジメント経験を積むのは学びが大きい一方、難しさもあると思います。例えば年長のメンバーとのコミュニケーションで、やりにくいと感じる場面はないのでしょうか。

大洞:もちろん自分の至らないところはいくらでもあると思いますが、皆それを指摘して否定するのではなく、どうしたら改善できるかを一緒に考えてくれる空気があるので、会社の文化に守られている部分はあると思います。もし他の会社だったら、今のようにはできていないかもしれません。

杉浦:確かに、自分も大洞もセクションのメンバーは全員年上ですが、応援してくれない人はいないですね。意見を言われることはあっても、指図されるようなことはありません。リーダーとしての意思決定をちゃんと尊重してくれます。先輩たちが「一緒によくしていこう」という雰囲気で若手を支えてくれるのは、本当にいい文化だと思います。

──サイバーエージェントには新入社員のひとり立ちを支援する「トレーナー・トレーニー制度」もありますね。

大洞:サイバーエージェントグループ全体に導入されている、新入社員の面倒を見てくれる先輩が1対1でついてくれる制度です。先輩は目標を一緒に設定したり、業務の進捗を確認したりしながら若手の成長をサポートします。

自分が1年目のときのトレーナーはやりたいことを自由にやらせてくれるタイプだったので、それが今につながっていると思います。良い意味で自分のキャパを自分で判断しながら仕事を引き受けていく必要があったので、タスク管理能力はどんどんついていきました。

──そうだったのですね。それでパンクすることはなかったんですか?

大洞:サイバーエージェントの「Battle Conference」というイベントの準備と、タイトル開発の最終段階のマイルストンが重なったときはさすがに持ちませんでしたね。開発を優先する形で調整させてもらいました。

ただ、そういう失敗経験も今の自分の糧になっているので、後悔はありません。こういうのって、少年マンガでもよくあるじゃないですか。いきなり強い敵と戦うことで、急に覚醒してすごい強くなるという(笑)。いつまでも自分のキャパを超えない仕事量では、いつまでもキャパシティは増えていきません。こういった失敗経験も、自分を成長させるためには非常にいい経験でした。「以前こう失敗したから、次はこうしよう」と考えられるようになりましたね。

──成長できる文化はどのようにして作られていると思いますか?

大洞:アプリボットには「Applibot Membership Compass(AMC)」という行動指針があって、その影響はあるかもしれません。「他人への否定で自分を正当化しない」とか、「間違ったら、素直に謝る。そして前進しよう」といった内容なんですけど。 入社したときからずっとこの方針で仕事をしているので、意識しなくてもこの指針に沿って行動できていると思います。

杉浦:自分もそれほど意識する機会はないですが、改めて見るとどれも当たり前にやっていることだなと思います。まさに当社の文化が表現されているところですね。

▲個人が組織貢献する際のお手本となる行動をまとめている。

「僕に任せてください」と言える勇気が、理想のキャリアを切り拓く

──今後については、どのような展望を描いていますか?

大洞:CTOとVPoEという二つの方向性があるなら、自分はVPoEに関心があるので、これからも人材育成や組織づくりにコミットしていきたいです。「Applibot Voxel Studio」の活動では、エンジニアの組織全体を見てチームで成果を出すことにこだわりたいですね。

組織として高い成果を出すためには、高い目線でディスカッションできる熱量の高いメンバーがたくさんいることが重要で。周りのメンバーや組織とともに、自分自身も成長できたらいいなと思っています。

杉浦:自分は「発信力のあるテックリード」を目指しています。プロダクトの面ではいろんな人の人生を大きく変えるゲームをつくりたいと思っていて、いつかテックリードとしてそういうゲーム開発に参画しながら、SNS発信や勉強会への登壇をしつつ、ゲーム業界において技術力の高さで認知される存在になれたら理想通りですね。

そのためには、マネジメントスキルと技術力の両方が必要ですが、特に技術力に関してはまだこれからです。去年は通信周りやシステム周り、ゲームフローをつくる機会を得られたので、今後はバトルのロジックや描画、3Dグラフィックなど触れる範囲を広げていきたいです。

──最後に、“やりたいこと”を実現したいと思っているエンジニアの読者へメッセージをお願いします。

杉浦:組織の中でチャンスを掴むには、任されたことに対して期待以上の成果を返し続けることが重要だなと思っています。そして、自分自身は仕事をあまり選り好みしないようにしているんです。 もし、今の仕事がやりたいことから少しずれていると感じても、手を抜かずに取り組んでみたら、誰かがそれを見ていて、意外な場面でやりたい仕事にアサインしてくれたりするなと実感しています。

大洞:自分よりも圧倒的に経験値の高いエンジニアと働く場面でも、必要以上に消極的になる必要はない気がしています。大切なのは、「どうやってその差を埋めていくか」という強い気持ち。今の自分にはできそうにないことでも、わかる人に教えてもらいながら一個一個進めていけば、大抵の仕事は何とかなりますし、成長につながると思います。

例えば、ある難しいタスクを15年目の先輩と3年目の自分のどちらかがやる状況になったとき、「先輩の方が適任なので、先輩お願いします」と簡単に譲ってしまうのではなく、「僕に任せてほしいです」と勇気を出して言う。というか、どんどん自分からタスクを拾っていく。その「一言」のハードルを超えられるかどうかで、どれだけの成長するチャンスを得られるかが決まるのではないでしょうか。 

執筆:一本麻衣
取材・編集:石川香苗子

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