リモートやWFH(ワークフロムホーム)など、働き方が自由になりつつある中、エンジニアならどんなシチュエーションでも開発を最高に楽しみたい! そう思う人が多いはず。エンジニアのガジェットに関する様々な要望に応える連載、「開発環境にわがままであれ!エンジニアのガジェット何でも相談室」シリーズ。第1弾は、客層の70%をエンジニア・クリエイターが占める自作キーボード専門店「遊舎工房」の担当者・マツダさんをお迎えしました。
SNSやテレビでも話題になり、これまで無数のキーボードを見てきた専門家に、いつでも開発を最高に楽しめる、おすすめのキーボードをシチュエーション別に8つ紹介していただきました。
長時間打ち込んでも疲れない! 集中して開発したいときの左右分離型60%キーボード
長時間集中して打ち込み続けていると、ずっと同じ姿勢が続き肩こりがひどい。もっと楽にコーディングできるキーボードが欲しい!
1. 7sPro
7sProは左右分離型の60%キーボード
*1 です。長期間の打ち込みからくる肩こりを解消したいなら、やはり分離型がうってつけです。キーボードが左右に分離しているので、背筋を伸ばしたまま自然な体勢でタイピングできます。
開発に必要な最小限のキーがそろっており、指の移動を最小限に抑えられるため、プログラマーに人気なキーボードです。(詳しくは
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*1 60%キーボード:フルサイズのキーボードよりもナンバーキーや方向キーなど、40%ほどキーが少ないキーボードのこと。他にも80%キーボード、30%キーボードなどがあります。
ちょっとアレンジしてもいいんじゃない? 出社組におすすめ
「まん防」が解除されフル出社になりました。オフィスで使いやすいキーボードが欲しい。職場の雰囲気がやや硬いので派手すぎる形やカラーはちょっと使いにくいけど、ただ市販のものを使ってもちょっとつまらない……
2. DZ60 RGB V2
派手そうに見えますが、外観部分のキーキャップ
*2 、キースイッチ
*3 、ケースは全部取替え可能です。硬い職場だったらキーカラーを変えたり、打鍵のカチカチ音が気になるならスイッチを変えたりして、オフィスでの話題づくりにひと役買うこともできます。また
、1個だけキーキャップを変えたり、ケースの色だけカラフルなものにしたりと、密かな楽しみを取り入れることも可能です。(詳しくは
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*2 キーキャップ:コンピューターのキーボードのキースイッチを覆う小さなプラスチック製のカバーのこと
*3 キースイッチ:キーボードの打鍵音や打鍵感をつかさどるパーツ。「軸」とも呼ばれている。大きく分けて打鍵感が軽く音が静かな「リニア(赤軸)」、赤軸よりも打鍵感がはっきりとした「タクタイル(茶軸)」、打鍵音が強めで打鍵感が比較的重い「クリッキー(青軸)」の3種類がある。
3. JP60
さらに、リモートワークで増えた会議の議事録作成や資料づくりのために、文章を打ちやすいキーボードも手元に置いておきたいという方も少なくないでしょう。JP60は自作キーボードにしてはレアな日本語配列になっており、文章を打つ機会が多い方に便利です。DZ60 RGB V2同様細かいアレンジが可能です。(詳しくは
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イレギュラーな出社にも対応。持ち運びするなら超薄型、超コンパクト
会社はフリーアドレスだから好きな席に自由に座れる。ただ、家、デスク、ミーティングルームと、重いキーボードを持ち運ぶのがめんどくさい……
4. Angel70
Angel70は超薄型のキースイッチを使用しているため、他のキーボードと比べて圧倒的に薄い。PCバッグに簡単に入れられたり、ノートパソコンのキーボードの上に置いて使用することができたりします。
また、キーピッチ*4 は通常3/4インチ(19.05mm)に対して、Angel70は18mmと狭いんです。そのため、打つ時の指の移動距離が短く、指への負担が少ない。狭ピッチによる誤打鍵を抑えるために、スイッチに打感の重いクリッキー(青軸)に変更したりするなど、アレンジの工夫を凝らすこともできます。(詳しくは
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*4 キーピッチ:隣り合わせとなるキーとキーの中心から中心までの距離
5. Nomu30
Nomu30は圧倒的にコンパクトな30%キーボードです。ほぼ英字キーだけのレイアウトで、使いこなすまでに少々時間がかかるかもしれません。ただ、レイヤー機能
*5 をうまく使えば、通常のキーボードと同じような作業を行うことができます。小さめなカバンでも問題なく持ち運ぶことが可能です。自宅や会社のデスクが小さくスペースがない、また資料を読みながら打ち込みたいというときも活躍します。(詳しくは
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*5 レイヤー機能:キーボードのキー数が少ないため、1つのキーに複数の動きを割り当てる機能。特定のキーを押すとレイヤーを切り替えることができる。市販キーボードではファンクションキー(Fnキー)が同じ役割を果たしている。
在宅に最高! キーの打ち心地だけを追求したら重量2kgになった
これまでずっと出社・リモートを繰り返していたので持ち運びやすいキーボードを使っていた。けれど、今度フルリモートが決まったから、重量は度外視で打ちやすいものがいいなぁ。
6. Fjell Keyboard
ノルウェーのキーボードメーカーMekaniskの60%キーボードはアルミ製の金属ケースで、真鍮ウェイトを含めた重量なんと2kg! この重さがある上に、底にズレ防止のゴムが貼られているため、打鍵時の安定感を引き上げています。
とはいえリモートワークでオンラインミーティングの場合、打鍵音が大きいと、マイクに拾われてしまい発言の邪魔になることがあります。Fjell Keyboardはケースと基板(PCB)の間にスポンジ素材の敷布が入れてあるため、打鍵の際にキーが直接ケースにぶつかることはありません。金属ケース+高さがあるキーでも、通常のキーボードより静かで、心地よい低音になっています。(詳しくは
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エルゴノミクスや片手キーボード。遊び心満載でギークにおすすめ
過去にもキーキャップを買ったり、キースイッチを交換したことはあるけれど、キーボードでもっと思いきり遊んでみたい!
7. ErgoArrows
65%の左右分離型エルゴノミクスキーボードErgoArrows。エルゴノミクス(人間工学)レイアウトにしては珍しく方向キーが独立していて、他のキーよりも高さが低く設計されています。打鍵中に方向キーによる手への干渉を極力押さえた構造になっているのも特徴的です。
また、自由に機能を割り当てられる空白キーが多いのもErgoArrowsの特徴の1つです。例えば、通常「T」、「G」、「B」キーは左手側に配置されがちですが、こういった真ん中にあるキーを常に左手で打っているとは限りません。ErgoArrowsは右手側にも、空白キーが一列用意されているため、そこに「T」、「G」、「B」を割り当てれば打鍵中の指の移動を減らせます。他にはよく使うキーを親指ゾーンに配置することで、作業効率を大きくアップすることも可能です。(詳しくは
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8. Froggy片手キーボードセット
最後におすすめするのはこちらの片手キーボード。最下部にある「カエル🐸キー」を使って4層のレイヤーを切り替えれば(赤いカエルを押しながら打鍵すれば赤文字で書かれている内容が反映される)、
片手でマウスやペンを操作しながらもう片手でフルキーボードとして使用できるツワモノ。片手が不自由な方へのアクセシビリティ向上にも寄与しています。キー数が極端に少なく、かつ片手操作のため、使いこなすにはやや時間がかかるかもしれません。ただ、こういうところにもギークな気持ちをくすぐられるのではないでしょうか?(詳しくは
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初めての自作キーボード、何から始める?
これまでディープなキーボードの世界をじっくり紹介していただきましたが、最後にマツダさんにキーボードを自作してみたい方へのアドバイスを伺いました。
「市販のキーボードサイズが少し手に合わない」、「色や絵柄で個性を出したい」といった気持ちから、自作キーボードに挑戦する方は多いと思います。いきなりゼロからつくりあげることが難しくても、キーキャップを1個変えたり、キースイッチを変えたりと、少しずつ自分なりのこだわりを取り入れていくことからはじめてはいかがでしょうか。
自作キーボード専門店 遊舎工房
取材・執筆:王雨舟
撮影:若子jet