2022年5月26日
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Google Researchの研究チームが開発した「Hidden Interfaces for Ambient Computing: Enabling Interaction in Everyday Materials through High-brightness Visuals on Low-cost Matrix Displays」は、部屋にある家具や壁に馴染むタッチディスプレイだ。
モニター画面など一切なく、見た目ではディスプレイだと全く分からない。必要な時だけ家具や棚にテキストや画像、映像だけが浮き出るように表示される。実験では木や布、プラスチック、鏡などの素材に対して高輝度の表示、画面へのタッチ操作に成功した。
家電製品やスマート家電の普及に伴い、インターネットに接続され、音楽再生や音声操作、ホームオートメーションなどの機能を提供するさまざまなスマートデバイスが家庭に導入され始めている。スマートデバイスは、タッチ操作や表示するために、 高精細なタッチディスプレイが搭載されているケースも多い。
これには物理的なモニター画面があり、直感的に操作できる利点もあるが、モニターというメカニカルな機械の存在感が残る。そこで、モニターがむき出しではなく、家具などの日常風景に調和したディスプレイが求められている。必要でないときは通常の家具で、必要なときだけ機能するディスプレイだ。
プロジェクターで投影する方法もあるが、プロジェクターの設置やオクルージョンの問題、輝度の問題もあり現実的ではない。素材の下から透過させて表示する方法も研究されているが、輝度が低く文字が潰れて見えないなど完璧なものは出てきていない。
今回はこの課題に対し、素材を透過する高輝度な映像を生成できるディスプレイを提案する。今回は素材に対して高輝度な映像を透過させるために、有機ELの中でもアクティブマトリクス式有機ELディスプレイ(AMOLED)ではなく、パッシブマトリクス式有機ELディスプレイ(PMOLED)を使用する。
PMOLEDとは、電極が縦横格子状に配置され、電極が交わる部分に素子を並べ、縦横の電極を通電させ発光させる方式を指す。鮮やかさや反応速度などではAMOLEDより有意でないが、構造が単純で生産コストが低い性質を持つ。今回は、このPMOLEDを利用して並列レンダリングを行うアプローチで高輝度グラフィックスを実現する。
本手法の優位性を検証するため、多様な素材(アクリル、PETG、ウッドベニヤ、鏡、テキスタイルなど)を使ったプロトタイプを制作し、画像やテキストからなるコンテンツを用いて技術評価を実施した。プロトタイプには、128×96の解像度を持つPMOLEDディスプレイを開発した。タッチ操作のために、ディスプレイを囲むリング状の絶縁を作り、12個の電極を円弧状に配置した。電極は静電容量式近接タッチセンサーのコントローラーに接続され、Raspberry Piで動作する。
結果、従来のAMOLEDよりもPMOLEDを使用した今回のディスプレイは高い輝度のグラフィックスを表示できることが分かった。木製の板で3〜20倍、鏡で4〜40倍など、すべての素材において輝度の向上が見られた。
また表示する文字サイズは、素材によって調整が必要だとわかった。木や布は光の拡散が多く干渉するため字は拡大表示した方がよく、鏡面は木や布に比べて光の拡散が少なく文字が鮮明に見えるため、文字サイズを小さくできる。プラスチックは干渉が大きくぼやけていた。厚いバスウッドシート(1.6mm)では十分な透過性が得られないが、薄いウッドパネル(0.5mm)では良好に動作するなど、厚さによっても有効性が変わることがわかった。
タッチ操作では、スライダー入力、スイッチ切り替え、チェックボックス、ラジオボタンへの入力など、スムーズに操作できることを実証した。
プロトタイプの画像や動画を閲覧した1572名の参加者による大規模な評価アンケートを行った。アンケート結果では、67%の参加者は鏡が最も有望な素材であると述べた。表示される画質の鮮明さが要因と考えられる。一方で、照明スイッチは最下位であった。暗闇で操作するにはどこにあるか分からない不便さが要因と考えられる。
今回のアプローチを用いた応用例としては、鏡に天気や温度の表示、キッチンの木の棚にキッチンタイマーの表示、ソファの肘掛けにテレビのコントローラーを表示するなど多岐にわたるだろう。
PMOLEDは低コストで生産できるため、ユビキタスコンピューティングの観点からも量産が期待できるアプローチと考えられる。
将来的には、より大きなディスプレイや、静電容量式タッチセンサーをディスプレイの周囲ではなく、上に重ねた状態のデバイスも考えているという。
Source and Image Credits: Alex Olwal and Artem Dementyev. 2022. Hidden Interfaces for Ambient Computing: Enabling Interaction in Everyday Materials through High-brightness Visuals on Low-cost Matrix Displays. In CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI ’22). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 504, 1–20. https://doi.org/10.1145/3491102.3517674
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