2022年11月28日
山下 裕毅
先端テクノロジーの研究を論文ベースで記事にするWebメディア「Seamless/シームレス」(https://shiropen.com/)を運営。
中国の香港城市大学に所属する研究者らが発表した論文「AngleCAD: surface-based 3D modelling techniques on foldable touchscreens」は、折りたたみ式タッチスクリーン上で3Dモデリングを行うための新しいインタラクション技術を提案した研究報告だ。折りたたみ式スマートフォンを90度に曲げる物理的変化で、画面に表示される3Dオブジェクトの奥行きを横から知覚させ、3Dオブジェクトを変形させるためのマルチタッチインタラクションを提供する。
最近の3Dモデリングソフトウェアは、非技術者や訓練を受けていない人でも手軽に操作して3Dオブジェクトを作成できる。しかし、しばしば3Dモデリングの学習において深刻な障壁に直面する。それは2Dの平面用に開発されたソフトウェアで3D空間を視覚化できない、あるいは不正確に理解してしまう現象である。
これは、2Dの入力と表示デバイスを通して3Dオブジェクトの6自由度(DOF)すべてを直感的に描写できないことが主な原因である。特にZ次元や深度の場合、オブジェクトを直接操作するというより間接的な操作になる。
もし3Dオブジェクトの6自由度すべてを直接操作したい場合は、通常、AR/VRなどの没入環境を通してのみ実現できる。だが、現状3Dモデリングをするクリエーターの多くは、自由度の制約があるにもかかわらず、不自然な方法でZ次元にアクセスしながら3Dオブジェクトを操作する2Dスクリーンのソフトウェアを好んで使い続けている。
今回はこの課題に対し、自由度が高い環境で3Dモデリングを手軽に行える、折りたたみ式タッチスクリーンを用いたアプローチ「AngleCAD」を提案する。2画面の内の一方を90度に折りたたむ方法(90度だけでなく他の角度でもホールド可能)で、スクリーン間の物理的な角度を利用して奥行きを表現し、ユーザーに横からの視点と横からのタッチ操作によるインタラクションを提供する。
実現するために、2台のスマートフォン(Samsung Galaxy Note20)を特注のヒンジで結合し、360度の折りたたみ角度が行える折りたたみ式スマートフォンのプロトタイプを開発した。左側のスマートフォンを画面A、右側のスマートフォンを画面Bとし、その背後に3D空間を表示する。画面A、画面Bともに、暗い空間に視線方向を示す白い長方形のワイヤーフレームで構成された同様の背景を持ち、奥行きのある3D空間を知覚させる。
編集画面では、画面Aにほとんどのボタンが集まっており、さまざまな設定や各機能をサポートする。3Dオブジェクトへの直接操作は、2本の指を駆使したマルチタッチインタラクションで、回転、平行移動、拡大縮小が行える。他にも、一面だけを拡大縮小したり、穴を開けたり、カットしたりもできる。これら操作はA画面とB画面の両方で同時に制御可能だ。
本手法を評価するため、参加者7人を対象にユーザー調査を行った。その結果、アンケートにおいて参加者全員がAngleCADで3Dモデリングを行う際の直感性について肯定的な評価をした。また3次元空間におけるオブジェクトをよりよく視覚化できたとした。参加者のほとんどは、90度に曲げる角度を好み、画面Aをメインとして画面Bを補助として操作していた。
インタビューでは、「角度やサイズの調整が便利で直感的」「携帯でき、デモやコミュニケーションのためのスケッチに役立ち、直接的で習得しやすい」などの肯定的なコメントが得られた。
Source and Image Credits: Can Liu, Chenyue Dai, Qingzhou Ma, Brinda Mehra, and Alvaro Cassinelli. 2022. AngleCAD: surface-based 3D modelling techniques on foldable touchscreens. Proc. ACM Hum.-Comput. Interact. 6, ISS, Article 582 (December 2022), 25 pages. https://doi.org/10.1145/3567735
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