手術なしで顔に電子機器を埋め込むメイク技術 ユーザー操作で頬を赤らめ涙を流すことが可能【研究紹介】

2022年4月26日

山下 裕毅

先端テクノロジーの研究を論文ベースで記事にするWebメディア「Seamless/シームレス」(https://shiropen.com/)を運営。

米カーネギーメロン大学の研究チームが開発した「Morphace: An Integrated Approach for Designing Customizable and Transformative Facial Prosthetic Makeup」は、皮膚パッチを使った特殊メイクでウェラブルデバイスを顔の皮膚に埋め込む技術だ。外からは組み込まれたウェアラブルデバイスが分かりづらくなっている。

ユーザーは、自分の操作で頬を赤らめたり、涙や汗を流したりができる上、そばかすを浮き出させたり、眉毛を上げ頬骨やえくぼをつくったりする動的な機能を付加できる。

▲提案手法で頬を赤らめ(左)、発汗(右)させている様子

研究課題

ウェアラブルエレクトロニクスは、腕時計やメガネ、衣服などの人が身に付ける人工物に電子機器を付加し、薄くコンパクトに仕上げていくのが基本だ。外からは視覚的に見えないのが理想だが、その多くは電子部品の一部が露出していたり、デバイス自体が不自然な形状をしていたりする。どうしても美観を犠牲にしてしまう。

そこで本研究では、美観と機能性の両方を組み合わせたウェアラブルエレクトロニクスを提案する。映画や医療などですでに発展している特殊メイク技術に着目し、顔に電子機器をカモフラージュするようにウェアラブルデバイスを組み込む。

開発過程

このアプローチを実現するために、デバイスの構造は人の皮膚の構造を模倣した。一番表面の表皮、中間層の真皮、一番下の皮下組織と筋肉の3つの層に分類し構築する。表皮は露出するため肌に馴染む質感でつくられるなど、すべての層において、どんな機能を持たせたいかで役割が変化しつり方が変わる。例えば、発汗させたい場合は、真皮に液体を保持する。これら3層を組み合わせて皮膚パッチとする。

▲人の皮膚構造(左)を模倣した、今回の提案デバイス(右)の構造

人の顔はそれぞれ違い、顔の場所によっても大きく違うため、違いに合わせた皮膚パッチを形成しなければならない。そこで本手法では、3Dスキャンツールによりそのユーザーの顔の3Dメッシュを取得し、3次元CADソフトウェアにインポートして顔の適応部位を指定し形状などを構築していく。作成した皮膚パッチのデザインは、3Dプリンターで雛形を造形しシリコン素材で作成する。

▲ユーザーの顔の3Dメッシュを用い、顔の適用部位を選択し皮膚パッチを作成するためのデザインを生成している様子

皮膚パッチが出来上がったら、それを顔の部位に装着する工程に移る。皮膚パッチを肌に安定して取り付けるために、皮膚パッチの周囲を形取った枠を作成する。枠の内側には特殊な液体によってつくられた固化した膜が張られる。枠の中央に皮膚用接着剤で皮膚パッチを取り付け、この枠と皮膚パッチを統合したものを肌の上に置く。綿棒にアセトン溶液を染み込ませ、枠を溶かしていく。最後に皮膚パッチ上に液体/固体ファンデーションを塗って肌色のバランスを整えて完成となる。

▲皮膚パッチを肌に装着する工程

機能説明

各機能を付加する際の作り方を簡単に説明する。そばかすと赤ら顔をつくりたい場合は、サーモクロミック顔料を混合し色を未硬化シリコンの第1層に手動で注入し、サーモクロミック層(上層)と下層の間に電源と接続した導電性の糸を埋め込む。サーモクロミック顔料が約31度に加熱されると、顔料が消えて皮膚が赤く染まったり、そばかすが浮き出たりする。

涙と汗をつくりたい場合は、未硬化のシリコンに細いプラスチックチューブを埋め込み、流体の流路を作る。シリコンが硬化した後、プラスチックチューブを少しずつ引き抜き、一部を残してシリコン接着剤で密封する。シリコンの上層に小さな穴を開け、注射器を使って手動で水を送り込む。

シワと頬骨をつくりたい場合は、比較的硬いシリコンで用途に合わせた土台を作り層の中に埋め込む。土台にワイヤーを通し引っ張ることで、表面にひだができ、シワ/頬骨の効果が得られる。

今回、機能によっては空気圧やワイヤーなどを駆動させ動的な動きを再現しているが、これら駆動システムの携帯性に関しては検証しておらず、今後の課題としている。

▲提案する皮膚パッチは、さまざまな機能を持たせることができる

提案手法を用いたアプリケーション例がいくつか紹介される。チャット中で絵文字の反応を入力するように、ユーザー操作で人工的な汗や赤面をトリガーして、無表情でも自分の感情を表現する。

▲提案手法で追加したそばかすとスマートフォンで読み取り、ARでその人の情報を提示している様子

ユーザー操作でそばかすを頬に浮かび上がらせ、それをスマートフォンで読み取り、情報をARでオーバーレイ表示する。顔認証の代わりに、そばかす認証としても使える。眉毛の上に皮膚パッチを装着し眉尻を持ち上げ、顔の表情の印象を操作することもできる。

▲プチ整形のように眉尻を持ち上げている様子

Source and Image Credits: Sijia Wang, Cathy Mengying Fang, Yiyao Yang, Kexin Lu, Maria Vlachostergiou, and Lining Yao. 2022. Morphace: An Integrated Approach for Designing Customizable and Transformative Facial Prosthetic Makeup. In Augmented Humans 2022 (AHs 2022). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 58–67. DOI:https://doi.org/10.1145/3519391.3519406

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