「1日、合計1分の激しい運動」で死亡リスクが約40%低下? 3千人以上を対象に調査【研究紹介】

2025年9月4日

山下 裕毅

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オーストラリアのシドニー大学などに所属する研究者らが発表した論文「Vigorous intermittent lifestyle physical activity (VILPA) and mortality risk among US adults: a wearables-based national cohort study」は、日常生活の中で行われる極めて短時間の高強度身体活動が、死亡リスクの大幅な低下と関連すると示した研究報告である。

1日10秒ほどの激しい運動を5、6回

2011年から2014年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いたこの研究は、構造的な運動を全く行わないと報告した3,293人の成人を対象に、手首装着型の活動量計で測定した1分以内の短い高強度活動(VILPA:Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity)と全死亡リスクとの関係を検証した。

研究対象者の平均年齢は50.7歳で、52.3%が女性、平均6.7年を追跡調査し、290件の死亡が確認された。VILPAと死亡リスクの関係を調査した結果、VILPAの頻度と持続時間の両方が死亡リスクの低下と有意に関連していた。

具体的には、1日あたり5.3回のVILPA実施は全死亡リスクを44%低下させ、1日あたり1.1分のVILPA実施は死亡するリスクが39%低下した。VILPAの一回あたりの持続時間はわずか10秒であり、極めて短時間の活動でも健康効果が得られることが示された。1日8回を超えると効果は緩やかになることも示された。

つまり、論文に基づいて考える場合、1日10秒ほどの激しい運動を1日に5~6回行うだけで死亡リスクが40%ほど下がり得るわけだ。

▲(A)VILPAの頻度と全死亡リスク:1日5.3回(中央値・黒丸)で死亡リスクが44%低下し、8回を超えると効果の増加が緩やかになることを示している。(B)VILPAの持続時間と全死亡リスク:1日1.1分(中央値・黒丸)で死亡リスクが39%低下し、2分を超えると効果の増加が緩やかになることを示している。

VILPAは傾斜や階段を上る、非常に速い歩行、短距離のランニング、家事中に重い荷物を運ぶ、子供と活発に遊ぶ、庭仕事をするなど、日常生活に組み込みやすい活動として特徴づけられる。従来の構造化された運動プログラムとは異なり、特別な時間や設備、施設を必要としない点で、時間不足、動機づけの欠如、施設へのアクセスの困難さなど、運動への一般的な障壁に直面している人々にとって実行可能な選択肢となる可能性がある。

Source and Image Credits: Nicholas A. Koemel, Matthew N. Ahmadi, Raaj Kishore Biswas, Cecilie Thøgersen-Ntoumani, Armando Texeira-Pinto, Clara K Chow, Jaroslaw Harezlak, Emmanuel Stamatakis. Vigorous intermittent lifestyle physical activity (VILPA) and mortality risk among US adults: a wearables-based national cohort study. medRxiv 2025.08.05.25333017; doi: https://doi.org/10.1101/2025.08.05.25333017

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