2025年3月5日
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米ヴァンダービルト大学医療センターなどに所属する研究者らが発表した論文「Sleep Trajectories and All-Cause Mortality Among Low-Income Adults」は、睡眠パターンの変化と死亡リスクの関連性を調査した研究報告である。
研究チームは、米国南東部12州から集められた参加者4万6,928人を対象に分析を行った。参加者の平均年齢は53歳で、65.4%が女性、63.3%が黒人、36.7%が白人であり、特に低所得層(47.5%が年収1万5,000ドル未満)が多く含まれている。
睡眠時間は、初回調査時と、5年後の追跡調査時に自己申告形式で収集され、短時間(7時間未満)、健康的(7〜9時間)、長時間(9時間超)の3カテゴリに分類された。
研究者らは、5年間にわたる参加者の睡眠時間カテゴリの変化に基づいて、これらの組み合わせから9種類の「睡眠軌跡」(睡眠時間の変化パターン)を定義した。例えば、「健康的→健康的」、「短時間→長時間」、「長時間→短時間」といったものである。
研究の結果、9種類の睡眠時間の変化パターンでは「健康的→健康的」(論文によると『最適』とされる睡眠軌跡)が1万5,781人で最も多かった。一方で、「最適」でない睡眠パターンをみていくと、「短時間→短時間」の9,486人が最も多く、「短時間→健康的」の7,878人、「健康的→短時間」の4,900人と続いた。
参加者の約3分の2(66.4%、3万1,147人)が5年の間に最適とされる睡眠時間(7〜9時間)を維持できていなかったことが示された。
また、健康的な睡眠時間を維持していた参加者に比べて、最適でない睡眠パターンの参加者は全死因における死亡リスクが最大で29%高かったことがわかった。
追跡期間中に1万3,579人の死亡が確認され、その中には心血管疾患による死亡が4,135件、がんによる死亡が3,067件、神経変性疾患による死亡が544件含まれていた。
特に「短時間→長時間」(29%の死亡リスク増加)や「長時間→短時間」(19%の死亡リスク増加)という睡眠時間が大きく変化したパターンで、高い死亡リスクが観察された。睡眠時間が大きく変動する生活パターンだと高リスクな可能性が示唆されている。
また「長時間→長時間」、つまり常に9時間以上の睡眠をとるパターンでも、同様に高いリスク(27%の死亡リスク増加)を示した。心血管疾患による死亡リスクだけみると、「長時間→短時間」(死亡リスクが32%増加)が高い数値を示した。
これらの関係性は、年齢、性別、教育レベル、婚姻状況、収入、雇用状況、喫煙、飲酒、食事の質、身体活動、座位時間、BMI、うつ症状、併存疾患などの要因を調整した後も統計的に有意であった。
さらに、研究では、年収が1万5,000ドル以上の層は1万5,000ドル未満の層より、最適でない睡眠パターンと死亡リスクの関連性が高い傾向が示された。性別による差は認められなかった。
Source and Image Credits: Full KM, Shi H, Lipworth L, Dauer LT, Mumma MT, Xiao Q. Sleep Trajectories and All-Cause Mortality Among Low-Income Adults. JAMA Netw Open. 2025;8(2):e2462117. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.62117
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