オープンワールドゲームは精神に良い? 『ゼルダの伝説BotW』など遊んだ大学院生を調査【研究紹介】

2024年12月25日

山下 裕毅

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英インペリアル・カレッジ・ロンドンなどに所属する研究者らが発表した論文「Open-World Games’ Affordance of Cognitive Escapism, Relaxation, and Mental Well-Being Among Postgraduate Students: Mixed Methods Study」は、オープンワールドゲームが精神的健康にどのような影響を与えるのかを調査した研究報告である。

研究では、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』など、広大かつインタラクティブな環境を特徴とするオープンワールドゲームをプレイしたことのある大学院生を対象とした調査を実施した。

▲『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」のオープンワールド

研究内容

実験1(最初の質的研究)では、17人の大学院生(女性9人、男性7人、性別非公表1人)に対して詳細なインタビューを行った。

結果、オープンワールドゲームには主に3つの効果があることが示された。1つ目は「認知的逃避」で、プレイヤーは日常のストレスや心配事から一時的に解放されることができたと示された。2つ目は「リラックス効果」で、身体的・精神的な緊張が和らぐことが報告された。3つ目は「精神的健康」で、人生の意味や目的の感覚が強まることが示された。

参加者からは「探索や放浪により、日々の心配事を忘れることができる」「ゲームをプレイしているときは、ストレスが軽減され、呼吸が楽になる」「健康で正気を保つには、ゲームをプレイして時間を過ごすのが、今のところ私の人生のやり方なのかもしれない」といった声が得られた。

実験2(定量研究)では、609人の大学院生を対象に質問紙調査を実施した。分析を通じて、オープンワールドゲームによる認知的逃避がリラックスを媒介して精神的健康に影響を与えることが示された。具体的には、認知的逃避からリラックスへの効果、およびリラックスから精神的健康への効果が統計的に有意であることが確認された。

▲「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」のワンシーン

実験3(2回目の質的研究)では、15人(女性6人、男性9人)に対して、より詳細なインタビューを行った。このインタビューは長時間に及び、特にオープンワールドゲームのどのような要素が効果をもたらしているのかを詳しく探ることを目的とした。

この最後のインタビューから、認知的現実逃避を促進する上での、オープンワールドゲームの4つの重要な特徴が特定された。

  1. 1.探索の感覚:自分のペースで新しい場所を発見できる自由さ
  2. 2.熟達感とスキル:課題を克服することで得られる成長の実感
  3. 3.ポジティビティ:ゲームが提供する前向きな物語体験
  4. 4.目的と意味:人生の意味を考えるきっかけとなる体験

参加者からは「外に出て地図を探索できる自由があるからこそ、自由で軽やかな気持ちになれる」「報酬も得られ、キャラクターが成長し、より多くを成し遂げ、それが頭の中を自由にして内から出るネガティブな感情を黙らせることができる」「励ましのメッセージ、開かれる道、探す価値のある道、そして進み続けるためのサポートなど、この前向きさがその日の後半にあると楽しみになり、一日を乗り切ることができる」といった具体的な証言が得られた。

研究評価

これらの3つの実験を通じて、オープンワールドゲームが単なる娯楽以上の効果を持つ可能性が科学的に示された。特に注目すべきは、ゲームによる認知的逃避が、リラックスを通じて精神的健康に良い影響を与えるというメカニズムが示唆された点である。

Source and Image Credits: Anto A, Basu A, Selim R, Foscht T, Eisingerich AB Open-World Games’ Affordance of Cognitive Escapism, Relaxation, and Mental Well-Being Among Postgraduate Students: Mixed Methods Study J Med Internet Res 2024;26:e63760 doi: 10.2196/63760 PMID: 39689301

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