子を持つエンジニアとして。父娘で過ごす、かけがえのない時間を大切にするためにつくった約束事とは

2024年4月16日

西谷圭介

国内SIerで金融系基幹システムの開発等に従事した後、クラウドサービスの開発ならびに新規事業立ち上げを経て2014年にアマゾンウェブサービスジャパン株式会社(現アマゾンウェブサービスジャパン合同会社)へ。国内企業のクラウドシステム設計支援を実施しつつ、日本におけるサーバーレス市場の創出と普及に尽力。プロトタイプ開発を行う部門の立ち上げに従事した後、2021年6月より現職。CTOとしてプロダクトを国内外に提供すべくすべてのレイヤで開発に従事している。フロントエンドが好きでインフラもそこそこわかるバックエンドエンジニア。
X(@Keisuke69)・ブログ

家庭を持ち、子どもがいる中で私がソフトウェアエンジニアとして仕事と日々の生活をどのように考え、どう過ごしているかについてつまびらかに綴ってきた本連載も今回が最終回です。これまでは、そもそも家庭を持ち子どもが生まれたことで仕事の環境がどう変わったか、そういう状況下において、ITエンジニアとしてのインプット/アウトプットを具体的にどう試みているか、そして家庭内での役割分担や転職に関して書いてきました。特に前回では、必ずしも私が家庭と仕事を完璧に両立できているわけではなく、恥ずかしながら妻の育児負担の比率が高いということもお伝えしました。一方で妻も仕事をしており、不定期に土日が仕事になることが多いというお話もさせていただきました。

そこで、最終回となる今回は、これまでの回とは少し趣向を変えて、ソフトウェアエンジニアとしてというより、一人の親として、妻の不在時に子どもたちとどう過ごしているかを紹介しつつ、子どもを持ったことで仕事や考え方にどういう変化があったかについてお伝えしていきたいと思います。

平日と土日祝日で役割分担をしている西谷家

まず、前提として我が家の環境について再度お話すると、私は都内のスタートアップ企業で取締役CTOとして仕事をしており、妻は自営業のような形でアクセサリーを製作する不定期な仕事をしています。ここで言う「不定期」というのは毎日働く時間帯が決まってるわけではない、ということです。加えて毎週というわけではありませんが、週末にはイベント等への出店を行うことも多く、平日だけではなく土日にもそれなりの頻度で発生することも多いです。

ちなみに私自身は取締役なので、基本的には勤務時間の概念はないですが、大体平日の8時くらいから仕事をして、夜の終業時間はまちまちです。仕事の都合上、海外との深夜のミーティングが発生することもままあります。

西谷家における土日祝日の父親の役割

さて、こういった状況ですが、前述の通り妻の仕事は平日だけでなく土日祝日にも入ることが多いです。土日のどちらか1日だけの場合もあれば、両日とも仕事になる場合もあります。妻の不在時は当然ながら私が子ども2人と一緒に過ごすわけですが、妻の仕事は会場への商品の搬入・搬出を伴います。その荷物も多いことから、基本的には車が必要になってきます。しかし、主に駐車スペースの問題で、我が家には車が一台しかないこと、また会場によっては駐車場代がとても高くついてしまうこと、そもそも搬入・搬出の作業が妻ひとりでは大変といった事情により、私が車を出して妻を会場まで送迎しているケースがほとんどです。

また、会場やイベント次第では出発が朝の7時前になることもあります。私が車で送迎するとなると、その間の子どもたちをどうするかというのが課題になります。大体、家から会場まで片道1時間前後なので、1回の送迎に往復2時間前後かかる計算です。長女は10歳(小4)なので一人で留守番することもできるかもしれませんが、次女は2歳です。考え方は家庭によると思いますが、私は2歳の子どもを10歳の子どもに預けて外出する気にはなれません。

父と娘2人、休日の過ごし方

というわけで、朝からもれなく子どもも連れて、一家で車に乗ってイベント会場に行くことになります。そして搬入が終わり次第、妻とは分かれて私は子どもを連れてどこかにそのまま車でお出かけすることが多いです。イベントによってはそのまま参加者として楽しむ場合もあります。会場が自宅から近い場合は、長女だけ自宅で留守番してもらい、次女を連れて妻を送りに行った後、一度帰宅することが多いです。どちらの場合も基本的にイベント終了のタイミングにあわせて妻を迎えに行き、合流した後に家族で外食して帰宅するというパターンが典型的な休日の過ごし方です。一度帰宅するパターンのときは昼食のみ自宅で私が用意をして取ることが多いです。

お出かけは子どもたちが楽しめるところ、かつ移動時間も含めて搬出時間(大体18時から19時くらい)に合わせて戻って来られるような範囲で探しています。ですが、二人の娘たちの年齢が少し離れていることもあり、二人とも満足できるようなお出かけ先を探すのがなかなか大変だったりします。例えばプールは二人とも楽しめていいのですが、次女がまだ入れないところも多い。遊園地も身長制限等あるため、やはり次女が乗り物にほとんど乗れず、親が一人だけで面倒を見ることの難しさを痛感する場面でもあります。

▲娘2人と過ごす父親の休日(西谷家ver. )

また、そもそも出かける先についてネタ切れを起こすという問題もありますが、そういうときは近場の公園でピクニックといったこともします。最近では質問に答えていくことで、おすすめのお出かけスポットを提示してくれるようなアプリを娘と一緒に使い、出かける先を探したりもしています。それ以外のいわゆる身の回りの世話や、食事を取らせたりといった部分での難しさは何もないと思っています。一番難しいのは長女に宿題をやらせることです(笑)

もちろん妻を送りに行った後に帰宅して自宅で過ごすというパターンもあります。しかし、やはり家にずっといると、長女は動画ばかり見てすごしがちですし(これが必ずしも悪いとは言いません)、次女は体力が有り余って退屈するということも多いので、なるだけ外出するようにはしています。

このような感じなので、妻が不在のときの日中は仕事などすることは難しいですし、本連載の第2回第3回でお伝えしたような隙間時間を使ったインプット・アウトプットもなかなか難しいと言えます。とはいえ、次女が昼寝をしているときは割と手が空くので、スマホ依存症なところもあり、ついつい見てしまったりはします。

妻が不在のときにはこのような感じで過ごしていますが、正直なところこれを他の人が見たときにどう思うかはわかりません。前述のように、普段の育児負担は妻のほうが高めであるので、分担という意味ではこれでも足りないくらいかもしれません。一方で、人によっては特に独身者の方からすると休日に自分の時間がないように思えるかもしれません。確かに独身時代や子どもが生まれる前は、当然ながら土日祝日において自分の時間も多かったですし、各種イベントにも足を運べていました。子どもをもったことで土日祝日の使い方が一番大きく独身時代と異なるところだと言えると思います。

子どもができてから守り続ける、自分の中の約束事

本連載の第2回目でも書きましたが、子どもが生まれてから「土日祝日の勉強会やカンファレンスには業務以外では行かない」と決めています。つまり、こういったイベントに参加者として行くことはほぼないです。参加者として行くことがあるのは、基本的に妻や子どもたちが友達と遊ぶなどの理由で不在となるときくらいです。これは妻と約束事として決めているのではなく、一人目の子どもが生まれてから自然と自分の中の約束事として生まれたものです。これらはインプットのための勉強やキャッチアップという文脈だけではなく、自分だけが参加するような飲み会に行くことやその他のイベントに参加するなどといった自分だけの予定を土日祝日に入れることは基本的にありません。

これが自分自身のキャリアというものだけを考えたときには、その可能性を狭めていると言えるでしょう。しかし、時間は有限です。さらに言うと自分が平均寿命くらいまで生きられるとして、この先の何十年かにおける可処分時間の中で子どもたちと過ごせる時期や時間には限りがあります。子どもはいつかは親から巣立つものです。もちろん親子の関係は基本的にずっと続くとは思いますし、そう願っています。でも、子どもの成長につれてその濃密さは徐々に薄れていきますし、そうあるべきだと考えています。

そういう意味では、生まれてからせいぜい10年ちょっとくらいしか親子が濃密な時間を共に過ごすことはできないでしょう。さらにその10年ちょっとの間でも実際にはお互い仕事や学校などがあるため、親子で一緒に過ごせるキラキラした時間はごくわずかなのです。僕はそれを大事にしたいと思い、休みの日の過ごし方が自然とこうなりました。

子どもファーストな暮らし方は想像もしていなかった

正直なところを言うと、子どもが生まれるまでは自分がそういった子ども優先の考えになるとは予想だにしていませんでしたというのも、もともとは子どもが苦手なこともあり、子どもがいる暮らしをあまり想像もしていませんでした。ですが、生まれてきた自分の子どもを見て、一緒に遊んでいると仕事に行きたくなくなるという思いを抱く父親は多いと思います。まさに自分もそうでして、そのときの気持ちを大事にしていきたいなと思っているのです。

実際のところ、休日にやりたいことも多々あります。そんなときは、できるだけ家族を誘うようにしています。普段は基本的に複数人や集団行動よりも一人行動を好むのですが、家族だけは別です。例えば私は音楽フェスへの参加やキャンプなども趣味なんですが、以前は一人で行っていたものの、子どもが生まれてからは家族で行くようになりました。キャンプは子どもが生まれてから始めた趣味ですが、これも家族で行くことを大前提にしているのでソロキャンプには行ったことがありません。そのうち機会があれば行ってみたいと思いつつ、行かないまま8年くらい経っています(笑)。

さて、全5回に渡って「子をもつソフトウェアエンジニア」として、家庭と仕事というものに対してどう向き合っているのか、エンジニア界隈でよく話題に上がり、多くの人が思い悩む技術面での勉強やキャッチアップといったものをどう工夫しているのか、具体的にお伝えしてきました。もちろんもっとすごいチャレンジや取り組みをしている人たちもいます。実際に自分の知人にも、同じように子どもがいながらも大学院に行ったり、中には博士号にチャレンジをしているような方々もいます。ですが私はそこまではなかなかできないのが本音です。多くの人は私と同じような感じなのではないかと思っています。

これまでありのままのお話をかなりしてきました。個別の事情に依るものも多かったと思いますので、これが皆さんの参考になっているのかは不安なところもありますが、もし少しでも参考になれば幸いです。

関連記事

人気記事

  • コピーしました

RSS
RSS