【新連載】西谷圭介が振り返る、育休なしで乗り切った娘2人の誕生と仕事の両立

2023年12月12日

西谷圭介

国内SIerで金融系基幹システムの開発等に従事した後、クラウドサービスの開発ならびに新規事業立ち上げを経て2014年にアマゾンウェブサービスジャパン株式会社(現アマゾンウェブサービスジャパン合同会社)へ。国内企業のクラウドシステム設計支援を実施しつつ、日本におけるサーバーレス市場の創出と普及に尽力。プロトタイプ開発を行う部門の立ち上げに従事した後、2021年6月より現職。CTOとしてプロダクトを国内外に提供すべくすべてのレイヤで開発に従事している。フロントエンドが好きでインフラもそこそこわかるバックエンドエンジニア。
X(@Keisuke69)・ブログ

初めまして、西谷と申します。

今回から数回にわたり、家族や子どもを持つソフトウェアエンジニアとしての日常やキャリアに対する考え方をお伝えさせていただくことになりました。

このテーマはIT業界のエンジニアの間ではよく話題になり、家庭を持つエンジニア、特に子どもがいるエンジニアの方なら共感する悩みが多いと思います。特に結婚や子どもが生まれるといったライフステージの変化によって独身時代とは異なる時間の使い方が必要になってきます。家族が増えることは何物にも代え難い喜びではあるものの、個人の時間が減るとも言えます。

そういった環境の中で、私がソフトウェアエンジニアとしてどう生き、仕事と家族とのバランスをどう取ってきたかを紹介します。当然、世の中には私よりももっと上手くやれている人もいるでしょうし、もっと努力している人も多いと思います。一例として私がどのように考えて過ごしているかをお伝えすることで、世の中には同じような悩みを持っている人が多くいることがわかって、安心できる人もいるのではないでしょうか。

さてこの1回目では、子どもができる前後の生活の変化や仕事への影響などについて話します。

我が家の家族構成と、夫婦の職業について

まず、話の前提として私自身をとりまく現在の環境について書いておきます。私は普段はソフトウェアエンジニアとして、あるスタートアップの取締役CTOとして働いています。取締役CTOといった偉そうな肩書ですが、シードステージのまだまだしがないスタートアップ企業なので、プロダクトの開発はもちろんのことビジネス的な部分や雑務も含めてなんでもやるというのが実情です。プライベートでは12年前に結婚をし、現在は妻と10歳(小学4年生)の長女、2歳2ヶ月の次女との4人暮らしです。

また、家族の状況についても書いておきます。妻は結婚後も働いており、長女が生まれて幼稚園に入るタイミングで専業主婦になりました。その後、ここ数年はアクセサリーを製作し、主に週末に催されるイベントなどで販売する仕事などをしています。つまり、どこかの企業に所属してフルタイムで勤めているというわけではなく、平日は変則的に働いていてさらに月に1回から2回ほど土日に仕事があるという状況です。また、時期によって多少の変動もあります。

▲西谷家の1日のタイムスケジュール(保育園のある日)
▲西谷家の1日のタイムスケジュール(保育園のない日)

そして、2人の娘についてですが長女は平日は学校があり、週2回の塾も含めて毎日何らかの習い事があります。一部の習い事は終わる時間が遅いため、お迎えが必要な状況です。次女は保育園に行っていますが、これは毎日ではなく週2回以上の通園で、妻の仕事の状況にあわせて変動します。そして娘2人は当然のことながら、土日祝日は休みで家にいます。次女はもちろんのこと、長女ももう小4ではありますが1人で出かけるといったことはほとんどありません。

長女・次女の誕生と育児休暇の取得

まずは最初の子どもが生まれた頃の話に遡りたいと思います。子どもが生まれるにあたっては、今だと男性でも育休を取得することも増えてきていると思いますが、自分の場合は取得していません。随分前のことなので記憶が定かではないところもありますが、そもそも当時勤めていた会社の規定上で、そういった休暇制度はなかったように思われます。

とはいえ、そういった事情でも全然休めないような職場だったかというとそんなことはなく、いよいよ妻の出産が近づいた日と、出産当日は有給休暇を取得しています。また、長女が生まれたタイミングから幸いなことに、暦の上では3連休だったこともあり、妻が新生児とともに退院するまでそのまま休みが続いていました。そのため、それ以上の休暇を取得することもなく、そのまま私は翌週から通常業務に戻っていました。ですので、子供の誕生が職場や業務に対して大きな影響をもたらすことはなかったと言えます。

正直なところ、当時はこれが当たり前だと思っていて、何も疑問に思わなかったのが実情です。ここ10年で父親の育児参加について、法的にもそれを後押しするような制度が拡充しつつあるものの、それでもまだ取得割合は少ないと聞きます。そのため、当時はそれが普通という認識でした。繰り返しになりますが、ここ数年で子どもの出産前後の父親に対する状況は随分改善されてきているとは思います。法的な制度、会社の制度、世間的な認識のそれらすべてが良い方向に改善されてきていると思いますが、それでも実際に男性の育休取得率はまだまだ低く、取得することで会社における立場が悪くなるなどといった話も時折、耳にします。

そういった社会の状況も変わりつつ、その間に私は2度の転職を経て、次女が誕生しました。次女は2021年という、コロナ禍の真っ最中に生まれました。そして私自身は、次女が生まれる2ヶ月前に現職のスタートアップへと職を移しており、キャリアや仕事を取り巻く状況も大きく変化していました。ここまでの話の流れから、次女の出生時は育児休暇を取得したと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、先に言ってしまうと、このときも育児休暇は取得していません。ただし、長女のときとは違い、熟慮した結果でした。

まず、私は取締役なので会社法上の役員ということになり、役員は労働者でないので労働基準法や育児・介護休業法などの対象外であるという事情もあります。しかし、それ以上に当時、会社としては代表と私の2人しかいないという状況が一番大きかったといえます。2人のうち1人が長期間休むことは大きな影響があるんですね。これは自分自身としても避けたいことでした。

一方で先述した通り、役員は労働基準法が適用されないことから、会社としての目安は一応あるものの勤務時間も定まっていません(ちなみに役員の場合、法的には有給休暇も付与されません)。そして当時はコロナ禍の真っ只中であり、日本全国が自粛ムードで仕事もすべて自宅で行っていたという状況でした。

つまり、役員であることから働く時間が制限されないこと、常に自宅で仕事をしている状況であること、会社の状況を鑑みて妻と相談をした結果、育児休暇を取らずに乗り切ることにしたのです。なお、代表からは取得することを打診されたことを付け加えておきます。

次女の誕生に際してはフルリモートワークが功を奏した

というわけで、次女が生まれるときには育児休暇を取得せずに臨んだので、そのときの実際の状況についてお伝えしたいと思います。まず、妻は無痛分娩を選択していたため、出産日が予め決まっていました。その出産日の一週間前から妻は入院するわけですが、時期的に当時、小2の長女は絶賛夏休み中でした。ただし、そういった事情もあり日中はキッズスクールに行ってもらい、私は昼間の稼働時間を確保していました。毎日、朝にお弁当を作ってあげる程度で、昼ごはんの用意もしなくてよかったのはラッキーだったと言えます。

したがって、娘を送り出してから夕方に帰ってくるまでは自宅に私1人なので、何の問題もなくミーティングも含めて仕事ができる状況でした。また、普段は何もせずわがまま放題な娘も、このときはいろいろと頑張ってくれたのも大きな助けとなりました。

しかし、その後は新型コロナの影響で学校は休校。再開日が予定日から延びて、その月いっぱい休校になってしまったことには絶望しましたし、妻の産後の容態が少し思わしくなくて、予定通り退院できなかったということもありましたが、幸い大事には至らず程なく退院できたので大きな問題にはなりませんでした。また、長女の学校は夏休みが延長になってしまったものの、午前中だけ緊急受入というのをやってくれており、キッズスクールも利用可能ということで仕事を抱える身にとっては、とても助かったことを覚えています。

そんなこんなはあったものの、妻も退院して娘の学校も始まり、家族が1人増えた生活が始まるわけですが、自分は育児休暇を取っていないこともあり、基本的に日中と夜中の時間帯に仕事をするという生活をしていました。フルリモートワークだったため、片道1時間弱の通勤がないことも有利に働いたといえます。

コロナ禍の時期ではあったものの、いくつかの勉強会や技術カンファレンスにお声がけいただいたこともあり、登壇もしていました。これが可能だったのは、やはりコロナ禍ということで、すべてリモートで開催される状況だったというのは大きいです。加えて、この時期をなんとか乗り切れたのはやはり、時間に縛られない働き方ができることも大きかったといえます。とはいえ完全に休暇を取得できている場合と比較すると妻に負担をかけていたであろうことは想像に難くありません。

子どもの誕生で、仕事への影響は……

私の場合、子どもが生まれるまで、妻と2人で生活していた時期は2年ほどです。結婚することで家族となるわけですが、実際のところ子どもが生まれるまでは独身時代と時間の使い方や過ごし方は変わっていませんでした。仕事の仕方なども結婚前と変わることはなかったです。

次女の誕生前後では生活スタイルの大きな変化はあまりありませんでした。やはり一番変化が大きかったのは、長女の誕生時でした。このときは当然のことながら、人生で初めての子どもでしたし、子どもの世話にどれだけ手間がかかるかもわかっていなかったのです。子どもがこちらの都合に合わせて思い通りに行動してくれるなんて、全くないことを知りました。

そして、これがその後のエンジニア共通の悩みへと繋がっていくのです。子どもと一緒に過ごせる時間は限られています。わかってはいるけれども、エンジニアとして成長したいという気持ちとの狭間で揺れ動く生活が始まる言えるでしょう。

育児しながら、学ぶ時間をどう確保するか

こういった状況で日々過ごしているわけですが、ここで課題となってくるのが「エンジニアとしての技術キャッチアップのための時間確保をどうするか」です。これはネットやX(旧Twitter)などでもたびたび話題になるトピックです。ITやソフトウェアの世界は日進月歩ということもあり、エンジニアとしてキャリアを積むことを考えると、多かれ少なかれその時々の技術トレンドにあわせて勉強することが必要になってくると考えています。

もちろん勉強をしなくても生きていけるという人もいるでしょうが、私はキャリアを成長させていくという観点では必要だという考えです。また、このキャッチアップについても大きく2種類あります。1つは実業務で直接的に必要な技術を学ぶケース、もう1つは必ずしもそのときの実業務では必要にはなっていないが自身の成長のため、今後のキャリアのために新しい技術を学ぶケースです。前者については業務時間内で行うことも許されることが多いかと思われますが、後者についてはなかなかそうはいかない人が多いのではないでしょうか。そうすると必然的にプライベートな時間を使っていくことになるわけです。

この時間の使い方が、家族ができることによって大きく変わると感じています。そこで次回は、私が行っている勉強時間の捻出の仕方や勉強方法について解説します。もちろん家族によってそれぞれ事情は異なるとは思うので、あくまでも一例として見ていただけると幸いです。

関連記事

人気記事

  • コピーしました

RSS
RSS