2024年4月11日
フロントエンドエンジニア
九州大学芸術工学部音響設計学科卒業。現在はUbie株式会社に勤務している。とくにTypeScript・CSSが好きで、暇があればコードを書いている。勉強会・技術SNS・Twitterなどで積極的に技術情報を発信中。
CSS Nite 2017〜2019ベストセッション受賞。
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「アウトプットをしたいがモチベーションが上がらない」というのは、アウトプットをする上でのよくある悩みです。炎上が怖かったり、時間が取れなかったり、ダラダラしていたかったりなど、理由もさまざまあることでしょう。
私もアウトプットを始めた当初は、そういったモチベーション低下に大いに悩まされましたが、今ではコンスタントに技術記事執筆、社内外勉強会登壇、技術講師業、書籍執筆、雑誌の寄稿等のアウトプットを続けられています。本記事で、私がどのようにモチベーションと向き合い、解決してきたかを紹介します。
アウトプットをすることは人生において必要なことではありません。しかし、私はアウトプットをすることで、新しい仕事の獲得、書籍の出版、新しい仕事仲間の出会い、家族親族の笑顔を手に入れ、人生が大きく好転しました。本記事を読まれているということは、少なからずアウトプットをしたいと考えていらっしゃる方かと思いますので、少しでもヒントになれば幸いです。
アウトプットを実施するためには、まずアウトプットでどんなメリットが得られるのかを理解することが重要です。多くのメリットがありますが、特に私が嬉しかったメリットを紹介します。
第一回の記事「アウトプットこそ最高のインプット。鹿野壮が語る「自分が一番トクする」アウトプットの力」でも紹介しましたが、アウトプットで一番トクをするのは自分自身です。
何かの技術を理解したいとき、一番理解度が上がるのは人に教える(=アウトプットをするとき)ときです。「ラーニングピラミッド」という考え方としてよく知られていますね。
人に教える(アウトプットする)には、自分自身がその内容について理解していなければなりません。また、人に伝えようとするとき、言葉が詰まったりうまく説明できない箇所は、それは自分が理解していない箇所だと特定できます。その理解できていない箇所を理解できるようになるまで学習することにより、知識の向上と定着が見込めます。
アウトプットをすると、さまざまなフィードバックが得られます。記事や登壇スライドなどのアウトプット資料をつくっているときと、アウトプットを公開した後の2つのタイミングで有効なフィードバックを得られます。
アウトプット資料をつくるとき、私はよく周りからフィードバックをもらいます。エンジニアやクリエイターの仲間、会社の同僚、編集者、そしてChatGPT に代表されるAIです。自分の理解が浅かったところの知識が補強されたり、勘違いして覚えていた内容が訂正されたり、全く新しい視点での知識を得られたりと、メリットが多いです。また、「デザイナーからデザインのフィードバックをもらう」「編集者から文章を校閲してもらう」といった、違う分野の方々からのフィードバックも、自分の知識を大きく飛躍させてくれます。
アウトプットを公開した後は、その視聴者からフィードバックをもらえます。つくっているときには気づけなかった視点、関連する知識、最新の知識、よりわかりやすい解説など、フィードバックを通してさまざまな知識が得られます。
私はアウトプットを始めて以来、記事や登壇を見た人から、新しく登壇や書籍の執筆、社外講師等の誘いを受けるようになりました。また、企業から転職や業務委託のオファーが来たり、転職時の面接でのアピールポイントにもなりました。会社の面接を受けに来た候補者からは、「鹿野さんの記事を読みました」と言われることもよくあり、会社のプレゼンス向上に役立っていることも感じます。
おもしろかったのは、私が家を売却したときです。その買い主がなんと私の記事の読者で、商談時にはその話で大いに盛り上がりました。
私はフロントエンド領域を得意としていますが、親や親戚に自分がどんなことをやっているのかを説明しても、理解された試しがありません笑。しかし、「本を出した」「1,400人の前で登壇をした」「企業研修をした」「インタビューされた」といった内容であれば、「なんかすごかこつばやりよるとね!」と喜んでくれます。その喜びを見ていると、アウトプットをしていてよかったなという感情になります。今でも実家に帰ると母親が嬉しそうに私の書籍や寄稿した雑誌を家に飾っています。
アウトプットをしたい気持ちがあるのに、モチベーションがわかない理由はさまざまあるでしょう。
私はとくにアウトプット初期は「炎上が怖い」という気持ちが強く、現在は「記事を書くよりダラダラしていたい」という気持ちが勝ってしまっています(笑)。
そんなとき、どのように乗り越えているかについて紹介します。アウトプットにフォーカスしていますが、これに限らず人生のさまざまな場面(勉強・読書・筋トレ等)で使っている内容です。
私は、アウトプットをしたいがモチベーションが上がらなくなったとき、アウトプットをしたくない理由を紙に書き出しています。たとえば「炎上が怖い」などです。不安は可視化しないと、際限なく膨らんでしまうものです。書き出してみると、悩みは意外に少ないことに気づきます。
アウトプットをしたくない理由それぞれに対して、その対策や解決策を書きます。「炎上が怖い」という理由があれば、「顔も名前も知らない人に何かを言われたところで、何も困らない」といった具合にです。
その後に、なぜアウトプットするのか、ひいては自分がどこを目指しているのかを書き出します。私の場合は、「 技術の理解が深まる」「新しい仕事に繋がり、美味しいものを食べられる」「妻と家族が喜ぶ」などです。
スマートフォンやPCのメモ帳でもいいですが、手を動かして紙に書く方が脳が整理されるので個人的にはオススメです。
アウトプットに限らず言えることですが、何かをやろうとしたときにそれを実行できないのは、やらない理由の方が自分にとっては重要度が高いからです。『神モチベーション(星渉著、SBクリエイティブ)』の考え方や手法を自分なりに取り入れたところ、モチベーションをコントロールしやすくなったので紹介します。
何か「アウトプットをしたい」という気持ちがあるときに、アウトプットせずにダラダラスマートフォンを見ていたとします。この場合、「アウトプットをしたい」という気持ちと、「ダラダラしたい」という気持ちを天秤にかけたとき、「ダラダラしたい」という気持ちの方が強いため、天秤が傾きダラダラしてしまいます。
アウトプットをする方向へ天秤を傾けるには、アウトプットに対する「重み付け」をするのです。重み付けとは、「アウトプットをすることでどんないいことがあるのか」や、「アウトプットをすることで将来自分は何を手に入れたいのか?」といったことです。私の場合だと、「アウトプットをすればより知識が深まる」「実績が積み上がって将来の新しい仕事に繋げる」「母親に見せびらかして自慢できる」「所属企業のプレゼンスが上がる」といったことが重み付けとなります。
気合いや根性といったものでは天秤は傾きません。「これを通してどんな旨みがあるのか?」を整理することで天秤が傾き、行動に移せるようになるのです。
私はたまに、全ての予定を擲(なげう)って記事を書き上げるときがあります。しない理由が全て吹き飛ぶほどのワクワクするアウトプットです。
コンテナクエリ @container が全ブラウザ対応。新時代のレスポンシブ対応を完全理解する
TypeScript 5.5で型述語を推論できて最高。配列のfilterも型安全に
いずれも最新のフロントエンド技術を取り扱ったものですが、情報を知った瞬間に次のようなポジティブな興奮が爆発しました。
興奮が爆発すると、情報を更に深く追求し、実際にコードを試して、自分の頭でメリット・デメリットを理解し、アウトプットとしてまとめ上げるまでを半自動的に行えます。アウトプットを妨げる理由は全て吹き飛ばされるのです。
毎回こういった体験ができるわけではないのですが、やはりポジティブな興奮を伴ったアウトプットは楽しいものです。普段の仕事が重要で、よりよい改善策がないかを日々試行錯誤したり、新しい情報にアンテナを張っておくことで、天秤を覆すアウトプットができるのだと思います。
本記事を読んでくださっているということは、多かれ少なかれアウトプットをしたいと思っていらっしゃるのではないでしょうか? 自発的にそう感じているのかもしれませんし、会社から求められているのかもしれません。最初はアウトプットのハードルが高く感じるかもしれませんが、今回紹介したように、アウトプットのメリットを理解し、自分のなかで何が課題なのか、何を得たいのかを明確にして天秤を傾けることで、アウトプットがきっとできるようになります。
努力して出したアウトプットは、PVが少なかろうが、炎上しようが、短かろうが、クオリティが低かろうが、あなた自身がそのアウトプットを自分で認めてあげる限り、誰にも否定されるものではありません。そして、そのアウトプットに助けられる人が必ずいます。ぜひ勇気を出して、あなたにしかできないアウトプットが世の中に出ることをお待ちしています。
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