【新連載】アウトプットこそ最高のインプット。鹿野壮が語る「自分が一番トクする」アウトプットの力

2023年10月31日

フロントエンドエンジニア

鹿野 壮

九州大学芸術工学部音響設計学科卒業。現在はUbie株式会社に勤務している。とくにTypeScript・CSSが好きで、暇があればコードを書いている。勉強会・技術SNS・Twitterなどで積極的に技術情報を発信中。
CSS Nite 2017〜2019ベストセッション受賞。
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こんにちは、フロントエンドエンジニアの鹿野壮(かのたけし)といいます。

業務では、フロントエンドエンジニアとしてUIをつくりつつ、チームリーダーとしてマネジメントを行っています。

業務の傍ら、技術記事の発信や書籍の執筆、イベント登壇やセミナー講師としてスライド資料の作成等、さまざまなアウトプットを行ってきました。

そんな背景から度々、アウトプットに悩むエンジニアから相談を受けるようになっています。

  • ・アウトプットをしたいが、社内外のイベント登壇で発表するのが憂鬱。スライド作成も説明もできれば逃げたい
  • ・炎上が怖くて自分のX(旧Twitter)やblogでの技術発信にためらいがある

私もアウトプットを始めたてのころは、同じように悩み、苦しみを抱えていました。

今回は、私がどのように技術発信をするようになったか、そしてどうやってアウトプットの悩みを克服していったかを、数回のコラムに分けて共有します。技術発信をしていきたいITエンジニアやデザイナーの方々が、「そういう方法もあるのか」という参考になれば幸いです。

第一回目の今回は、私のエンジニア人生とどんな経緯で「アウトプット大好き人間」になったのかについて紹介します。

これまでの技術発信

社外への技術発信を始めて約8年経ちますが、次のような発信を行ってきました。

気になるアウトプットがある方は、ぜひ公式サイトからご覧ください。

勉強会では、ウェブ制作に関わる方のためのセミナーイベント「CSS Nite」で2017〜2019年にベストセッションの一人に選ばれたり、単独の登壇で最大で1,400人集めるなどしてきました。

アウトプットをする度に感じるのが、外に公表する・しないに関わらず、アウトプットこそが最高のインプットであるということです。

▲中学生の初めてのホームページづくりで参考した図書

物をつくる楽しさを体感した学生時代

私は福岡県の田舎で生まれました。中学生のとき、祖父がパソコンを買ってきたので、それを使わせてもらっていました。当時は「ホームページを自分でつくる」ということが流行っていたので、私もホームページを自分でつくってみました。「HTMLタグ辞典」(翔泳社)を購入し、HTML・CSSのコードを見様見真似で書きながら、無料のレンタルサーバーに契約し、自分のホームページを公開しました。「自分の書いた通りに画面がつくられ、動く」ということが、子供心に楽しかったことを覚えています。

大学は、地元福岡の「九州大学芸術工学部音響設計コース」に行きました。「どうせなら少しでも興味のあること、楽しいことをしたい」と考え、「音楽が好きだから」という至極単純な理由で音響設計学科に入学しました。「音響設計学科」なので音のことも学びましたが、一番興味深かったのはメディアアートの研究室でした。卒業研究では、Max/MSPという技術を使い、人の顔が音に合わせて動き回るインタラクションをつくりました。子供の時と同じく、「自分の書いたコードでアニメーションをするのが面白い」と感じていました。

就職先をどうしようかと考えていたとき、プロフェッショナル・仕事の流儀「ワンクリックで世界を驚かせ ウェブデザイナー・中村勇吾」を見ました。

中村勇吾さんが、作品を納得行くまでつくり込み、そしてそれを楽しんでいる姿に感銘を受けました。「楽しいことを仕事にしたい」「ものをつくることを仕事にしたい」と強く思うようになり、中村勇吾さんが当時使っていたFlashを扱えるウェブ業界に入ることにしました。

Flashを仕事にしようと思い、学割でAdobe FlashのソフトとFlashの入門書籍を買いました。本を読みながら、書いてあるコードを実際に自分で手を動かしてみて、動かなければ「なぜ動かないのか?」を考え、コードの内容を自分の言葉で説明できるようになるまで勉強していました。

新人時代にゼロから知識を身につけるまで

Flashをやりたくてウェブ業界に入ったものの、世の中ではスマートフォンが主流になっていました。私は主にHTML・CSS・jQueryを使って、次のような仕事をしていました。

  • ・リッチなランディングページ(LP)の作成
  • ・レスポンシブ対応したコーポレートサイトの作成
  • ・Flashでつくられたコンテンツを、jQueryだけで実現する

HTML・CSSは中学で少し触ったものの、所詮は素人知識。開発の現場で使えるように、こちらも書籍を買って勉強しました。jQueryについては、当時評判が高かった西畑一馬さんの『jQueryデザイン入門』で勉強しました。Flashのときと同様、書いてあるコードを実際に自分で手を動かしてみて、動かなければなぜ動かないのか?を考え、コードの内容を自分の言葉で説明できるようになるまで勉強していました。

この本は大変わかりやすく、ボロボロになるまで読み込みました。おかげで、自分の書きたいコードをjQueryでほぼ100%表現できるようになりました。私がいまフロントエンドエンジニアとして生きていけるのは、この本のおかげだと言っても過言ではありません。

当時は、時代の背景もあり、短納期でつくらなければならないことも多く、泊りがけになることもしょっちゅうでした。しかし、短納期でたくさんのものをつくるという体験は、「楽しいことを仕事にしたい」「ものをつくることを仕事にしたい」という私の目的に合致するものであり、楽しい時間でした。この結果、新人時代が、今の開発の原動力になっていると思います。

数々の素晴らしい書籍と開発経験のおかげで知識が増えた結果、その知識を社内勉強会という形で展開することになりました。メンバーとは仲がよかったので、温かく見守られながら勉強会を開催できました。

そこで学んだのは、人に教えようとすると、自分自身が一番内容について理解できるということでした。

転職とアウトプットの開始

新しいチャレンジをしようと転職した先の会社は、アウトプットに強みを持っている会社でした。会社のサポートを受けながら、初めて技術記事の執筆や、社外勉強会での登壇をしました。登壇は特に緊張するもので、初めて登壇したときは、喋るセリフを一字一句メモ帳に書いて、全部読み上げていました。初めてのアウトプットについては、次回のコラムで詳しく解説します。

▲はじめてのアウトプットとなった勉強会の様子

技術記事や登壇の回数を重ねるうちに、記事や登壇を見た人から、新しく登壇や書籍の執筆、社外講師等の誘いを受けるようになりました。アウトプットがアウトプットを呼ぶ状態になったのです。それは今現在も続いていて、社外アウトプットの殆どは、私のアウトプットを見てくれた人からお誘いがあって始まったものです。

マネージャー業務の開始とアウトプット

現在の会社では、ある開発部の副部長兼開発チームのリーダーとして活動しています。目標設定や評価、1on1、採用といったピープルマネジメントの仕事が増えましたが、常に開発の現場にいたいので、基本的には毎日コードを書いています。ワークライフバランスが難しいところではありますが、プライベートでのアウトプットは欠かさないようにしています。それは常に最新の情報をキャッチアップでき、開発効率のよい手法を現場に持ち込めるためです。

アウトプットは基本的には会社としてではなく、個人で実施することが多いです。なので、準備は業務中ではなく、プライベートの時間に行っています。「業務」ではなく「趣味」として実施することで、“楽しく・モチベーション高く・自由にアウトプット”ができています。

▲TechFeed Experts Night#26 で行った登壇発表「CSS Subgridが遂に全ブラウザ対応。新時代のグリッドデザインを学ぼう」

このように、趣味でやっているアウトプットですが、業務でも役立つことがよくありました。例えば、アウトプットで紹介した内容を、開発メンバーへ展開できるケースです。また、エンジニアの採用では、私のアウトプットを見てくれた人が面接に来てくれて、アイスブレイクにつながることが多くありました。

楽しいばかりではない。アウトプットをする苦しさ

アウトプットでは、苦しいこともよくあります。技術記事にせよ、登壇にせよ、アウトプットをするときは色々なことを考え抜きます。

  • ・内容は正しいか?
  • ・もっとわかりやすい説明はないか?
  • ・想定している読者層にマッチしているか?

また、せっかくお金や時間を支払って登壇を見に来てくれるので、「ひとつでもいいから必ず何かを持って帰ってほしい」という思いがずっとあります。ですので、アウトプットする内容は何度も見返し、ギリギリまでブラッシュアップしています。

結果、大きなストレスがかかり、アウトプットから逃げ出したいという思いに駆られることがよくあります。しかし、アウトプットが終わると、大きな達成感を感じます。

次の図は、私の登壇に感じている気持ちを表したものですが、毎回次のように気持ちが変化します。

こういった気持ちを毎回乗り越えることで、「もっとアウトプットしよう」というモチベーションが芽生えてくるのです。

アウトプットで一番トクをするのは自分自身

個人的な実感として、技術の理解に効果があるのは、次の順序です。数字が上がるほど、効果が高くなるように感じています。

  • ・本を読む
  • ・本を読みながら実際に手を動かして練習する
  • ・開発の現場で使う
  • ・人に教える(=アウトプット)

人に教えるためには、まずは自分自身がその内容について深く理解し、あらゆるユースケースを乗り越えられるだけの知見を持っている必要があります人に教えているようでいて、実は知見を貯められて自分自身が一番トクをしているのです。

怖いのは誰でも一緒です。まずは一歩踏み出し、自分自身の大きな成長に繋げましょう

次回は、初めての技術発信のエピソードについて紹介します。

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