2024年1月17日
フロントエンドエンジニア
九州大学芸術工学部音響設計学科卒業。現在はUbie株式会社に勤務している。とくにTypeScript・CSSが好きで、暇があればコードを書いている。勉強会・技術SNS・Twitterなどで積極的に技術情報を発信中。
CSS Nite 2017〜2019ベストセッション受賞。
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アウトプットをするときの悩みとしてよく聞くのが、アウトプットをしたいが「マサカリ」が怖くてできない、ということです。
私自身も、アウトプットを始めたころは、そういった「マサカリ」に対して悩み、アウトプットや人間関係自体が怖くなることがありました。今でも「マサカリ」は怖いですが、アウトプットの品質や「マサカリ」に対する自分の心構え、そして肉体を見直すことにより、今では「マサカリ」の恐怖を克服してアウトプットができるようになりました。
この記事を通して筆者が実践する「マサカリ」との向き合い方を伝えることで、読者の皆さんにとってたくさんの面白いアウトプットを生み出してくださるきっかけになれば幸いです。
IT業界でいう「マサカリ」や「マサカリを投げる」とは、鋭い技術的な指摘やツッコミの意味で使われていることが多いようです。正式な用法ではなく、ネットスラングであり、ここ10年ほどで使われるようになった言葉のようです。
参考記事: マサカリの起源について #ポエム – Qiita
本記事でも「マサカリ」は「鋭い技術的な指摘やツッコミ」という意味で使います。図は筆者が作成した「マサカリ」のCSSアニメーション です。
アウトプットを続ける以上、マサカリが来ることは避けられません。しかし、マサカリが来づらいアウトプットになるよう、努力することは可能です。
私の場合は、具体的に次のようなことを行っています。
アウトプットの受け手が望んでいるのは、発信者の主観や思いではなく、正しい情報です。紹介している技術の根拠を示すため、技術仕様書や開発者のブログといった一次情報をできるだけもれなく記載するようにしています。図は筆者が記事「CSSのSubgridが全ブラウザ対応。Gridの入れ子の基本から応用までを完全理解する」に記載した一次情報。
攻撃的な表現や煽りをしてしまうと、受け手の感情的で攻撃的なマサカリを誘発してしまいます。結果、発信者も感情的に言い返したり反応したりして、せっかくのいいアウトプットも台無しになり、誰も得をしない結果になります。
確かに、あえて人の感情を煽るようなタイトルを冠してview数を稼ぐ手法もあります。しかし、ネガティブな感情がネガティブな感情を呼び、どんどん疲弊していくので私はやらないようにしています。
地道なことですが、「本当にこのアウトプットは正しいのか?」を時間をかけて何度も見直しています。コードを紹介している場合は、そのコードが本当に正しく動くかどうかを、実際に動かして見ることも大切です。推敲方法については、後ほど詳しく解説します。
完璧なアウトプットなどないし、どんな表現をしたとしてもマサカリは飛んでくるときは飛んできます。正しくてわかりやすいアウトプットを行うために最大限の努力をしたら、後はもう開き直るようにしています。
私はアウトプットを公開する前に、ChatGPTを活用して内容の正確性をチェックします。
技術記事の場合は、内容をそのままChatGPTに貼り付けて、レビューしてもらいます。例えば次のようなメッセージを送ります。
この内容について、レビューしてほしい。次の観点で。
・誤ったことを言っていたら、指摘してください
・誤字脱字があったら、指摘してください
・よりわかりやすい内容があったら、指摘してください
・全体的に、レビューしてください
すると、ChatGPTが誤字脱字のチェックや情報の正確性をチェックしてくれます。
私は、講義や勉強会のスライドを、PowerPointやKeynoteではなく、markdownでつくってスライド化するようにしています。使っているのは「Marp」というツールです。
Markdownを使ってスライドをつくることのメリットは、次の点です。
アウトプット内容の正確性のチェックに使っているのはもちろんChatGPT。マークダウンの内容をそのままChatGPTにコピペすれば、技術記事と同じく内容の正確性のチェックやレビューをしてくれます。
完璧なアウトプットなどないし、どんな表現をしたとしてもマサカリは飛んでくるときは飛んできます。
私は自分のアウトプットに対して指摘を受けたとき、その指摘が正しければ、謙虚に受け止め、技術記事を訂正したり、登壇資料の補足を発信します。指摘した人に感謝をすることも忘れないようにします。
大切なのは、マサカリを受けたときの「自分の反応」です。鋭い指摘を受けたとき、その鋭い言葉であったり、自分の間違いを指摘されたことの恥ずかしさであったりで、「一時的に」ネガティブな思いを持ってしまうこともあるでしょう。しかし、その負の感情を持ち続けたり、執着したり、反応してしまわないことが大事です。
私が人生のバイブルとしている本に、『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』(草薙龍瞬著・KADOKAWA/中経出版)という本があります。「怒りや苦しみは、反応すればするほど大きくなってしまう。妄想にとらわれず、目の前の現実をありのままに受け止め、集中することが大切」ということをこの本から学びました。
気をつけなければならないのは、マサカリのフリをした悪意のある攻撃です。一見すると正しいことを指摘しているように見えて、実は攻撃したいだけの人がいます。
一例として、私は次のような内容を言われたことがあります。
そもそも私は技術発信を始めるまで、「マサカリ」「エアリプ」といった文化を知らず、初めて受けたときはびっくりし、ショックを受けました。
若かりし頃はこういったことに心を痛め、アウトプットが怖くなっていましたが、今ではほとんど反応しなくなりました。次のような施策をしたからです。
技術発信に関係なく、悪意ある攻撃をしてくる人はどうしてもいます。そういった人は、その人自身がビジネスコミュニケーションの面で問題を抱えていますので、我々が反論したところで変わることはあり得ません。相手が変わることに期待するのは辞めましょう。
私は、そういった悪意ある攻撃をしてくるような人を、自分の視界に入らないようにしています。反応してしまうと、そこからネガティブな思いが連鎖してしまうからです。具体的には、SNSでミュート or ブロックする、その人の情報がインターネットで出てこないようにするなどです。
SNSならミュート機能を使っています。また、Google Chromeの拡張機能「uBlacklist」を使って、攻撃者の情報がGoogleの検索結果に出てこないようにしています。
・uBlacklist(Chrome)
・uBlacklist(Firefox)
体を鍛えると心も強くなります。コロナ禍から始めた筋トレは、体力の向上や集中力の向上、メンタルの安定、ストレスの解消、快眠につながるので、いいことしかありません。「いざとなれば相手を直接腕力で制圧できる」という自信もつきました。
実際、私は攻撃をしてきた人を勉強会で見かけたことがあるのですが、とくにネガティブな感情になることはありませんでした。視界から入らないようにして距離を置いているためその人に関心がなくなっていますし、筋トレのおかげでメンタルが安定しているためです。
アウトプットでよく聞く悩みである「マサカリが怖い」という気持ちには共感します。私もこれまで多くアウトプットをしてきましたが、未だにマサカリが怖いと思ってしまいます。
しかし、マサカリが怖いからといって、アウトプットをしないのはもったいないです。アウトプットをすることで、自分自身や読者・視聴者の知見の向上に繋がりますし、そのアウトプットを通して助けられる人がたくさんいます。
本記事では、私のマサカリに対する心構えやマサカリ対策のためにやっていること、そしてマサカリに見せかけた攻撃への対処法を紹介してきました。少しでも使えそうな内容があればぜひ取り入れていただき、あなたの素晴らしいアウトプットが世に出ることを願います。
次回はイベント登壇の資料作りとトークの技術について話します。
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