Notionユーザーに学ぶハイブリッドワークの課題とベストプラクティス【イベントレポート】

2021年12月10日

Notion Labs, Inc ゼネラルマネジャー 日本担当

西 勝清

大学卒業後、シスコシステムズへ入社。2012年 LinkedIn Japanに立ち上げメンバーとして入社後、人事向け法人営業部門を統括し、日本国内でのユーザー及び顧客層拡大に貢献。2019年WeWork Japanに入社し、営業シニアディレクターとして戦略と組織を構築。日本発の製品を開発し、事業拡大を牽引。2020年9月より日本1号社員としてNotionに入社。現在は日本代表として、営業・マーケティング活動を始めビジネスオペレーション全般を担当。Wiki、ノート、ドキュメント管理、プロジェクトマネジメント全てをオールインワンで行え、かつ柔軟性の高いツールで企業がより高い生産性を実現することをサポートしている。

最新のテックカンファレンス現場をレポートする本シリーズ。「変わる働き方とカルチャー、変えるテクノロジー」がテーマのカンファレンス、BIT VALLEY 2021。11月24日に開催された#07 Guide to Work From Anywhere 『WFA環境の整え方』から、Notion Labs, Inc 西勝清さんのトークセッション「ハイブリッドワークにおける課題とベストプラクティス -情報共有とツールの観点から-」の内容を抜粋してご紹介します。

リモートワーク・ハイブリッドワークにおける3つの課題

Notion Labs, Inc ゼネラルマネジャー・日本担当の西勝清と申します。Notionはサンフランシスコに本社を置くスタートアップで、チームウィキやプロジェクト管理、ドキュメント管理などをオールインワンで行うオールインワンワークスペース「Notion」を世界2000万人以上に提供しています。

本日はNotionユーザーにヒアリングした内容をもとに、リモートワーク・ハイブリッドワークにおける3つの課題それらを解決するベストプラクティス、そして今日から実践できることをご紹介していきます。

では早速、現状の課題整理から始めましょう。リモートワーク・ハイブリッドワークにおける一つ目の課題は、「多すぎるツール、散らばった情報」です。

▲情報疎通をより円滑化するためにツールを導入したのだが、いつのまにか壁に

皆さんは人と情報を共有するために、何個のアプリケーションを使用していますか? 機能ごとに、文章管理ツールやWikiツール、タスク管理ツール、メール、チャット、ビデオ会議ツール。さらにチームを跨ぐと、同じ機能でも違うツールを使っていることはよくあります。

ツールがバラバラだと、情報もバラバラになります。情報を探すのに時間がかかったり、開発から販売までの部門間の情報連携がうまくいかなかったりするのです。こうした問題が生じない仕組みをあらかじめ整備しておく必要があります。

2点目の課題は、「増加し続けるビデオ会議とチャット」です。

▲リモートワークの普及に伴い、カレンダーがビデオ会議で埋め尽くされることも多くなったという

皆さんのカレンダーは、今どうなっているでしょうか。「朝から晩まで一日中ビデオ会議で、休憩時間取れなかった」という経験がある人はいませんか。

リモートワーク・ハイブリッドワークで面と向かってのコミュニケーションが難しい代わりに、チーム全体の情報共有や意思決定のためにオンラインで集まるようになりました。ただ、ビデオ会議などの同期コミュニケーションが増えすぎると、ワークライフバランスの悪化やモチベーションの低下につながります。そうならないように、メンバーが同じ時間に集まらなくても円滑なコミュニケーションができる仕組みが求められています。

そして3点目の課題は、「チームとしての文脈を失ってしまう」ことです。

▲チーム内の情報共有は物理的な距離が離れたことでハードルが高くなった

情報が入ってこない状況が続くと、人はやりがいを感じられなくなってしまうものです。決定事項の共有漏れはできるだけ避けなくてはなりませんが、オフィスに人が集まらなくなったことによって、そうした事象は従来よりも格段に増えつつあります。

以上3点が、リモートワーク・ハイブリッドワークにおける課題です。

ここから言えるのは、「リモートワーク・ハイブリッドワーク下では、アライメントとスピードをいかに保つかが鍵になっている」ということ。アライメントとは、チームメンバーがチームの方向性を理解した上で、必要な情報を必要なタイミングで得られる状態を指します。

アライメントを保ちつつ、スピード感を持って業務を進められる環境をいかに整えるか。それが、今あらゆる企業に共通して存在する課題なのです。

課題解決につながる3つのベストプラクティス

こうした課題にうまく対処している企業のベストプラクティスを、Notionユーザーの事例と共にご紹介します。

1. 情報の地図をつくる

情報の地図とは、「この情報はここにありますよ」と伝える情報の案内ページです。

リモートワーク・ハイブリッドワークがうまくいっているNotionユーザーは、ほぼ全て「情報の地図」を作成しています。経費精算などの事務ルールからチームの方向性まであらゆる情報の入口を一箇所にまとめて、そこに社員がいつでもアクセスできる状態にしています。

情報の地図をつくることはすべての情報を一箇所にまとめることではありません。「こういうルートを辿れば欲しい情報が見つかるよ」と、各所に散らばった情報への導線をサイト上で可視化するんです。Notion上に情報の地図を構築しているスマートニュースさんは、この状態のことを「情報のキャンバス」と表現しています。こうすることで、社員全員が「知りたい情報を知りたい時に知れる状態」になりますし、疑問を思ったことに対してもすぐに答えが見つかります。

さらに、情報の地図のようなまとまった資料を用意することは、新入社員のオンボーディングにも役立つので、ぜひこの機会に作成してみてください。

▲Notion社内でも情報の地図をNotion上に置いている

2. 透明性と自走

リモートワーク・ハイブリッドワーク下では、メンバーが自走できる状況をつくるために情報をできるだけオープンにすることが大切です。たとえば、NotionユーザーでもあるLayerXさんは、「透明性のあるコミュニケーションを徹底する」という行動方針を掲げており、それが業務遂行のスピード感につながっているとのことです。

Notion社内では、全社のドキュメントと進行中のプロジェクトは社員のだれでも閲覧できるように公開しています。「どのような文脈で意思決定が成されたのか」「今誰がどんなタスクを抱えているのか」といったあらゆる情報をオープンにすることで、必要な情報は誰かに聞かずとも自分自身で得られる状態にしています。

また、グッドパッチさんとの共同プロジェクトでNotionを活用しているサントリー食品インターナショナルさんは、「メンバー全員が全ての情報を平等に取得できるため、所属企業や部門の枠はなくなり全員がフラットな関係で同じ方向を見て働ける」という効果を実感されているそうです。

3. 非同期のコミュニケーションの促進

ビデオ会議など全員が同じ時間を共有して行う「同期コミュニケーション」は、メンバーのスケジュールを圧迫し、モチベーションを下げる要因になる場合もあります。そのため、同じ時間に集まる必要のない「非同期コミュニケーション」の仕組みに対する需要が、今非常に高まっているのです。

非同期コミュニケーションの良さとして大きく挙げられるのは、チームでの作業の効率化です。会議から情報共有の時間をなくすために、議事録やタスクメモなど、メンバーが共同で書き込めるスペースを用意し、そこにあらかじめ議論に必要な情報を書き込むようにします。

そうすることで、メンバーが各自のペースで情報をアップデートすることができ、会議時間を意思決定に必要な議論のみに使うことができます。また、会議中の内容も議事録にまとめることで、ミーティングに参加できないチームメンバーにも内容を確認してもらえるようになります。

場合によってはミーティングを行わずに、コメントのやりとりや情報の確認のみで意思決定できることもあります。サイバーエージェントさんでNotionを導入しているチームでは、Notion上にスクラムバンボードをつくり、メンバーのタスク管理状況をリアルタイムで細かく共有できるようになったため、今まで行っていた朝会と夕会を廃止にしたそうです。

誰もが新しい働き方を実践できる、大きな波が来ている

ここまでの話を聞いて、「とはいえ、うちの会社を変えるのは難しいのでは?」と思っている方にお伝えしたいことがあります。それは、「私たち誰もが主導的に新しい働き方を実践できる大きな波が来ている」ということです。

つい10、20年前までは、情報システム部門や幹部が決めたツールを使う時代でした。しかし、今の時代は働き方の「解」がありません。ベストな働き方を実現する方法を、誰もが模索している段階にあると言えます。

もちろん情報システム部門の方々も、これまで以上に良い働き環境を構築するために取り組んでいますが、それ以外の人たちが持つツールの目利き力は未だかつてない水準に上昇しています。レビューサイトが生まれたり、SNSでツールへの感想が集まったりと、選択の手助けになるような情報もどんどん充実しているんです。

そんな中、「ユーザーが使いたいツールを周囲に発信した結果、組織がそれを採用する」という、今までとは逆の流れが生まれました。

実際、今日お伝えしたベストプラクティスはほとんどが現場主導のものです。問題意識を持った数人が大きな渦を作った結果、正式な導入に至ったケースばかりです。皆さんにはぜひこうした世の中の状況を知った上で、諦めずにチャレンジしていただきたいと思います。

▲新しい働き方を実践するために「今日からできること」

おすすめなのは、まず最新のツールを触ってみること。経済誌フォーブス(Forbes)はThe Cloud 100というリストをネット上に公開していますので、それを参考に今注目を集めているツールを2、3人の少人数のチームで試してみるのはいかがでしょうか。

この際、当然ですが社内承認はきちんと取るようにしてください。先に述べた通り、情報システム部も新しい働き方を模索しているので、現場からの提案には前向きに対応してくれると思います。

そして、ツールを使って感じたことを社内に発信してみましょう。可能であれば社外にも発信してみると、同じような悩みを持つ人とつながれることがあります。

最後は効果の検証です。プラスの効果が出たことが情報システム部や幹部にきちんと伝われば、皆さんの動きをきっかけに会社全体の働き方が大きく変わるかもしれません。

今日の話を聞いて「自分たちの会社も変われるかもしれない」と思った方は、ぜひできることから始めてみてください。一人でも多くの方がこの大きな波に乗り、より良いリモートワーク・ハイブリッドワークを実現していただけたら嬉しいです。

セッション動画

文:一本麻衣

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