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2025年9月16日
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LIGO・Virgo・KAGRA国際共同研究グループが発表した論文「GW250114: Testing Hawking’s Area Law and the Kerr Nature of Black Holes」は、最近検出された重力波信号の分析により、スティーブン・ホーキング博士提唱の「ブラックホール面積定理」が実証されたことを報告した研究である。
2025年1月14日、レーザー干渉計重力波観測所(LIGO)は記録的な強度を持つ重力波信号「GW250114」を検出した。この信号は、地球から観測された重力波の中で最も明瞭なものとなり、信号対雑音比80という過去最高値を記録した。これは10年前に初めて検出された「GW150914」の約3倍の明瞭さである。
この重力波は、太陽の約33.6倍と約32.2倍の質量を持つ2つのブラックホールが合体して生じたものである。合体の結果、太陽質量の約62.7倍のブラックホールが形成され、差分のエネルギーが重力波として放出された。
今回の観測で特に重要なのは、ホーキングが1971年に提唱した「ブラックホール面積定理」の検証である。この定理は、ブラックホールの事象の地平線の総面積が時間とともに減少することはないというもので、ブラックホール熱力学の第二法則として知られている。
研究チームは、合体前の2つのブラックホールの総面積と、合体後の単一ブラックホールの面積を独立に測定し、後者が前者を上回ることを高い信頼度で確認した。これは、最も強力で動的な重力場においても一般相対性理論が成立することを示す証拠となる。
さらに、合体後のブラックホールが発する「リングダウン」と呼ばれる振動が検出された。これは、歪んだブラックホールが安定状態に落ち着く過程で発生する重力波で、鐘が鳴り響くような現象に例えられる。これらの振動周波数がアインシュタインの理論から計算される値と30%以内の精度で一致することが確認された。
Source and Image Credits: A. G. Abac et al. (LIGO Scientific, Virgo, and KAGRA Collaborations), “GW250114: Testing Hawking’s Area Law and the Kerr Nature of Black Holes,” Physical Review Letters 135, 111403 (2025). DOI: 10.1103/kw5g-d732
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