変化するクラウドの風景。クラウド管理における優先事項はオブザーバビリティから最適化へ【テッククランチ】

2022年11月1日

寄稿者

Chelsea Goddard

ソフトウェアと宇宙技術の未来に関心を寄せるサンフランシスコ拠点のアーリーステージ投資家。

ここ数年、クラウドコンピューティングはかつてなく費用のかかるものになっている。多くの企業が当初、インフラ支出を削減できるという見込みに惹かれ、AWSやGoogle Cloudといった巨大企業にサービスをホストしてもらうためにあまねく集まった。テックチームは、クラウドコンピューティングによってエンジニアリングにかかるコストを削減し、開発者の生産性を向上させることができると言われ、一部のケースではそれが実現した。

人工知能(AI)と機械学習(ML)における抜本的な変化は、作業をバッチ処理し、クラウド上で並列して実行できることにより可能になった。これにより特定のモデルの訓練にかかる時間が短縮され、イノベーションサイクルの高速化につながった。もうひとつ、ソフトウェア設計における変化もあった。仮想マシン上で動作するモノリシックなアプリケーションから、マイクロサービスやコンテナベースのインフラパラダイムへの移行があった。

ところが、クラウドの採用はテクノロジー製品の構築、管理、運用方法を根本的に変えた一方で、クラウドコストの高騰という予期せぬ結果を招いた。(データはこちらクレジット:Chelsea Goddard

▲企業のクラウドインフラ総費用は数十億ドルにものぼる。数字はSynergy Research Groupのデータを基にした概算値。画像クレジット:Chelsea Goddard

費用を抑えられるという期待から企業はクラウドへの移行を敢行するが、多くのチームはこれを効率的に、ひいては費用対効果よく行う方法を知らなかった。Chronosphere(クロノスフィア)の2億5500万ドル(約380億円)、Observe(オブザーブ)の7000万ドル(約105億円)、Cribl(クリブル)の1億5000万ドル(約225億円)といったクラウドオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームに対する、最近のベンチャー投資が急増した背景には、こうした先行投資の機会が生まれていたのだ。

ここの考え方は単純だ。サービスにかかる費用を可視化すればチームは支出を減らすことができる。「見えないものは変えられない」という古くからの格言に例えられる。これはまた、大企業が中小のオブザーバビリティ・プレイヤーを買収する主な理由にもなっている。オブザーバビリティ機能の追加で顧客を引きつけて解約のリスクを減らし、平均契約額(ACV)を増やすことができる。(データはこちらクレジット:Chelsea Goddard

▲クラウドオブザーバビリティ企業の資金調達状況。画像クレジット:Chelsea Goddard

現在の市場はオブザーバビリティ製品を提供するのに良い環境だ。Flexera(フレクセラ)の「State of the Cloud Report(クラウド状況報告書)」によると、「クラウド費用が200万ドル(約3億円)以上のIT専門企業のおよそ77%が、(クラウド費用に)かけた金額に驚いたと答えている 」という。また、「クラウドプランを利用している企業の70%が(近い)将来、予算を増やす予定だ」ともある。

ベンチャーキャピタルの支援を受けたスタートアップにとって、高い需要、競争の激化、10億ドル規模のイグジットの可能性など、チャンスがあるのは明らかだ。しかしそれはまた、選択するツールが多すぎることの副産物、分析麻痺をも意味する。

だが興味深いことに、製品に対して疲弊したことは問題解決を意味していない。むしろ、モニタリングの一歩先を行くオブザーバビリティプラットフォームに対する明確な需要を示している。クラウドインフラの最良活用を考えている企業にとって、最適化ツールが次の製品イノベーションの波となるのはまさにこのためだ。

監視ツールの多くは最適化を提供しない。可視化、チャージバック、アロケーションなどの技術的な機能は、コスト削減のための洞察をユーザーに提供するが、コスト削減と効率向上のために注力したりリソースを再配分したりする必要があるところを最適化したり自動化したりすることはできない。Flexeraの調査の回答者によると、最適化がクラウドの取り組みの優先事項になっているのはこのためだ。(データはこちらクレジット:Chelsea Goddard

▲既存のクラウド利用の最適化 (コスト削減) がクラウドにおける取り組みの最優先事項だ。データの出典はFlexera 2022 Cloud Spend Report。画像クレジット:Chelsea Goddard

エンジニアリングマネジャーもずっと、大規模な組合せ最適化問題を解決する独自のアプローチをどう取るかという課題に直面している。これは、企業がStripe(ストライプ)の登場以前は決済を、Twilio(トゥイリオ)以前はメッセージの問題をいかに解決していたかを思い起こさせる。どの会社のエンジニアリングチームも、共通の問題に対して独自のソリューションをひねり出していた。そこに使いやすい選択肢があれば、この苦痛を伴う作業は喜んで私たちが信頼している企業に委託されたわけだ。

これが本記事の核心につながる。クラウドとエッジの取り組みが一段落したら、インフラへの投資は、企業の戦略的優先事項である自動化と最適化にシフトするだろう。さらに、顧客のコスト削減と反応性の向上を可能にする開発ツールは特に優位に立つことができる。

もうひとつ、より議論を呼ぶ意見として、他の分野においてポイントソリューションは市場獲得に限定されることはあるが、最適化の分野では実際にポイントソリューションのようなものを必要としている。というのも、AppleやGoogleのような大企業の組織は、すでに何百万ドルもかけて自前のオブザーバビリティプラットフォームを立ち上げているからだ。これらの企業はオブザーバビリティの部分をすべて外部に委託することはないだろうが、最適化と自動化の部分を委託する可能性は高い。したがって、クラウドにより前向きな企業にとってこれはすでに最優先事項だと考えるべきだろう。

▲増加すると予想される投資の上位3つのカテゴリーはすべて最適化に関連している。画像クレジット:Chelsea Goddard

最近シリーズAラウンドで資金を調達したSync Computing(シンクコンピューティング)はこの新しいパラダイムで勝てる位置にいるスタートアップの格好の例だ。Sync Computingは、エンジニアリングチームがクラウド設定をプログラムによって最適化し、クラウドコストを削減するのを支援している。同社はこのほど「Autotuner API」を発表した。これは開発者が「AWSまたはDatabricks上で実行するSparkジョブに最適化されたレコメンデーション」の予測を生成できるようにする。市場が成熟するにつれて、既存のオブザーバビリティ企業がSyncのようなソリューションと直接統合する最適化機能を発表することを期待したい。

結論として、最適化はクラウド管理における次の大きなものだ。というのも、組織はコストを削減する方法を探し続け、最適化ツールは明確な解決策を提供するからだ。クラウドインフラの最優良事例が成熟するにつれ、エンジニアリングのマネジャーは自動化と最適化のワークフローを組み合わせた業界スタンダードを遵守するためにチームを奪い合うようになるだろう。

さらに、機械学習の採用が進んでいることから企業は大規模で予算の大きな仕事をクラウドで実行し続けることになり、主に消費者レベルでのレコメンデーションと製品レベルでの応答時間の短縮を図ることになる。そのためには、反応性の高いアラート(オブザーバビリティ)だけでなく、プロアクティブなレコメンデーション(最適化)が必要になる。

最後に、最適化はオブザーバビリティとは異なり、大企業でも中小企業でも導入の障壁が低い。このため、最適化ツールは注目の的となっている。

免責事項:本記事で述べられている考えや意見はSync ComputingおよびSpace Capitalから独立して執筆されたものであり、あくまで執筆者の見解である。

From TechCrunch. © 2022 Verizon Media. All rights reserved. Used under license.

元記事:The changing cloud landscape: From observability to optimization
By:Chelsea Goddard
翻訳:Nariko

関連記事

人気記事

  • コピーしました

RSS
RSS