深刻化する異常気象、7AnalyticsはAIとビッグデータで洪水リスクを予測【テッククランチ】

2022年10月19日

執筆者

Paul Sawers

イギリスロンドンを拠点に活動するライター。VentureBeatとThe Next Webで10年以上にわたりテクノロジー最新事情を取材し、TechCrunchにジョイン。イギリス・ヨーロッパのスタートアップ情報を中心に執筆。

世界で起こっているニュースを追っている人なら、米国や欧州からアフリカ、オーストラリア、アジアに至るまで世界のあらゆるところを飲み込んだ壊滅的な洪水のことを知っているだろう。インドやパキスタンも近年で、最悪の洪水に見舞われた。

気候変動に起因する災害は、今後ますます深刻化すると誰もが予想できるものだ。そうした将来起こる大災害を回避するために、わたしたちはなにができるのだろうか。さまざまな選択肢がある一方で、一部の企業はこの新しい現実に備えて計画を立て、少なくとも洪水の影響を軽減するための方法に目を向けている。

「7Analytics(セブンアナリティクス)」は、建設やエネルギーインフラ企業の洪水による被害を軽減しようと、データサイエンティストと地質学者のチームによって2020年に設立されたノルウェー拠点のスタートアップだ。最初の製品である「FloodCube(フラッドキューブ)」では、人工知能と高度な機械学習技術を使って、現在の地表水とそれが流れている場所(流出)を計算し、降雨量が増加した場合の状況をモデル化するサービスを顧客に提供している。

FloodCubeのモデルは、洪水がどのように広がるかを予測するというよりも、さまざまな環境要因に基づいて水がたまりそうな場所を正確に示すものだ。既存のサービスでも、複数のソフトウェアと手動計算を組み合わせてこれを行うことは可能だが、FloodCubeはすべてをひとつに集約している。

データの表示

人工知能や機械学習を搭載した他のソフトウェアと同様、大規模なデータセットは7Analyticsのサービスにとって極めて重要なものだ。同社は地形用のデジタル標高モデル(DEM)、衛星画像、気候データなど公開されているソースからデータを収集し、これらのソースを統合してユーザーが簡単に知見を得られるようにしている。7Analyticsの本社所在地であるノルウェー南西部の都市ベルゲン市をはじめ、多国籍企業の建設大手「Skanska(スカンスカ)」、エンジニアリングコンサルタント会社の「Multiconsult(マルチコンサルト)」などが顧客として名を連ねている。このことは7Analyticsが誰をターゲットにしているか、そして誰が将来の洪水シナリオの予測に最も関心を持っているかをはっきりと示している。こうした顧客にとって都市インフラを保護することが一番重要だ。

7Analyticsの共同設立者であるJonas Toland(ジョナス・トーランド)氏はTechCrunchの取材に対し「今日、開発業者や不動産所有者の大半は自分たちがどれくらい洪水のリスクにさらされているかをほとんど知らない。当社が高精度のリスクツールでこのギャップを埋める」と語った。

7Analyticsの技術は今のところ、主にノルウェーの建設会社に使われているが、同社はエネルギーインフラなどの新しい分野にも進出しており、現在いくつかの米国のエネルギー会社と交渉中だ。そのため、7Analyticsは気象サービスを提供している気象会社「StormGeo(ストームジオ)」と提携し、米テキサス州ヒューストンの企業を含む石油・ガス分野の顧客に、StormGeoの既存サービスの「強化」を支援している。同社は基本的にリスクデータを、例えば船旅航行ルートにおける災害管理やエネルギー生産現場といった特定のビジネスユースケースに合わせてカスタマイズしている。

「当社の製品は、例えば明日の降雨のリスクなどStormGeoのリアルタイムの天気予報を取り込んで、明日サイトが何インチ浸水するリスクがあるかといった実用的なリスク情報に変換する。この情報を使って、従業員が駐車場を使えるかどうかを知らせたり、供給トラックのルートを変更したりすることができる」とトーランド氏は説明した。

スタートアップが続々参入

再保険会社「Swiss Re(スイス・リー)」の最近のデータによると、世界の異常気象による保険会社の昨年の補償金支払額は1010億ドル(約14兆5570億円)で、1000億ドル(約14兆4130億円)を超えたのは1970年以来3度目という。また、どの数字を信じるかにもよるが、2021年米ルイジアナ州に上陸した大型ハリケーン「IDA(アイダ)」だけで、少なくとも500億ドル(約7兆2070億円)の損害が発生したと伝えられている。そのため、気候に全くフォーカスしていなかった企業も含め、あらゆる種類の気候関連技術のスタートアップがこの分野に参入している。

TechCrunchは9月28日に「VRAI」という創業6年の会社について取り上げた。VRAIは当初、航空宇宙と防衛の分野にVRシミュレーショントレーニングを提供していたが、現在は再生可能エネルギーに範囲を拡大している。欧州の労働力のスキルアップと、今後10年間に洋上風力発電容量を増やす計画の支援に重点を置く予定という。 

その他にも、オーストラリアの「FloodMapp(フラッドマップ)」はリアルタイムの洪水予測を提供するために、最近850万ドル(約12億円)を調達した。また、TechCrunchは昨年、氾濫原管理プラットフォームを開発するニューヨークの「Forerunner(フォアランナー)」を取り上げた。

さらなるに飛躍を求めようと、7Analyticsは9月29日米国市場に正式に参入し、SDGs関連投資を専門とするVC企業「Momentum Partners(モメンタムパートナーズ)」主導でConstruct Venture(コンストラクトベンチャー)とObos VC(オーボスVC)が参加したシードラウンドで250万ドル(約3億6000万円)を調達したと発表した。この資金調達により、7Analyticsは欧州と米国の両方で事業を拡大することになるが、同社は最終的に技術を地滑りや生物多様性を含む他の「自然リスク」のモデル化に利用する計画だという。

「当社のものはすべてグローバルに使えるようにつくられており、世界各地でモデルを急速に展開している」とトーランド氏は言う。「同時に、都市によって地形や気候、どのように形成されているかが異なることを考慮する必要がある。当社のモデルは新しいユースケースに簡単に適応できる。このことは建設開発業者や自治体のケースワーカー、インフラ所有者など、さまざまな顧客グループを取り込んでいることからも明らかだ」と話した。

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元記事:As extreme weather events worsen, 7Analytics meshes AI and big data to predict flooding
By:Paul Sawers
翻訳:Nariko

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