ブロックチェーン上にソーシャルメディアプラットフォームを構築する動きが加速【テッククランチ】

2022年8月10日

執筆者

Anita Ramaswamy

TechCrunchジャーナリスト。暗号とフィンテックを専門とする記者。TechCrunchの週刊暗号ポッドキャスト「Chain Reaction」の共同ホストを務め、同名のニュースレターを共同執筆しています。

大手ソーシャルメディアに対しては懐疑的になる。そうした企業は度々、広告主にユーザーデータを販売し、コンテンツモデレーションへのアプローチで論争に陥ってきた。これに対して、Web3の支持者たちは、プラットフォームに力が集中することを回避できる全く新しいシステムを構築できると考えている。分散型ソーシャルメディア(DeSo)のエコシステムは、ユーザーが作成したコンテンツに対して、これまで以上に所有権を持つことを理想としている。

非営利団体「Dfinity」のインターネットコンピュータプロトコルをベースにした、ブロックチェーンベースのソーシャルネットワークである「DSCVR」は、Polychain Capitalがリードしたシードラウンドで調達した資金900万ドル(約12億円)で、スケーラブルなDeSoプラットフォーム構築の競争に参入した。DSCVRによると、同ラウンドには他に「Upfront Ventures」、「Tomahawk VC」、「Fyrfly Venture Partners」、「Shima Capital」、「Bertelsmann Digital Media Investments (BDMI)」 が参加したという。

多くのスタートアップや大企業が、ユーザーに実用性を提供するネットワークを構築しようと、激しい競争を繰り広げている分野だ。今月初め、元Coinbase社員のDan Romero(ダン・ロメロ)氏はアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)がリードするラウンドで3000万ドル(約40億円)を確保した。ユーザーが異なるアプリ間でソーシャルアイデンティティを移動できるようにするDeSoプロトコル「Farcaster」の開発が目的だ。TechCrunchは5月に、別のシードステージのスタートアップ「Primitives」が、SolanaベースのDeSoネットワークのために400万ドル(約5億円)を調達したことを取り上げた

また、各大手テック企業もこのゲームに参加している。ツイッターは2019年に設立されたオープンソースDeSoプロジェクト「BlueSky」の分派に出資している。これはまだ稼働していないが、開発プロセスを公開実験している。

DSCVRは「ポータル」と呼ばれるトークン使用者限定のコミュニティを主催している。ユーザーは特定のNFTを所有しなければ参加できない。共同設立者兼CEOのRick Porter(リック・ポーター)氏はTechCrunchのインタビューで、DSCVRのユーザーにデジタル資産を無償配布することで、このコミュニティはNFTプロジェクトの宣伝に役立つと語った。

「人々は自身のNFTの流通を求めている。彼らはNFTの流動性の確保を望んでおり、ボットではなく、本物の人間にそのNFTを所有し、保有してほしいと考えている。つまり、我々はそのNFTの流通経路となり、(流通を求める人々は)10,000のエンティティコレクションを持っていて、当社のトップユーザーに1000のコレクションを提供するかもしれない」とポーター氏は話した。

ポーター氏によると、DSCVRはすでに10万人以上のユーザーを擁しており、無償配布の報酬メカニズムを通じてこれらのユーザーのために「数百万ドル」のNFT報酬を生み出しているという。Web2.0とWeb3の架け橋になるという目標を持っているという点で他のDeSoプラットフォームと異なる、と同氏は指摘する。

「Web3にはなじみのない典型的なWeb2.0ユーザーにWeb3の技術を紹介し、そのギャップを埋めるために大きな犠牲を払うことなく、Web3内で完全に本物でネイティブな体験を提供するにはどうしたらいいだろうか。当社が考えている差異化の1つは、Web3体験から得られる視点の量や忠実度を高めることだ」とポーター氏は話した。

そのため、MetaMaskや他のプロバイダーを通じて外部ウォレットをソーシャルプロファイルにリンクさせることは、特にWeb3技術に精通していない人にとっては複雑なものだとポーター氏は指摘する。DSCVRはネイティブウォレットでこれを解決しようとしていて、このウォレットはプラットフォーム上でユーザーが利用でき、自分の鍵のコントロールを手放す必要がないという

DSCVRが取り組んでいるのは「ほとんど犠牲を払うことなく」いかにユーザーにweb3ネイティブの分散型体験を提供するかということだ、とポーター氏は付け加えた。同社がスマートコントラクトチェーンとして、最も人気のあるイーサリアムではなく、インターネット・コンピュータ・プロトコルをベースに構築することを選んだのは興味深い。同氏は、BCGのコンサルタントとしてブロックチェーンベースのスマートコントラクトのプロジェクトに携わっていたときに、Dfinityの社長兼チーフサイエンティストのドミニク・ウィリアムズ氏と出会い、決めたという。

Dfinityのプロトコル自体の開発に携わるようになったポーター氏は数年後、BCGを離れ、Dfinityで正社員として働き始めることを決意した。同氏の最初のプロジェクトは、プロトコル上にメッセージボードを構築することだった。このプロジェクトを通じて、同氏はWeb3コミュニティの必要性を知り、ソーシャルネットワークを構築すると決めるに至ったと説明した。

インターネットコンピュータのエコシステムもまた論争を抱えてきた。Dfinityはトークンを未登録証券として違法に販売したとして、集団訴訟に直面している。この訴訟では、Polychainとa16zも被告として名前が挙げられている。両社はDfinityの初期の支援者だったためだ。Dfinityは先月、米ニューヨークタイムズ紙の記者、アンドリュー・ロス・ソーキン(Andrew Ross Sorkin)氏とエフラト・リブ(Ephrat Livni)氏がDfinityに対する名誉毀損に関与したとして訴訟を起こし、集団訴訟の原告側の主張を真っ向から否定した。

ポーター氏は、「なぜインターネットコンピュータが自分のソーシャルプラットフォームを構築するのに最適な選択だと考えたのかと尋ねられ、こう答えた。

「AWSのようなもので開発しているように感じるが、完全に非中央集権的だ。アップグレード可能なスマートコントラクトがあるので、検証済みかつオンチェーン化され、追跡可能という全ての要素を確保しつつ、実際に変更を加えてアプリケーションを徐々にアップグレードすることができる」

それでも、DeSoのプラットフォームを構築する上で、顧客と直接コミュニケーションをとることは必要だとポーター氏は言う。

難しいのは、Web3ではユーザーに関する分析があまり得られないことだ。ユーザーが直面している問題とは何か、どのような要因で離脱しているのかを真に理解するためには、ユーザーと直にコミュニケーションを取らなければならない。一部のユーザーが問題に直面しても、我々はアラートを受け取ることができない」とポーター氏は話した。「ユーザーが自分でサイトに投稿するか、あるいは彼らが直面している問題を友人がサイトに投稿して知らせてくれることを期待するしかない。そうしてもらえると、大体においてすぐに解決することができる」とも語った。

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元記事はこちら:The race to build a social media platform on the blockchain
By:Anita Ramaswamy
翻訳:Nariko

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