【Misskey開発者syuilo氏】「楽しんでほしい」ピュアな思いがMisskeyを生んだ。異様な熱狂を放つSNSの今までとこれから

2023年7月10日

個人開発者

syuilo(しゅいろ)

1997年12月生まれ。2014年に15歳で「Misskey」を開発し公開。2023年現在もプロジェクトリーダーとして開発に携わっている。

2023年、Twitterからの移行先として一躍話題となった分散型マイクロブログプラットフォームサービス「Misskey」。その特徴は、楽しみ方の自由度の高さとユーザーの熱狂にあります。なかでも最大のユーザー数を誇るサーバー「Misskey.io」は登録者25万人以上(2023年7月9日時点)を抱えており、日々新しいネットミームが生まれるなど早くもひとつの文化を確立しています。

独特なユーザーが集まり異様な熱狂を巻き起こしているMisskeyとは何なのか? 開発者は何をつくりたくて、何を思っているのか? Twitterの混乱を経てMisskeyはこれからどんなサービスになっていくのか? 開発者であるsyuilo氏に取材しました。

「楽しい」の積み重ねが、今のMisskeyを生んだ

──Misskeyを開発したのは2014年だったそうですね。何がきっかけだったんですか。

Misskeyはもともと掲示板サービスでした。当時まだ私は15歳で、Web技術は覚えたてでしたが、Twitterの連携ツールなどいくつかのWebサービスを開発していたんです。自分のつくったWebサービスをいろいろな人に使ってもらえることが楽しくて、Misskeyもそのうちの一つでしたね。

──開発当時は、どんなプロダクトをつくりたいとお考えだったのですか。

実はMisskeyに対して特別深い思い入れがあったわけではなく、Web技術に触れる前から「自分のつくったもので人を楽しませる」のが好きで、Misskeyはその延長だったんです。

小学校の頃、図工の時間で実際に遊べるパチンコ(ギャンブルの方です)のようなものをつくって、クラスの皆が夢中になって遊んでくれた思い出があります。

Misskeyに関しても、単なる掲示板サービスではなく「使っていて楽しいと思ってもらえるものにしたい」とずっと思っていました。そのため、他の掲示板サービスにはない「経験値・レベル」といった機能や、複数のウィンドウを配置してUIを柔軟にカスタマイズできる機能などを実装していました。

▲現在のMisskey。UIを自在にカスタマイズできる機能は今でも健在

──掲示板だったMisskeyは、どのようにして今の形になったんですか。

「楽しんでもらう」ための機能実装を重ねている中で、Twitterから着想を得て、自分のフォローするユーザーの投稿がタイムラインで見れる機能を追加しました。そこで人気になり、次第にそういった「マイクロブログ」的な機能の方がメインになりました

その後も開発を続け、5年ほど前に、分散型SNSという概念とそれを実現するActivityPubという技術を知りました。これはまさにMisskeyにうってつけの技術だと感じ、分散型の方向に舵を切ったんです。

オープンソースなのでMisskeyのサーバーは複数存在していましたが、当時はサーバー同士でコミュニケーションを行うことはできず、各々独立したコミュニティがありました。異なるサーバー同士でコミュニケーションできたら楽しそうだな、という構想は以前からあり、ActivityPubのおかげでそれが実現し、今に至ります。

──syuiloさん以外の運営メンバーは、どんな経緯で集まったんですか?

昔からのMisskeyユーザーが開発や運営に加わっていった、という経緯が多いです。ただ、村上さん(Misskey.io管理者)は違った出会い方をしています。

2018年頃、分散型になる前から私が管理運営していたMisskey.xyzというサーバーが攻撃を受けてダウンし、VPSのホスティングサービスから利用を止められてしまうという事件が起きました。困っていたところ、知り合いに「インフラに詳しい人がいる」と紹介してもらったのが村上さんです。当時は私一人で開発も運営も両方行うのは限界を迎えつつあったこともあり、この機会にと運営を村上さんに任せる形になりました。このサーバーが、現在最大ユーザー数を抱えるMisskey.ioなんです。

村上さんは自宅に業務用のサーバーがあるというなかなか珍しい人物で、しばらくはそこでずっとMisskey.xyzおよびMisskey.ioが動いていました。ユーザー数も激増した今は家で動かすには大規模すぎるので、クラウドサービス上で動いているんですけどね。

▲TwitterのAPI制限をきっかけに、最大サーバーであるMisskey.ioに新規アクセスが殺到した際の村上さんのMisskey投稿。この後数日間にわたり、サーバー拡張対応に追われていた

元ツイッタラーがつくる、「ツイッタラーのためのサービス」 

──Misskeyは数あるSNSの中でも、インターネットに慣れていないと使いこなすのが難しいような、一種のハードルの高さがあるように感じています。幅広いユーザーに利用されることを目指す場合が多いSNSのなかでも、ユーザーの参入ハードルをあえて高めに設定しているのには、何か意図があるんでしょうか?

特にハードルを高く設定する意図はなかったんですが、使いやすさ第一というよりは「自分がほしいもの」「楽しめるもの」をつくっていたらこうなった、という方が正しいかもしれません。

当然ですが、私自身がMisskeyのヘビーユーザーでもあるので、自分の欲しい機能を実装することもよくあります。そのため、「Misskey Play」というMisskey内でオリジナルのプログラミング言語(AiScript)を使って動的なコンテンツをつくれる機能や、複数の条件を組み合わせて自分の欲しい情報だけを収集するアンテナ機能といった、比較的わかりにくいものもあり、ハードルが高く感じられているのかもしれません。

あと、いまのMisskey.ioにはIT技術者やDTMer、イラストレーターなどが多く登録しています。実はターゲットとなるユーザー層を、いわゆる「ツイッタラー」のような「インターネットに慣れた、デスクトップPCも持っている10代~30代くらいの人」に絞っています

といっても意図してターゲットを絞ったわけではありません。広く浅くターゲットを設定するよりは、ある程度絞った方が、ニーズに合った運営や機能提供をしやすいので、だんだん現在のターゲットに絞られていった、という方が近いです。急拡大中の今も無理にターゲットを広げないようにしています。

当分は現在のターゲットに絞った上で、もっとユーザー数を増やしたいのですが、まだまだ直感的に使ってもらいづらい部分もあります。機能の説明を充実させたり、Misskey内に表示されるチュートリアルをわかりやすく強化するなど、ターゲットにとってより使いやすくなるように改善を重ねています。

──Twitterのヘビーユーザーをターゲットにしていたんですね。syuiloさん自身も長くTwitterを使っているようですが、最近のTwitterに対しては率直にどうお感じでしょうか?

私はもともとTwitterのヘビーユーザーでしたし、現在もプロダクトとしてTwitterが好きであることには変わりませんが、最近のゴタゴタを見ているとTwitter運営に対して少し不信感を感じることもあります。

APIの制限強化や規制強化などで、開発者やクリエイターの方々にとっても使いづらいサービスになってしまったと周りでもよく聞きますし、ユーザー離れが進んでいるように感じます。利益を確保するために規制を強化し、結果としてユーザーが離れてしまっては元も子もないので、その部分は反面教師にして、Misskeyではあくまでユーザーフレンドリー・デベロッパーフレンドリーにしていきたいですね。「利益を前提にしなくてよい」OSSであるのも、Misskeyの強みだと思います。

とはいえ、Misskeyを実際に運営するサーバー運営者にとっては、ある程度利益が出ないとサーバーを維持できませんから、収益化については目下の課題です。ユーザーの利便性を極端に損なわない範囲を守った上で、安定して収益を出せる仕組みを生み出さなくては、と思っています。

ただ、Twitterのひと悶着がMisskeyが注目されるきっかけになっているのも事実なので、内心この状況を楽しんでいます(笑)。

▲syuilo氏のTwitterアカウント。フォロワー数もさることながら、2012年から利用・合計8.1万ツイートというヘビーユーザー

「自分がつくらなくても勝手におもしろいものが生まれる仕組み」が、サービス発展につながる

──現在のMisskeyの盛り上がりには、どんな思いがありますか?

“なんとなく趣味で始めた”プロジェクトがここまで大きくなるとは、夢にも思っていませんでした。今のMisskeyは自分の考えていた理想のプロダクト像と非常に近い状態にあると思います。

「ユーザーに使っていて楽しいと思ってもらえるものをつくりたい」という当初の考えは変わらず、今もユーザーはどんなものを求めているのか、どんな機能を実装したら喜んでもらえるか、常に意識しています。最近はユーザーから開発への応援・感謝の声が届くことも多くなり、Misskeyを楽しんで使ってもらえていると実感しています。開発者としては嬉しい限りですね。

とはいえ、当初からの遊び心はまだ健在です。Misskey内にイースターエッグを仕込んだり、ソーシャルゲームでよくあるチュートリアルを模した「実績」機能や、投稿したテキストの「な」が全て「にゃ」に置換されるCat機能などもあります。

▲「実績」機能。ユーザーが特定の行動をとると、バッジをもらえる

こういった「遊び」はビジネスではないからこそできるとも思っていて。すぐつくるべき機能や緊急のバグ対応で手一杯になってしまうと、開発者もユーザーも疲弊してしまいますから、こういうちょっとした遊びはこれからも続けていきたいですね。

先ほど触れた「Misskey Play」では、ユーザーがちょっとしたRPGなどのゲームをつくったりしていて、私もいつも楽しんで使っています。ユーザーが自分でコンテンツをつくれる環境を用意したことで、自分が実装しなくてもMisskey内に面白いものがどんどん生まれてきています。そういう仕組みを用意しておいたことは、「使っていて楽しいプロダクトをつくりたい」という方向にはプラスに働いていると思っています。

▲syuilo氏が「Misskey Play」のサンプルとしてつくった選択式クイズ。ユーザーがこれを応用してつくったクイズやゲームが多数公開されている

──ユーザー数が急増していく中で、Misskeyはどう変わっていくと思いますか?

これはなかなか予想が難しいですね。Twitterが今後どうなるかによって大きく変わると思います。

開発については、開発初期と比べてユーザー数が圧倒的に増えているので、何か判断する際の責任が非常に大きくなっています。初期のころは、気軽に仕様変更もできていましたが、今はなかなかそういうわけにはいきません。機能開発にも様々な意見が寄せられて、あちら立てればこちらが立たぬ、というような状況になることもしばしば。今後はよりプロジェクトリーダーとしての手腕が問われることになると思います。

──規模が大きくなるごとに、設計や開発の難易度も上がっているんですね。Misskey内のコミュニティづくりについてはどうですか?

コミュニティづくりに関しては、どちらかというとMisskey本体というよりは「個々のMisskeyサーバー」に委ねられているのではないでしょうか。

Misskeyも特定のユーザー層に合わせた機能開発を行ったりはしますが、分散型SNSだからこそ、どんなコミュニティをつくるのかはサーバー次第です。サーバーは誰でも作成できるので、多種多様なコミュニティが既にあります。今後もユーザーのニーズに合わせてサーバーが生まれ、その中でそれぞれのコミュニティが育っていくだろうと思います。

▲Misskeyサーバー一覧。たくさんのサーバーがつくられ、それぞれ独立したコミュニティをつくりあげている

分散型のメリットを生かし「インフラ」をつくりたい。健全運営のためのマネタイズも課題

──今後Misskeyは、どのようなSNSにしていきたいとお考えでしょうか?今後の展望をお聞かせください。

ちょっと大げさに表現すると、Misskeyが「インフラ」のようになる未来があったら面白いと思っています。分散型はひとつの企業が運営するSNSと比べて、情報発信のインフラとして優れている部分も多いと感じます。企業のビジネス上の都合に振り回されませんし、サーバーがダウンして皆が使えなくなることもないですし。

MisskeyはOSSですが、開発の規模が巨大化していく中、マネタイズをどうしていくかという課題があります。OSSのマネタイズは難しいとはよく言われていて、本当にそれは実感しています。現に今は、サーバー運営者も開発者の一部も貯金を切り崩しながら運営している面もあり、持続可能性はまったくない状態です。

ただ、OSSは「気軽に使って楽しんでもらえる」というWebのメリットを最大に生かせる形だと思うので、今後も維持していきたいですね。

実際、同じ分散型SNS用ソフトウェアであるMastodonもOSSですが、多くのスポンサーがいて法人化もしているので、MisskeyもOSSのまま収益を確保することは不可能ではないはずです。そのためにはユーザーを増やし、プロジェクトの知名度を上げる必要があると思っています。

また、運営者のコミュニティ維持の負担を減らせるように、ソフトウェアとしてのパフォーマンスを改善し、サーバー運営コストをより少なくしていきたいですね。ユーザー数が増えているサーバーが多いので、モデレーション機能の強化などを実施していこうと考えています。

Misskeyは「開発者とユーザーの距離が近い」とよく言われます。私もユーザーと一緒に開発をしたり、日常的に交流しています。そのおかげでニーズをよく知ることができますし、ユーザーから運営・開発者に対しての好感に繋がり、多くの人に愛してもらえるプロダクトにできているのではないかと感じています。

最終的には、「色々な人や情報が集まる、生活を楽しくするための基盤」のようなものをつくれたらいいなと思っています。もちろんプロジェクトの健全な運営も両立して、ユーザーだけでなく運営者・開発者も含めて、Misskeyにかかわる人々がみんな楽しくやっていけたら嬉しいですね。

Misskeyを開発しているsyuiloです。
Misskeyを気に入っていただけたら、今後も開発を続けられるよう、是非支援をお願いします。寄付していただいた方向けの特典もあります!!


Misskey開発への支援はこちら→https://misskey-hub.net/docs/donate.html
Misskey.io運営への支援はこちら→https://misskeyhq.fanbox.cc/

取材・構成:光松瞳

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