サーバーワークスが「自走するエンジニア組織」を13年間運営できてきた理由。国内トップクラスのAWS導入実績を誇るチームの成長サイクルのまわし方

2021年9月7日

株式会社サーバーワークス クラウドインテグレーション部 部長

玉木雄二

90年代前半にネットワーク技術に魅了され、ベンチャー企業でWAN/LANの大規模な構築を経験。その後、サービスプロバイダの運用・監視コンサルティングを行い、知識と経験を活かせる新しい活躍の場としてサーバーワークスに入社。入社後は関連会社、株式会社スカイ365の取締役CTOを務め、現在はクラウドインテグレーション部で人材の育成や新しいテクノロジーを活用したプロジェクト創出を行う。

株式会社サーバーワークス アプリケーションサービス部 部長

千葉哲也

特定派遣のエンジニアとして多くの開発現場を経験し、携わった多くのプロジェクトの中で「一番おもしろい」と感じた会社ではたらこうと考えサーバーワークスに入社。入社後は、当時自社開発プロダクトを持っていなかったサーバーワークスで、AWS運用自動化サービス「Cloud Automator」の開発マネージャーを担当。現在はアプリケーションサービス部の部長として、クライアントのクラウドネイティブなアーキテクチャ実装やAWSトレーニング事業に携わる。

「最新の開発スキルが身につかない」「トップダウンな組織で主体的に行動しづらい」。そんな組織ではたらくうち、スキルの習得やキャリアパスに不安を覚えるエンジニアは多いだろう。

そんな不安とは無縁の「自走する」エンジニアリング組織をつくってきたのが、株式会社サーバーワークスだ。同社は2008年からAWS専業でクラウドサービスの導入支援を行い、今では国内10社しか存在しないAWSの最上位パートナーとしての実力を誇る。160名規模の会社ながらクライアントから高い信頼を獲得し、日本トップクラスのスキルを有するエンジニアを輩出し続けている。

変化の速いクラウドサービスについてキャッチアップし続け、世の中の一歩先をいくソリューションを提供するにはエンジニアの主体的な行動が必要不可欠。組織の屋台骨を支えてきたマネージャー、玉木雄二さんと千葉哲也さんにエンジニアの成長を後押しする組織の秘密を聞いた。

レッドオーシャンなAWS市場。勝ち抜くカギは「生産性向上」と「ユーザー目線」

──まず、お2人の現在の業務内容を教えてください。

千葉:今期から新設したアプリケーションサービス部の部門長を担当しています。私たちアプリケーションサービス部では、お客様の既存システムをオンプレ環境からクラウドに移行した後、クラウドネイティブなアーキテクチャに再実装する、すなわち開発しなおすことをミッションとしています。

クラウドネイティブなアーキテクチャを再実装することで、利用者がOSの脆弱性やミドルウェアのバージョンアップを意識する必要がなく、エンジニアは業務ロジックの作り込みに集中できます。

玉木:私はクラウドインテグレーション部の部門長を担当しています。昨今レッドオーシャンになっているAWS導入ソリューションの市場において、今後我々が勝ち抜くための人材育成や最新テクノロジーの発掘を積極的に行っています。また、ソフトウェア技術を用いてシステム運用管理全般を担うSREも、私たちクラウドインテグレーション部の担当になります。

▲サーバーワークスを長くにわたって支えてきたマネージャー、千葉さん(左)と玉木さん(右)

──現在のAWS市場で、他のプレイヤーと差別化するために注力していることを教えてください。

玉木:労働単価を抑えてエンジニアを疲弊させるのではなく、生産性を向上させ新しい運用の仕方や開発手法を提供することです。市場で勝ち抜くため大きく2つの考え方を大切にしており、1つ目は生産性を上げてより多くのプロジェクトをこなしていくこと、2つ目は労働単価を抑えることです。ほとんどのSIerはアジア各国を中心にオフショアを展開し、労働単価を下げることで勝ち残ろうと考えているのではないでしょうか。確かにAWSは世界共通で広がっていくプラットフォームなので、オフショアを導入することである程度の差別化は成功するかもしれません。

ただ、それでは他社と比較した価格の下げ合いが続き、エンジニアを疲弊させることにつながる恐れがあります。そこで、例えばクライアントがAWS環境を構築する際のデリバリーを自動化することで、生産性を格段に向上し我々の労働時間を劇的に短縮しています。それが2016年に千葉が中心となって開発した「Cloud Automator」というサービスです。Cloud Automatorを用いることで、AWSの運用自動化やコスト最適化が可能です。

千葉:ほかにも、私の統括するアプリケーションサービス部では、AWSのトレーニング事業にも注力しています。私たちがお客様の環境のクラウド化を推進することで、オンプレ環境のサーバーやミドルウェアのメンテナンスをしていたエンジニアの仕事の一部を奪っていたという自覚がありました。

それに長年オンプレの環境を運用してきたエンジニアが、いきなりクラウドでやってくれと言われても本1冊読めばできるようになる世界の話ではありません。

そこで弊社では、AWSを導入したクライアントのエンジニアに対して、AWSの使い方をトレーニングし、弊社に蓄積されたノウハウをお伝えするようになったのです。お客さま自身がAWSを使いこなして自走できるようにトレーニングすること。それが、オンプレ環境ではたらいていたエンジニアにできる、最も有益な貢献なのではと考えています。そういった意味でも、AWSのトレーニングは積極的に提供しています。

言い合っても否定はしない。失敗をポジティブに転換する

──サーバーワークスは日本国内10社しか存在しないAWSの最上位パートナーです。クラウドサービス黎明期である2014年からパートナーに認定されているのはすごいことだと思います。どのようにトップパートナーのポジションを築いたのでしょうか。

千葉:AWSは2006年にサービス開始したのですが、私たちは2008年と速い段階からAWSの専業パートナーとして、腕を磨いてきたことが功を奏したのではないでしょうか。

また、国内10社のプレミアコンサルティングパートナーのうち専業は弊社だけで、社員数も一番少ない。専業でやっている理由は、AWSの成長速度がとても速いため、AWS1本に絞ってあらゆる技術や最新のリリース情報をすばやくキャッチアップすることで他社に比べて一歩先をいくソリューションを提供できるからです。 毎日エンジニアが必死にAWSの最新ニュースを追っかけている状態ですよ。

玉木:私からするとAWSの強さって、お客様の要望に応える開発のスピードが速すぎるくらい速いことなんです。AWSはもともとグループ内にAmazonという最大のお客様がいて、Amazonの利益を最大化するためにインフラ基盤を構築する中でスケールしてきた。だからとにかく、AWSはユーザー視点が強い。「ここ、ちょっと改善してほしいな」と思っていると、すぐに新しい機能がリリースされて課題が解決されている。本質的なお客様のニーズを汲み取って解決する速度が圧倒的に速いんです。

▲AWSの速すぎる成長にキャッチアップし続けることが、AWS最上位パートナーの地位を築いた

──変化の速いAWSに対し、すばやく情報をキャッチアップするためにどのような組織づくりをしていますか。

玉木:「チャレンジした結果失敗しても、ネガティブに捉えない」という考え方が浸透しているのは大きいですね。代表の大石を始めとしてどの役員も「とりあえずやってみよう」というスタンスで、失敗から生まれるポジティブなことを大事にしようという考えですね。

千葉:新しいサービスや技術が出たとき、会社の発展に必要だと思った時点でみんなその技術を勝手に使い始めるんです。仮にそのサービスや技術の選択が間違っていたなら、その時点で「この技術を使うのはやめよう」とすぐ方針転換する。よく「やり始めたからにはやりきりましょう」なんて言う会社が多いんじゃないかと思いますが、「初志貫徹しなさい」とは誰も言いません。本当に必要な技術を選び抜くには、取捨選択が欠かせない。そのためには失敗してもいい。

チャレンジすることを受け入れて、挑戦したメンバーをみんなで支援して一緒に成長していく。こうしたカルチャーが、市場の変化を敏感に汲み取った技術のキャッチアップや、顧客の要望を柔軟に捉えたサービス提供を実現しています。

──サーバーワークスのカルチャーは、やはり大石代表の影響が大きいですか?

千葉:私もかれこれ10年くらいサーバーワークスではたらいてきましたが、いわゆるトップダウンで何かを強制されたことは一度もありません。

例えば2007年頃、AWS事業を始めるか、当時流行していたソーシャルゲーム事業を手掛けるか会社全体で議論していた時期がありました。 大石が創業した会社ですから、社員数20人くらいならトップダウンで大石が方針を決めても良かったはず。けれど当時から大石はメンバーと意見を言い合うことはあっても否定するようなことは決してありませんでした。

結局、20人弱だった全社のメンバーで半年ぐらい喧々囂々のディスカッションをして、AWS専業に舵を切るという決断を下しました。 

なので、中間管理職の私たちも、メンバーが納得するまで充分に時間をかけて議論するという創業以来のカルチャーを踏襲しています。頭ごなしに「あれをしろ」と指図されることの多いこの業界で、大石のような考え方は非常に珍しいのではないかと思います。彼の考え方のおかげで、長くはたらいているというエンジニアは多いのではないでしょうか。  

玉木:年齢や社歴に関係なく意見を発信できる風土があるので、どのメンバーも入社して会社に慣れたらすぐ、色々なことにチャレンジし始めます。

例えば、最近では中途入社して1年経たないメンバーのアイデアをきっかけに、社内ビジネスコンテストの取り組みとして「サバラボ」という仕組みをを立ち上げました。ここから様々なアイデアや社内新規事業が生まれ、1年もしたら20代の若手が社内発ベンチャーの社長をやっているかもしれません。

そんな風に、自分のキャリアについても主体的に考えて、課長やマネージャーなど次のステージに挑戦してみたいというメンバーも出てきています。 

▲お互いが納得するまで充分に時間をかけて議論することが、サーバーワークスの文化を育んだ

──とても魅力的な社内制度ですね。挑戦するカルチャーを育む上で気をつけていることはありますか?

千葉:新しいことに挑戦する時間や環境を、会社側で用意することを徹底しています。具体的には、毎週1.5日程度を自己研鑽や会社の仕組みを良くするための取り組みに使ってくださいとお願いしています。また、1人あたり毎月2万円まで、新しいクラウドサービスやAWSの検証に使っていいと決めています。 それとは別に、書籍は買い放題ですし、はたらく環境を充実させて欲しくて月2万円のリモートワーク手当も出しています。みんな、いい椅子を買っていますよ(笑)。 

事業を展開する上で一番危ないことは、新しいことに取り組む際、お金がかかる、時間がないといった「挑戦しない理由」を許してしまうことだと考えています。

挑戦する感性を養うためには、自分自身でやるべきことを見出し、実現する方法を考える必要がある。そのための時間や予算は惜しまないようにしています。

玉木:そうですね。たまに「新しいクラウドサービスやAWSの検証費用」を10万円くらい使ってしまうメンバーがいたりするんですよ(笑)。でも別にそれが咎められることはありません。

それは別に失敗でもなんでもないし、反省してほしいなんて思っていない。できればブログとかに書いて「何故そうなったのか」を発信することで、次への糧にしてほしいとは思っています。その挑戦を基点に成長を促したいという企業風土が確立されています。

ボトムアップなカルチャーが主体的な行動を後押しする

──主体的に行動する組織を育むための文化やルールを教えてください。

千葉: 「ググれ禁止」というルールがありますね。要は、困っているから質問している相手に対して「もう一回自分で調べて」と突き返すことを禁止しているということです。たとえば、弊社のSlackには「どんな質問をしてもいい」というチャンネルがありますし、それ以外の場所でもなんでも質問できる文化があります。

「わからないから助けてくれ」と手を伸ばした相手に「ちゃんと調べたのか?」って詰め寄るのは、正しいコミュニケーションではないですよね。それって、伸ばした手を払いのけるような行為です。今その瞬間、相手が知らないことは責めないように、というルールは徹底されています。

玉木:質問しやすい文化を作るため、特別にミッションを与えられたメンバーによるタスクフォースの運営もしています。新しく入ってきた人たちが、どうしたらすぐ我々の会社にカルチャーフィットしてパフォーマンスを発揮してもらえるか。そのことについて、常にディスカッションしています。

──様々なカルチャーがあって、はたらきやすそうですね。

千葉:そうですね、情報公開も徹底しています。たとえば、Slackについては導入時から「プライベートチャンネルを禁止」にしています。

さすがに、経営会議の情報を全体に公開することは難しいですが、本当に公開できないのかについては、最後まで議論を尽くしました。私は昔でいう「喫煙部屋」みたいな、閉鎖された空間でお偉いさんだけで話がまとまるのはすごく嫌だったんです。その話を率直に大石にぶつけました。

すると大石は、「最後はおれが謝るから、情報は公開する方針で行こう」とみんなに言ってくれたんです。社員が新しいアイデアを出したくても手元に情報がないとどうしようもない。この決定は、サーバーワークスのチャレンジしやすい環境を作り上げた要因の1つだと思います。

──大石さんがメンバーを叱責したりとか、ご自身の意見を突き通すことってあるんですか?

千葉:基本的にはないですね。大石自身も、自分が常に正しいことを言っているわけではない、ということを理解しているので。

だいぶ前のことなんですけど、どのLinuxを使おうかっていう話になったときにTurbolinuxを使おう、ってずっと言っていた時期があるんですよ。そのとき「いやいやいや」ってみんなで一生懸命止めて。結局止めるのに2カ月かかったんですけど(笑)、反対意見に耳を貸さないとか、跳ね除けるみたいなことはありませんでした。

意見を聞いている振りとかじゃなくて、きちんと理解しようと一回持ち帰って咀嚼してくれて、納得した上でもう一度会話してくれます。社員も役員クラスも、双方納得した上で意思決定する、というカルチャーをとても大事にしています。社員みんなで、正しい判断をしてきたから今があるんだと思いますね。

大石も含めてですけど、うちの会社にはスーパーマンはいない。人に依存した仕事はしない、誰かよりも仕事ができるのなら仕組み化しよう、ということを全社的なポリシーにしています。

▲人に依存した仕事はしないからこそ、個人の意見を大切にするボトムアップなカルチャーが醸成された

自己満足と顧客満足を繰り返すことで成長サイクルはまわる

──今後もサーバーワークスが成長を続けるうえで、大切にしていくことを教えてください。

千葉:「自己満足」するまでやり切ることですかね。私たちはいつも「顧客満足」は必ず「自己満足」のあとにあると思っているんですね。私が「このお客様のためにやりきった」と言えて、お客様に納品して、初めてお客様が満足してくれる。この順番が大切なんじゃないかなと思っていて。

なので、メンバーには「自分が満足するまでやりきったのか」って必ず聞くようにしています。それで本人が「満足した」と言い切ったら、あとは私たちの責任です。メンバーはベストを尽くしたのだから、あとは責任者である我々マネージャーの腕の見せどころ。お客様に対してしっかりメンバーの仕事を説明しますし、より高い顧客満足を実現するために私たちが技術的なアレンジやサポートを入れたりすることもあります。次も彼らが満足できるように私たちは支援し続けていけば彼らの成長につながっていくんじゃないかなと思っています。

玉木:Slerの本質は、お客様の困っていることを技術で解決していくことです。過去のSlerはそれが出来るだけの余力がなければ、縛りも多かったかもしれません。

だけどAWSはクラウドサービスになったので、クラウド導入事業者である我々に任せられる業務配分や責任範囲が増えました。その結果、私たちがお客様に対して多くの時間を費やせるようになった。だからこそ目先の利益を追求しないでほしいとメンバーには言っているんです。利益の追求に必死にならなくても、お客さまに寄り添って丁寧に課題を解決できれば、後から売上はついてくる、目の前のお客さまの課題を解決してください、そう口酸っぱく言っています。

企画・取材・執筆:大島広嵩
編集:石川香苗子

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