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2026年2月20日
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カナダのオタワ大学やドイツのMax Planck Institute for the Science of Lightなどに所属する研究者らが発表した論文「Generating quantum entanglement from sunlight」は、レーザーを用いず、自然の太陽光から、光子による量子もつれ状態を生成することに世界で初めて成功したとする研究報告である。
量子コンピュータや量子通信では、「量子もつれ」と呼ばれる特殊な状態にある光の粒のペア(光子ペア)が必要で、量子もつれ状態を作り出すためには波長や位相が揃ったレーザー光が不可欠だと長らく考えられてきた。しかし、レーザーには大量の電力が必要で、これが量子技術の普及を妨げる大きな課題だった。
この問題に対し、研究チームはレーザーの代わりに波長も向きもバラバラな自然の太陽光を用いて、量子もつれ状態の光子ペアを生成することに成功したとしている。
実験では、屋外に設置した大型フレネルレンズ(1m×1.4m)と特殊な円錐形の集光器を使って太陽光を集め、光学フィルターで紫外帯域をおおまかに抽出した上で、光ファイバーでテント内へと導く。テント内でさらに波長405nm付近の光だけに精密に絞り込み、偏光サニャック干渉計内に置かれた特殊な非線形結晶に照射する。
これにより「自発的パラメトリック下方変換」(SPDC)という現象(1つの光の粒を2つの粒に分裂させる現象)が引き起こされ、太陽光の1つの光子が分裂し、互いに強く結びついた光子ペアが検出されるとのこと。
報告によると、生成された光子ペアの性質を詳しく解析したところ、次のような結果が得られた。2つの光子がどれだけ強くもつれているかを示す指標であるコンカレンスは0.905、実際に生成された量子状態が目標とする理想的な量子状態にどれだけ近いかを表す指標であるフィデリティは0.939、量子状態がどれだけノイズや混合の少ないかを示す指標である純度は0.919を記録し、レーザーを用いた場合と遜色のない高品質な「偏波もつれ」(量子もつれの一種)が実現できていることが確認されたという。
さらに、量子力学特有の現象であることを証明するベルの不等式のテストにおいても、古典物理学の限界値である2を明確に上回る2.5408を記録したとしている。これは、発生した現象が間違いなく真の量子もつれであることを示している。また、量子もつれを持った光子ペアの生成速度も、条件を揃えて比較すれば、従来のレーザー駆動のシステムに匹敵するレベルに達していたとのこと。
論文に基づくなら、今回の成果は、太陽光という無尽蔵で環境負荷の少ない光を量子もつれ光子ペアの生成に直接利用できることを初めて実証したといえる。
Source and Image Credits: Li, C., Brar, J., Kublbock, M., Upham, J., Fattahi, H., & Boyd, R.W. (2026). Generating quantum entanglement from sunlight.
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